2 緊急事態
兄はサルの獣人、姉はトラの獣人、私はネコの獣人。全て父親が異なる。
母親は自称「恋多き女」、優秀な子供を産むために「ビビッときて」恋に落ちると直ぐに体を許してしまうのである。
そのため、父親は自分の子供と認めず責任を取らず、母親も働くことが出来ないため(いつ自分の夫に「ビビッとくる」かもしれない人間を近くに置く女性は少ない。)子供達が金を稼いで何とか生活をしているのである。(子供が苦労しているのはみんな知っているので稼がしてくれるのだ)
ただ、優秀な子供を産むために恋をしているというだけ有って兄も姉も非常に優秀で、兄は剣の道場から、姉は魔術師から10歳、8歳で弟子入りしないかという話が出るぐらい優秀である。(もちろん、金が無いので教えて貰ったりはしておらず、見よう見まねの独学である。)
「「「ただいま。」」」
「お帰り~。ねえ、聞いてよ。お母さん、今度は本当の恋をしたの、本物の「ビビッときた」の」
「またぁ?しばらく落ち着いていたから安心していたのに・・・」
「トラは五月蠅いわね。いい、恋っていうのは一番大事なものなの。相性が良くて良い子供を産めるというのを感じたら、直ぐ行かないとダメ。」
「それは、単なる発情や!」
「失礼ね~、発情じゃなくて本能よ本能。お母さんの本能のお陰で、サルは武術、トラは魔術、ネコは武術も魔術も超一流の才能が有るじゃない。」
「才能があっても磨かんと意味無いわ!なんのために人間は動物に比べて成長が遅いと思てんねん。学ぶためやろ!。」
「サルは見よう見まねで大人と打ち合えるのよ~。トラだって一度見ただけで下級魔術を使ってみたじゃない、」
「学ばないといつか行き詰まるんや!
上級はもとより中級魔術だって正式に弟子にならないと教えてもらえないし、武術にも「二段切り」以外にもいろんな技が有るんだよ、それを、」
「トラ、もういい。
ところで母さん。今度の相手は誰なの?」
「ん~町長さんかな~。」
「町長さんってあの入り婿の?」
「入り婿って関係ないじゃない。別にお母さんはお金が欲しくて誘った訳じゃないし・・・。」
「母さん、大事なことだから正直に答えて。もうやった?」
「も~、サルは女の子の扱いがなってないな~。そんなこと聞いちゃダメだよ~。まあ、結構積極的だったけど。」
「(町長は入り婿、実権は奥さんが持っている。しかも、奥さんは気だてが良くて人気者・・・確かベストカップルと言われていなかったか?・・・拙い、最悪だ)トラ、ネコ、へそくりを出せ。冒険者ギルドに行くぞ。」
「サル、急に怖い顔をしてどうしたの・・・あっ、へそくりなんて有ったの。お母さん欲しいものがあったのに!」
「サルにい、どうしたん?へそくりは緊急用って、それに「俺達には冒険者ギルドはまだ早い」って止めたんはサルにいじゃ・・」
「今が緊急事態だ。急ぐぞ。」