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第Ⅰ章/不穏な影。魔術師の世界

prologue


――我が歩む道、人道の底――

いつも裏側で救い続けた。

後悔はない。


――灯り(ひかり)も何もないそこをひたすらに歩く――

光を浴びぬ其処をいつも一人で歩いていた。

ただ、後悔はない。


――意味の無い人生――

たった一つ教えてやることさえ叶わなかった。

後悔している。


――存在理由も何も無い――

もう既に意義を終えていた。

何一つ、懺悔すべきことはない。


――魂の欠片さえそれを赦さない――

赦してくれる人はいた。

だが、自分自身が一番赦せなかった。


――なら、この身はただひとを救う為だけに在る――

ただ一つ、今願いが叶うならば。


――それは意味も無く救い続けた――

どうか愛しい君は同じ道を辿るべからず。――と。

――そうだろう?君――





燃え盛る炎。

熱い。皮膚が焼け、精神が死んで行く感覚。

実際外傷は無いに等しかった。

ただ、心に負った傷は大きく深かった。

目の前で焼け焦げる見知った顔。

刃に串刺しにされ慟哭どうこくする見知った顔。

力無く倒れ逝く見知った顔。見知った顔。

この日全て、そう、殆ど全てを失った。

大切な物が焼け落ちた。

大切な人が灰燼かいじんと化した。

誰も助けてはくれなかった。

助けてもらえないのがこれほどつらいのだと初めて知った。

だから――

誰かを助けられる。強い人間、そう、例えば正義の味方になろうと決意した。

正義の味方でなくとも構わない。

強く、誰かを助けられれば、悪でも構わなかった。

道を誤らなければ。

信じた道を突き進むことが出来るなら。

それでよかった。

力が欲しかった。

誰かを守れる力が欲しい。

対価は払う。

人生を不幸と断定させる運命でも、一生痛み続ける傷でも構わない。

「誰でもいい、力をください」

切に願った。

悲願、切望、何でもいい。

力が欲しかった。

「おい、まだガキが生きてるぜ」

「お、本当だ目は死んじまってるが活きはいい」

《談笑していた。》

黒衣の男が、二人の男が、《談笑していた。》

プツン、とその時自分の中の何かが切れた。

そして――

「な、なんだお前は!?」

「た、助けてくれっ!」

そんな気はさらさらない。

幸か不幸か、その時、今まで片鱗も見せなかった《力》が湧いた。

だから、自分の目の前で尻餅をついたこの仇を裁こう。

躊躇った。

――例え人を、大切な人を殺した悪であろうと殺していいのか?

答えは否だ。

それではこの男達と何ら変わりがない。

だから、自分がすべきなのは救うこと。

この男達に取って最善の救いを与えてやって初めて俺はこの男達に勝つのだ。

実際、この男達は虚ろな瞳で転がっている子供にある種の恐怖を覚えて尻餅をつき、その後逃げ出したにすぎなかった。

その時は寝転がって居たに過ぎなかった。

だが、その光景は生涯鮮明に覚えているだろう。

喪った日として。

手に入れた日として。










この日、決意した――


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