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14話


 陽が沈む前に宿屋に戻った俺達はアンネと別れて割り当てられた部屋に戻った。簡単にシャワーを浴びて身だしなみを整えてからマルコムと一緒に最上階の談話室に向った。

 談話室に入るとジュディアスとハヤテ、そしてマーガレットがテーブルに座って寛いでいた。マルコムはジュディアスとハヤテが座っているテーブルに向かったが、俺はマーガレットが座っているテーブルに近づいた。

「リオンくん。おかえり」

「ただいま、マーガレットさん」

「何処に行って来たの?」

「最初は港に行って船を見学してから、午後は買物でしたよ。お菓子とお酒を仕入れてきました」

「あら、いいわね。私も買物したかったなぁ」

 マーガレットは疲れた顔をして答えた。

「マルコムとアンネの2人がお菓子を大量に仕入れましたからマーガレットさんの分もありますよ。マーガレットさんの方はどうでしたか?」

「私は荷物の積み込みよ。1日中、大量にあるワインと高級食材を魔法のコンテナに積み込みしてたわ。今回の旅の分よりも教授の自宅用の荷物の方が遥かに多かったわ」

「それは、ご苦労様でした」

「学院都市に帰ったら褒美を買って貰う約束でなきゃ、やってられないわ」

「褒美ですか?」

「そうよ。今回の仕事は学院とは関係ないもの。特別手当がなきゃ来なかったし、今日の荷物も大部分が教授の私物だもの、褒美ぐらい当たり前よ」

「成程、確かにそうですね」

 俺は意外としっかりしてますねと言いそうになったが、なんとか口に出さずに済んだ。この様子では相当高価な褒美を買って貰うつもりなんだろう。


「ところで、マルコムが教授が船を空に飛ばす研究をしていると聞きましたが、どんな研究をしてるんですか?」

「私は興味が無いから良く知らないけど、遺跡で見つかったガラクタでマルコと一緒に遊んでいるわ。

 教授は下手の横好きよ。私が言うのも何だけど信用しない方がいいわよ。機械に関するセンスが致命的に無いのよ。教授と比べるとマルコムの方がまだまともなのかもしれないけど、私から見れば2人とも機械音痴だわ。

 興味があるなら教授に聞けば教えてくれるけど、覚悟して聞いた方が良いわよ。古代文明のうんちくを語り始めると下手すると半日ぐらいずっと話を聞くことになるわ」

「でも、古代文明の遺品は教会が独占しているって言ってませんでしたか?」

「確かに教会は遺跡の遺品を集めてるし、研究成果を極秘にしてるけど、教授だって倉庫2つ分ぐらいのガラクタを集めているわよ。教授に言わせれば、価値の無いガラクタだから教会は手を出してこないと言っているけど、そんなことないと思うわ。教授は価値がわかっていないだけだと思うわよ。教授が言うほど教会は酷く無いわ。

 教会は古代文明の遺品を無理やり奪い取るようなことはしないわ。まぁ、王族や貴族に手をまわして手に入れることはあるみたいだけどね。

 教授は教会に対してライバル意識が激しいから話半分に聞いた方が良いわよ」

「そうですか、マルコムも教授と同じことを言ってたから、てっきり教会はあくどい組織なんだと思ってました」

「マルコムは教授の弟子だもの。教授と同じ意見に決まってるわ。最初はあんな風じゃなかったけど、近頃、話し方も性格も教授とそっくりになってきたわ」

「確かに、マルコムの話し方は教授と似てますね」

「そうでしょう。私は嫌いじゃないから良いけど、マルコムには似合わないと思うわ」

 マーガレットはふうっと溜息をついて、カップを取り上げてお茶を啜った。随分と疲れているようだ。

 暫くの間、黙ってお茶を啜っていると談話室に宿屋の給仕が入って来た。入口で部屋の様子を眺めてからマーガレットに素早く近づいて紙切れをマーガレットに渡するとそのまま外に出て行った。

 マーガレットは紙切れを見ると、再びため息をついた。そして、顔を上げて俺を見た。

「教授とマリアさんは伯爵の晩餐に招かれたみたい。2人とも帰りは遅くなるそうよ」

 俺は伯爵がどんな人物なのか聞きたいと思ったがマーガレットがいかにも疲れた様子なので質問することを控えた。

「そうですか」

「2人以外は揃ってるから、夕食の準備ができたら食事にしましょう」

「そうですね。マーガレットさんは早めに休んだ方が良いですよ。教授のことは使用人に任せれば大丈夫です」

「そうね。何時に帰ってくるか分からないし、そうするわ」

 給仕が夕食の準備が整ったと言いに来るまで、俺とマーガレットは黙ってお茶を啜った。

 マーガレットは皆に教授とマリアが伯爵の晩餐に招かれたことを伝えて全員で食堂に移動した。俺達は昨日に続いて豪勢な夕食を楽しんだが、マーガレットは疲れているため会話は殆どないし、教授とマリアがいないせいか何となく寂しい気がした。



 そして、翌日の早朝に俺達はモントールから北東に向かって出発した。朝の8時にはモントールの街並みは後ろの背景と化していた。前方の遠くの方に横に広がった山脈が見える。スターレン渓谷はあの山脈の中にあるのだろう。スターレン渓谷まで1泊2日の予定だ。

 前の座席に座った教授の話では、伯爵から騎士団の補給部隊と一緒に砦に行くことを提案されたが、補給部隊の大型馬車の速度に合わせたら砦まで3日から4日になってしまうので断ったそうだ。

 俺達の馬車は順調に進み、予定通りの野営地点でテントを張った。


 天気が良いので食堂用のテントは張らずにテーブルは野外に並べたため、見上げれば満天の星空を眺めることができる。

 超高級宿屋の夕食とは比較することが間違っているぐらい質素な夕食だが、使われた素材は同程度の高級品で味付けも俺好みのためか俺にとっては却って昨日の夕食よりも旨いと感じた。

 暑いので少し離れたところに盛大に燃やしたたき火がキャンプファイヤーのようで昔のボーイスカウトの夏のキャンプのことを思い出してしまった。

 教授とマリアがいるだけで昨日と比べて賑やかな感じがする。教授の隣に座っているマーガレットも楽しそうに見える。

「そうだ。遺跡の砦について伯爵から仕入れた情報を説明するから、皆。聞いてくれ」

 食後のワインを飲んでいた教授が皆に呼びかけた。俺とマリア、アンネの3人は食後にお茶を貰ったのだが、他のメンバーは昨日の超高級宿屋で仕入れた高級なワインを飲んでいた。

 教授は皆が注目するのを確認してから話し始めた。

「遺跡の砦のことだが、昔は500人程度が常駐する小さな砦だった。遺跡のダンジョンが新人の訓練に丁度良いと言うことで、今は騎士団の新人訓練用の砦になっているそうだ。

 20年ぐらい前に王国の許可が出てから砦の規模が拡張されて毎年1000人の新人が砦で訓練を受けている。今では約2000人の騎士が常駐しているらしい。

 ダンジョンの最下層は立ち入り禁止区域になっているが、直前の12階層までは騎士団の訓練に使われている。

 お陰でダンジョンを掃除する必要がなくなったので、都合が良いのだが、何でも、最下層には数匹のオーガが居るらしい。

 12階層までは魔法の昇降機で行けるそうだ。12階層から最下層は階段を下りることになる。そして、最下層に降りると50m四方の広場があって数匹のオーガがうろついていて、その奥に封印の扉がある。

 伯爵から必要ならオーガ討伐の手伝いを出してくれると言われたよ。

 ジュディアスくん。オーガの討伐は出来そうかね?」

 教授がジュディアスを見ると。

「オーガなら地下迷宮の150階層相当ですね。マルコが居れば私達だけで十分です」

「そうか、討伐の手伝いは断っても良いかな?」

「えぇ、大丈夫です」

「それと、砦の司令は伯爵の娘のルイス嬢だそうだ」

「ルイスですか?」

 驚いた顔でマルコムが教授に聞いた。

「そうだよ。君達とルイス嬢は仲が良かったそうだね。伯爵から君達が子供の頃の話をいくつか教えてくれたよ。

 なんでも3人で探検に出かけたそうだね。捜索隊を出して大騒ぎだったと伯爵が懐かしそうに話してくれた」

「まぁ、子供の頃のことですから」

 マルコムが照れた様子で教授に答えた。

「とにかく、久しぶりに会うのだから親交を深めると良いよ」

 教授は上機嫌な顔でしきりと頷くとワインをグイっと飲んだ。ジュディアスとマルコムはお互いに顔を見合すと2人とも嬉しそうに笑った。



 翌日。俺達の馬車は大きな川を左手に見ながら山間の奥深くへと進んで行った。

 午後3時ごろに騎士団の砦が遠くに見えた。騎士団の砦は山の絶壁の下に、まるで壁に張り付いているかのように建てられていた。

 砦は丸太を組んで作られた巨大な柵に囲まれていた。防衛の観点から考えると砦としては少しお粗末な備えのように思うが国境の守りとして建てられた砦ではないのでこれで十分なんだろう。

 馬車が丸太を組んだ大きな門の前に近づくと門の横の扉が開いて、5、6人の騎士が出てきた。馬車が騎士の手前で止まると2人の騎士が近付いてきた。教授が伯爵の命令書を見せると騎士団は砦の中に戻り、丸太の門が開いた。

 馬車はゆっくりと砦の中に進んだ。


 砦の中は中央に5階建ての建物、左右に3階建ての建物が2棟ずつもあって随分と広い。そして、広場で数百人の騎士達が戦闘訓練をしていた。

 馬車は訓練の邪魔をしないように広場の隅を迂回して中央の司令部らしい建物の前で止まった。

 教授とマーガレットが馬車から降りたので、俺もマリアと一緒に馬車から降りた。ジュディアス達も馬から降りて馬を馬車に繋いだ。結局、馬車の前に全員が集まった。

 砦の中央の建物から2人の騎士が出てきて俺達の所へ近づいて来た。

「ルイス!」

 マルコムが先頭の女性騎士に呼びかけると女性騎士は驚いた顔をした。金髪碧眼の西洋系の美人さんだ。身長は170cmぐらいだろうか、ジュディアスよりも少し低いようだ。騎士の鎧を着ているが他の騎士と違って鎧の色が赤で統一されている。

 ルイスの後ろに副官と思われる男性の騎士が付いてきている。茶色の髪に灰色の目、身長は185cmぐらいで立派な体をしている。


「これは驚いた。マルコムじゃないか、それにジュディも。2人揃ってどうしたんだ?」

「僕は教授の助手だよ。ジュディは護衛に雇われたんだ」

「遺跡の調査グループが来る連絡は受けたが、2人が来ることは知らなかった。

 そう言えば、マルコムは助手に昇格したそうだな。お祝いには行かなくて失礼した。

 なにせここの司令だからな、あまり長い期間を留守にする訳には行かなかくてな、兎に角、おめでとうを言わせて貰うよ」

「ありがとう。

 それで、こちらが教授だ」

 マルコムが教授を紹介すると、教授が前に出た。

「これは失礼しました。私が砦の司令のルイス・アーネストです」

 ルイスは教授に右手を差し出した。

「私はマーリン・トワイライト。教授と呼んでください」

 教授は握手しながら自己紹介をした。

「こちらが学院の顧問のマリア・エーデルワイス。マリアの助手のリオン・ウォートくん。こちらは私の助手のマーガレット・アマデウス。ジュディアスくんの所に居るのは護衛を依頼した冒険者です」

「これはご丁寧にありがとうございます。連絡があったので急いで研究員用の施設を掃除させたのですが、まだ終わっていません。もう少しで終わると思いますので、お待ち頂くか掃除が終わった部屋に入って頂くことになると思います」

「お手数をお掛けしたようで申し訳ない。それでは掃除が終わった部屋で待たせて貰います」

「それでは、副官のジム・マッコイに案内させましょう。

 ジム。後を頼むぞ」

「了解しました」

「それでは、これで、失礼します」

 と司令はお辞儀をすると、戻って行った。

 俺達は副官のマッコイに案内されて、研究員用の宿泊施設の中に入った。



 研究員用の宿泊施設は3階建ての建物で研究所長用と思われる部屋、上級研究員用と思われる大きめな個室が6部屋、2人部屋が12部屋、大食堂と厨房、大会議室、応接室、男女用の風呂が完備されていた。

 俺は個室の1つを確保した。ハヤテとアンネは各々2人部屋を確保し他は個室だ。教授は当然のように所長用と思われる部屋に入った。


 7時になると、大食堂で全員揃って夕食を取った。マルコムとジュディアスは司令に招待されたので不在だ。

「最下層の掃除は司令も手伝って暮れるそうだから、リオンくんは、僕たちと一緒に、最下層の掃除が終わるのを待てばよいよ。

 昼頃には掃除が終わると言っていたから、昼食を食べてから最下層に出かけるよ」

「分かりました」



 翌日、予定通りに昼までに最下層の討伐が終わり、昼食後にダンジョンの入口い集合すると、司令自からダンジョンの案内をしてくれた。

 エレベータで12階層に下り、そこからダンジョンの端まで歩いて、階段を下りると13階層、すなわち最下層だ。

 最下層の入口は50m四方ほ大部屋で何もいなかった。ここにオーガが20匹ぐらい居たそうだが、ジュディアスと騎士団が午前中に討伐してしまった。

 奥に進むと壁の中央に巨大に扉が見えてきた。以前、マリアが見せてくれた封印の扉と同じものがそこにあった。

 扉の奥に何があるのかは知らないが、この封印の扉を開けることが俺の仕事だ。

「それじゃ、リオンくん。実験室でやったように封印を解くわよ」

 俺はマリアに頷くことで返事をした。

「みなさーん。どんな危険があるかわかりませんので、最低でも20mは離れてください。20mよりも近づいたら、命の保証はできませんよ」

 マリアが大声で宣言すると。皆は大慌てで扉から離れた。特に離れなくても危険はないと思うが、俺は何も言わないことにした。

 俺はウェストバックから杖を取り出し扉の中央に近づいた。

 扉の中央には10mぐらいの巨大な魔法陣が描かれており、保護バリアが有効になっている。触っても静電気に触れた程度の危険しかないが、全力で体当たりをすればそれなりの怪我をするだろう。まぁ、鉄の壁に体当たりするようなものだ。


 学院の実験室でやったとおりに保護バリアに対応するための魔法陣を展開して発動した。扉を覆っていた青白い魔法のバリアが静かに消滅した。

 すぐにマリアが俺が展開した魔法陣を維持するための魔法陣を展開して発動したので、俺は魔力を込めるのを止めて杖を下した。そして、扉の中央に近づいて右手を印の上に当てた。

 手を当てたルーン文字が光、まるでデジタル回路のように光のラインが扉の全体に走った。そして扉が静かにゆっくりと開いた。



 扉の奥は巨大な倉庫のようになていおり、中央に巨大な乗り物が置いてあった。胴体の全長は14mぐらい、高さは4mぐらいで、三角の水平翼と船尾に垂直翼。ジェットの噴出口は見当たらないところを見ると、ジェットエンジンのような推進装置は使われていないのだろう。

 飛行艇と言うよるも、どちらかというと宇宙船のような感じだ。まるで、地上と周回軌道の間を行き来するシャトルのような感じだ。宇宙船版の揚陸船と言えばよいだろうか、そんな感じの船で、全体が青白く光っている。扉の保護バリアと同じようなバリアに包まれているようだ。

「これは、一体何だ? 見当もつかん」

 と教授が呻いた。

「何かの建物ですか?」

 とマーガレットが聞いた。確かに2階建ての建物ぐらいの大きさがある

「空を飛ぶ飛空挺かもしれない、何かの論文で見たような気がする」

 教授の隣でマルコムが呟いた。

「こんな巨大な代物が空を飛ぶのかね、それは有り得ないだろう」

 と教授も上の空で呟いた。

「扉と同じ保護バリアに包まれてる。近づくと危険だ」

 と教授が皆に警告した。

『前方の未確認飛行船より通信が入りました。接続しますか?』とアリスが聞いた。俺は、通信を無視するかどうか考えたが、結局、接続することにした。

『応答を確認しました。マスター認証キーを求められています。マスターのID、パスワードで承認しますか?』

 俺のIDで承認が通るとは思えないが、ダメ元でアリスに認証キーを応答させた。

『マスターとして認証しました。

 私はアルゴス。次元航行船です。船体番号AX007DC789943。命令待機状態に移行しました。命令をお願いします』

 驚いたことに、マスターとして認証されてしまった。マリアが言っていた通り、神が残した遺産の一つなのかもしれない。

「マリアさん。これが何なのか、ご存じですか?」

「えぇ、知ってるわよ。マスターの承認は終わった? もし終わったら、操縦方法とかの情報を貰っておくと良いわよ。これは神があなたの足として残した乗り物よ。あなたの自由にすれば良いわ」

 教授とマルコム、ジュディアス達もアルゴスの周りを回ってアルゴスを観察している。どちらにしても、しばらくはアルゴスから離れないだろう。

 俺はアリスに命令してアルゴスから入手可能な情報をすべてアリスに転送させた。


 俺とマリアはテーブルと椅子を取り出して椅子に座り、お茶を用意した。俺はアリスに転送されたアルゴスの情報を調べながらお茶を飲んだ。

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