ひとときの思い出
修学旅行のバスの中
君の後ろに僕は座った
自由時間でも外へは
行かなかった
行きたい場所なんて
なかったから
君もそうなのかと思うと
うれしかった
君に話しかけようと
思い切ってみたら
君は雑誌を開いたまま
眠っていた
開いた窓からこっそりと
優しい風が入ってきて
君の髪をそっと揺らした
あのときほど君を近くに
感じたことはなかった
言葉を交わすことはなく
思いを告げることもなかったけれど
ほんのひととき
きみの傍にいられたことが
たったひとつの優しい思い出となった