12話
学院都市を出発して4日目、予感した通り赤衣の盗賊団に襲われた。
朝の10時頃、マップ画面に凄い数の黄色の点が表示され、アリスが盗賊団の待ち伏せの可能性があると警告してきた。
魔獣は赤い点で表示されるが、人間や亜人は黄色の点で表示される。街で人間や亜人を表示したら黄色の点ばかりになるので普段は赤い点しか表示していない。
前方の気配を探ると、確かに何かが潜んでいる気配がした。
馬車が向かっている先に小さな森が広がっており、街道は小さな森の中に延びている。
黄色の点は90個ぐらい、90人の盗賊団の規模が大きいのか小さいのか分からないがこちらの護衛は4人。教授の使用人を除けば全部で8人しかいない。
しかし、半分以上が魔術師なので多人数を相手に戦えるはず。俺は人数は関係ないと無理やり自分を納得させた。
「前方の森に90人ぐらいの盗賊団が隠れています」
俺は前に座っている教授に警告した。
教授は振り返って「本当かね?」と聞いてからマリアを見た。マリアが真面目な顔で頷いた。
「盗賊団だ。馬車を止めろ!」
教授が叫ぶと馬車がすぐに止まり、先導していたジュディアスとハヤテが馬車に引き返した。
前方の森から真紅の服を着て馬に乗った盗賊団が飛び出して来た。馬の後から真紅の服を着た盗賊が徒歩で続ている。
教授の指示で俺達は馬車から降りて、マリアが魔法のバリアを張り巡らし、マーガレットが馬が暴走しないように馬車を曳いている4頭の馬に魔法を掛けた。
マルコム達4人は馬を馬車に繋ぎ、固まって馬車から離れてバリアの外に出た。
「リオンくん。人数が多いわ。マルコム達に合流して魔弾銃で盗賊団を始末して頂戴」
マリアが普段通りの笑顔で俺に命令した。俺はマリアに頷いてマルコム達に合流した。教授も魔術師の杖を手に持って俺と一緒に合流した。
3、40頭の馬に乗った盗賊達が矢の陣形で迫って来る。その後ろには徒歩の盗賊達が横に広がりながら続いている。
「話し合いの余地は無さそうだね」
教授が落ち着いた顔で言った。
「私達を一掃してから荷を調べるのだろう。盗賊団の常套手段だ」
ジュディアスが覚悟を決めた顔で言った。
「今の内に支援魔法を掛けておくよ。リオンくんの魔弾銃ならあれぐらいの人数はどうと言うことはないよ。
ジュディアスとハヤテは飛び出さないで、僕達を守りなさい。マルコムくんとアンネくんは魔法で攻撃だ。リオンくんは魔弾銃を撃ちまくってくれ。
相手は盗賊だ。遠慮は要らん。容赦なく殺しなさい」
教授は俺の目を見ながら言った。俺が頷くと、教授は俺達に支援魔法を掛けるために、魔法の杖を掲げて呪文を唱えた。
マルコムとアンネは恐怖で青い顔をしているが、ジュディアスとハヤテは決意を固めた戦士の顔をしている。
俺は魔弾銃を手元に呼び出して迫ってくる盗賊の先頭の馬に狙いを定めた。これから人間を殺すのだと思うと銃身が震える。たぶん、俺はマルコムのように青ざめた顔をしているのだろう。
しかし、躊躇するつもりは無い。3日前から覚悟は決めていた。
先頭の盗賊が50mぐらいに近づいた時、俺は馬上の盗賊を狙って魔弾銃を撃った。
スキルの熟練値の影響だと思うが、魔弾を撃とうとした時、銃身の振るえがピタリと止まった。自分でも意外に思うほど心が落ち着いて冷静になった。
例の「あったったったっ……」の要領で魔弾を連射して、次々と馬上の盗賊団を撃ち落としていった。教授が加速の魔法を掛けてくれたので、連射の早さも倍ぐらいになっている。
一団になって襲ってくる蛮族に機関銃で掃射しているようなものだ。40人近い盗賊が10秒も掛からずに全滅した。
乗り手を失った馬がそのまま突っ込んで来たので、教授とマルコムが広範囲魔法を使って馬を散らした。
後ろから続いていた徒歩の盗賊達が50mぐらい離れた位置でぴたりと止まった。
横一線の陣形なのだろうか、盗賊団とは思えないほど規律が行き届いているようだ。中央に馬に乗った盗賊が7人。その内2人の男女が馬から下りて、ゆっくりと俺達の方に歩いてきた。
まるで音が無くなってしまったかのように辺りが静まり返った。
近づいてくる2人が有名な赤目の魔女と竜殺しだろう。2人とも真紅の鎧に真紅のマントを風になびかせながら近づいてくる。
まるで、映画の決闘シーンを見ているかのようだ。
俺は竜殺しの方に狙いを定めて魔弾銃を構えた。堂々と近づいてくる2人には無駄だろうと思うし、なんとなく撃つのはルール違反のような気がするのだが、俺は敢えて魔弾銃を撃つ決心をした。
相手は盗賊団で、俺達はほんの少人数で襲われた側なのだ。なんの警告もなしに襲ってきたのは相手の方だ。
卑怯者呼ばわりされようが構うものか。
俺は竜殺しに対して気合いを入れて魔弾を打ち込み、続けて赤目の魔女に魔弾を打ち込んだ。
しかし、予想通り、魔弾は壁に当ったかのようにはじけ、2人は何事も無かったかのように悠然と歩き続けた。
ちらりと様子を見ると、教授達も何事も無く黙ったままだ。なんだか俺だけが悪あがきをしたようで、ちょっと恥ずかしいと思った。
2人は10mぐらいの位置で立ち止まった。
お揃いの真紅の鎧に真紅のマントを風になびかせながら立つ姿は、悪人の癖にやたらと格好が良い。おまけに赤目の魔女はスタイル抜群の美女で、竜殺しも美男の偉丈夫だ。
「誰かと思ったらレッドロックの坊ちゃんじゃないか。それとアンドレ家のじゃじゃ馬娘に学院の有名教授かい。これはとんだ獲物が手に入ったわね」
距離があるので赤目の魔女が大声ではっきりと発音して言った。わざとらしくて、まるで演劇でも見ているみたいだ。
「魔弾銃を持ってる坊やは知らないねぇ、坊やの名前は何だい?」
赤目の魔女が俺を観察しながら聞いた。ぞくぞくするほど色っぽい。
「我々を殺しても、馬車は手に入らんぞ、いくらお前でもあのバリアは破れない。諦めて退散しろ」
教授が俺達を代表して大声で言い返した。
「確かに、あのバリアは私でも破れないようね。でも、魔弾銃が手に入れば十分さね。それだけで暫くは遊んで暮らせそうよ。あはははは……」
赤目の魔女が高笑いをした。
「おい。そろそろいいか?」
竜殺しが笑い続ける赤目の魔女を見て聞いた。
「もうしびれをきらしたのかい? 分かったよ、あんた。やってもいいよ」
笑いやめた赤目の魔女が竜殺しに媚を売りながら答えた。
「おい、そこの犬っころ、さっさと掛かって来い」
竜殺しは嬉しそうな顔をしてハヤテをけしかけた。
「うぉー!」
ハヤテが双剣を構え、雄叫びを上げながら竜殺しに向かって走った。そして、すぐ後ろを刀を抜いたジュディアスが続いた。
教授とマルコムとアンネが杖を掲げて呪文を唱えると、赤目の魔女の杖を掲げた。俺はアリスが提案した戦術に従って、横に移動しながら魔弾銃を2人に交互に撃ち始めた。
アリスは赤目の魔女の魔法を避けるために教授達と距離を開けること、密集していては範囲攻撃魔法の餌食になる。そして、魔弾銃を撃って魔法攻撃のバリアを張らせれば物理攻撃を防げないので、拳銃の弾が効果を発揮する可能性が高いと言ってきた。
ハヤテは竜殺しに近づくと左右の剣を真横に交互に振って胴体に斬り付けたが、竜殺しはダメージを全く受けず、ハヤテを蹴り飛ばした。
蹴られたハヤテは2,3mほど後方に飛ばされた。
後ろに続いていたジュディアスが振りかぶった刀を袈裟斬りで仕掛けたが、竜殺しは両手剣で受け止め、ジュディアスを勢いをつけて前に押し飛ばした。
ハヤテが再び竜殺しに近づき、振り上げていた両手の剣を時間差で振り下ろしたが、竜殺しは両手剣を横に振って、ハヤテの左腕を斬り飛ばし、再び蹴り上げた。
ハヤテと入れ違いに突っ込んだジュディアスが振りかぶった刀を振り下ろすと、竜殺しはくるりと回転して振り下ろされた刀を避けると、回転した勢いのままジュディアスの胴体に両手剣を叩きつけて横に飛ばした。後ろに蹴り飛ばされたハヤテも横に飛ばされたジュディアスも倒れたまま起き上がる気配が無い。
一方、赤目の魔女は範囲攻撃の火炎魔法であるボルケーノを教授達3人に発動したが、教授が火炎の防衛バリアを張った。マルコムとアンネの火炎弾と魔弾は赤目の魔女の防具に阻まれた。
赤目の魔女はすぐに次の魔法を発動し、3発の魔弾を3人に飛ばした。マルコムとアンネは赤目の魔女の魔弾に撃たれて後ろに飛んだ。教授にも魔弾が飛んだが魔弾は壁に当ったかのようにはじけた。
俺は装備画面を呼び出して魔弾銃を拳銃に交換し、赤目の魔女に狙いを定めて続けざまに引き金を引いた。
危険を察知したらしい竜殺しが俺と赤目の魔女の間に割り込んできた。2人と戦っていた時とは段違いのスピードだ、ひょっとしたら加速したのかもしれない。
竜殺しに3発、そして、竜殺しの耳に穴を掠めてすり抜けていった弾が赤目の魔女の頭を撃ち抜いた。
アリスの戦術が上手くいった。しかし、竜殺しに当った3発の弾は、はじかれてしまった。
「ザザー!」
赤目の魔女が倒れるのを見た竜殺しが大声で叫んだ。
「貴様、殺してやる!」
竜殺しが吠えて俺に向って突進してきた。両手剣を高々と掲げ、俺を目指して猛スピードで突っ込んでくる。ハヤテとジュディアスは倒れたままだが、竜殺しにとっては、俺以外は眼中に無いのだろう。
俺は拳銃と「黒桜」を交換し、両手で「黒桜」を構えた。
物凄い迫力だ。危険を察知した俺は本能的に「超加速」を発動して4倍に加速した。
竜殺しの動きが遅くなり、ゆっくりと両手剣を振り下ろしてきた。
俺は竜殺しの脇をするりとすり抜けて、後ろから袈裟切りで斬りつけた。必殺のカウンター技が見事に決まったらしく。竜殺しの体が斜めに2つに分かれて倒れた。
「超加速」を解除した俺は血糊を振り払うかのように「黒桜」を左右に大きく振ってから背中の鞘にしまった。
暫く、辺りは静まり返っていたのだが。
「お前ら、姉御のかたきを討て!」
「親分のかたき討ちだ!皆殺しにしろ!」
突然、横一線の陣形で待機していた盗賊達が大声で叫びながら俺を目指して突進してきた。どの盗賊も血走った目で発狂したかのような物凄い表情だ。
全員が俺を目指しているように思えて、俺は恐怖で震えた。そして、再び「超加速」で4倍に加速した。俺は武器を魔弾銃に持ち替えて迫ってくる盗賊達を機関銃で掃射するように必死になって撃ち殺した。
魔弾銃を撃ち終えた俺は暫くの間、横一列に倒れた盗賊を眺めていた。バリアが解除され、マリアとマーガレットが走るのが見えた。教授がマルコムを仰向けにして怪我の様子を見ている。マーガレットはマルコムの隣に倒れていたアンネを抱き起こした。
マリアは斬り飛ばされたハヤテの腕を拾うと走ってハヤテに駆けつけた。
そう言えば、マルコム、アンネ、ジュディアス、ハヤテの4人が倒されたんだっけと俺は薄ぼんやりと考えた。そして、ふらふらとジュディアスに向かって歩いた。
ジュディアスを仰向けに抱き起こして見ると腹が横に大きく切り裂かれて内臓が見えていた。胴体の半分が切られている感じだ。息をしていないし首筋で確認すると脈拍も停止している。
だめだ、死んでると思ったらアリスが指示を伝えてきた。
俺は半信半疑で、アリスの指示通り、背中に膝を当てて活を入れるとジュディアスは「ごぼっ」と弱々しく血を吐き出した。
アイテム画面から最上級の回復の魔法薬を手に実体化してジュディアスの口に流し込むと、ごくりと魔法薬を飲み込んだ。
途端に、青白い顔に血色が戻り、切り裂かれた腹が見る間に修復された。そして、パチリとジュディアスが目を開けた。
俺が飲ませた魔法薬は千切れた手足でさえも直してしまう魔法薬だが、死者を生き返らせることは出来ない。アリスが言う通り、完全に死亡していなかったのだろう。
魔法薬が効くかどうかの判定は何だろうかと疑問に思うと、アリスが「心臓が動いていれば魔法薬の効果があります」と教えてくれた。
ジュディアスは瞬きをすると、自力で上体を起こして辺りを見回した。
「ジュディアスさん。大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
ジュディアスは立ち上がると自分の体を点検した。
「腹の半分は斬られてたはずだ。死んだと諦めたが、リオンが助けてくれたのか?」
「はい。回復の魔法薬を持ってましたので飲ませました」
「そうか、よほど高級な魔法薬を使ったらしいな。後で弁償するよ」
「いえ。いりませんよ。仲間を助けるのは当たり前ですから」
「そうか、それは嬉しい提案だが、そうだな、後で私が持っている魔法薬を渡すから受け取ってくれ。仲間内でも借りはちゃんと返さないと、仲間割れの原因になる」
「そうですか、分かりました」
俺はジュディアスの言う通りだと思ったので、肯定の返事をした。
マリアとハヤテが近づいて来た。
「リオンくん。大丈夫? 顔色が悪いわよ」
マリアが心配そうな顔で聞いた。
「大丈夫です。怪我はしてませんよ」
「ひょっとして人間を殺したのは初めてか?」
マリアの横に居たハヤテが聞いた。
「良く分かりましたね。そうですよ」
「そうか、気休めにしかならんが、相手は盗賊だ。殺して当然の奴らだと思え」
ハヤテは言うと俺の肩をポンポンと優しく叩いた。
「ありがとうございます」
俺は嬉しくなってハヤテに礼を言った。何故が涙が溢れそうになったが、なんとか堪えた。
教授達が集まってきた。
「みんな大丈夫のようだな。しかし、これだけあると剥ぎ取りは大変だ」
教授が疲れた声で言った。
「剥ぎ取り?」
俺は思わず聞き返した。
「死体から金目の物を剥ぎ取って、賞金首の盗賊は首を切り落とす。それと討伐の証拠に協会の認識票も集めるのさ。冒険者なら当然の義務だ」
ハヤテが教えてくれた。
「リオンくんは馬を集めたらいいわ」
「そうだね。それが良いよ」
マリアが提案すると教授がすぐに同意した。
「それでは、リオンくん以外の全員は剥ぎ取りだ。すぐに始めよう。リオンくんは盗賊の馬を集めて馬車に繋いでくれ、荷台にロープが積んであるはずだ」
教授が指示すると全員が散らばって行った。俺は言われた通り、馬を集めることにした。
盗賊が乗っていた馬は乗り手を無くしても遠くに逃げないで、幾つかのグループの群れを作っていた。幸運なことに12頭の馬は馬車に繋がれた俺達の馬に近くに集まっていた。
俺は馬に乗って盗賊の馬を馬車に誘導し、荷台に積んであったロープとアイテム画面から取り出したロープを使って、集めた馬を5つのグループに分けて数珠繋ぎにした。
結局、38頭の馬を集めた。残りの馬は教授とマルコム魔法で死んだ馬だけで、逃げてしまった馬は居ないようだった。
馬を片付けてから俺も剥ぎ取りに参加した。恥ずかしいことに2回ほど吐いてしまったが、4ヶ月前の魔獣の死体に酔った時と比べると、随分とましだ。
人を殺した罪悪感を感じなかったが、血だらけの首の無い死体から鎧を剥ぎ取り体を弄ったため、気分が悪くなっただけだ。吐いた後は随分とましになった。
戦利品を馬車の荷台に積み込むと昼食用のサンドイッチが配られた。流石に昼食を食べる気にはならなかったので、貰ったサンドイッチはウェストバックに入れて、魔法の水筒の水だけで済ませた。
俺達は盗賊の遺体を放置したまま出発した。
盗賊に襲われた遅れを取り戻すために、午後は移動の速度を上げた。馬が大量に手に入ったので、途中で馬を交換した。
日が暮れて完全に太陽が沈むまで移動してから野営のキャンプを設置した。夕食後に戦利品について話し合った。
俺は断ったのだが、結局、赤目の魔女と竜殺しからの戦利品と賞金は俺が貰うことになり、その他の戦利品については、俺の意見が採用されて、各自が欲しい物を取った残りは全て売却して全員で平等に分けることになった。
2人の賞金首と赤衣の盗賊団を殲滅した功績は俺の物であって仲間で分けるべきではないと、ジュディアスとハヤテから懇々と諭されてしまった。
明日、モントールに着いたら馬と戦利品をマルコム、ハヤテ、アンネが売却し、俺とジュディアスの2人でギルドに報告に行くことになっている。
「教授、教えて欲しいことがあるんですけど、良いですか?」
盗賊団との戦いについて気になることがあったので、俺はワインを飲みながら寛いでいる教授に聞いた。
「何かね」
「マリアさんが張ったバリアの中に全員で篭れば安全だったと思うのですが、外に出て戦ったのはどうしてですか? 赤目の魔女と竜殺しに勝てる根拠は無かったはずです」
「あのバリアは初めて見ましたけど、そんなに強力なんですか? 赤目の魔女にバリアを破られてしまうものだと思ってました。マルコムさんはあのバリアを知ってたんですか?」
アンネが隣に座っていたマルコムに聞いた。
「僕も見たのは初めてだけど、多分、アブソリュートピラミッドじゃないかな。流石に赤目の魔女でも、破るのは難しいと思う。アブソリュートピラミッドを使える人が居るとは思わなかったけど、さすが黒衣の魔女ですね」
マルコムがマリアを見た。
「あら、おだてても何も出ないわよ」
マリアがうふふと笑った。
「確かに、マリアくんのバリアはアブソリュートピラミッドと呼ばれる最強の防護バリアだ。赤目の魔女では破れないだろうが、アブソリュートピラミッドを張ったまま移動はできないし、マリアくんの魔力が尽きれば、消えてしまうよ。閉じこもったとしても、結局は戦うことになる。
僕はリオンくんがあの2人に勝てるのではないかと期待して一緒にバリアから出たんだよ。マリアがリオンくんを信じろと言ったからね。
無傷では無かったが、結局、赤衣の盗賊団をリオンくんが殲滅したからね。マリアくんの言う通りだったよ」
「私は赤目の魔女の魔弾にやられたから見てないけど、リオンさんはどうやって2人を倒したのですか?」
アンネが教授に聞いた。
「私も竜殺しにやられて見てない。是非、教えて欲しい」
ジュディアスも教授に聞いた。
「マルコムとアンネさん。ジュディアスさんとハヤテさんも倒れたから、近くで見てたのは教授だけです。私はバリアの中だったから良く見えなかった」
教授の隣でワインを飲んでいたマーガレットが教授に聞いた。
「確か、「パン、パン」と乾いた大きな音が4つ。リオンくんの方から聞こえたと思ったら赤目の魔女が倒れたよ。その後、竜殺しがリオンくんを倒そうと剣を振りかぶって凄いスピードで向かった。竜殺しがリオンくんに剣を振り下ろしたと思ったら、いつの間にかリオンくんは竜殺しの背後に居て、刀で切りつけてた。竜殺しの体が2つに分かれて倒れたらリオンくんは刀を左右に振ってから背中に刀をしまったね。
いやー。あれは格好良かったね。僕が女性なら一発で惚れてたよ。
暫くすると残りの盗賊団が大声を張りながらリオンくんに迫って行ったけど、リオンくんは魔弾銃でこうやって横に動かしながら物凄い勢いで魔弾を撃って、あっと言うまに残った盗賊を倒してしまった。
あれが実際に起きたこととは僕も思えなくてね。なんだか夢を見てたんじゃないかと今でも思っているよ」
…………。
「なんだか英雄の伝説を聞いてるみたいで、とても信じられないです」
アンネがポツリと感想を言った。
「確かに、私でも信じられないところだ。勿論、教授の話を疑っている訳ではないよ」
「リオン。一体、どんな技を使って2人を倒したんだ?」
アンネに続いてジュディアスが教授に感想を言ってから俺に顔を向けて聞いた。
「それは秘密です。とっておきの隠し技ですから、教えられませんよ」
俺は顔を横に振ってジュディアスに答えた。
「確かに、隠し技を聞く訳にはいかないな」
ハヤテが俺に同意してくれたが、皆は不満そうな顔をしていた。
「しかし、ギルドに報告する必要がある。ギルドに報告する内容を打ち合わせしておこう」
「そうですね。分かりました」
その後、俺達はギルドに報告する内容を相談してから翌日に備えて寝ることにした。