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ETERNAL SAGA Ⅱ   作者: 紫音
episode Ⅰ
9/12

TALE 02 木の民と石の民 

森を抜けると50メートル程先に木で出来た門が建てられてあるのが見えた。

村の入り口と言う事なのだろうか。 門には仮面の者達が2人立っており周囲を見張っていた。

リビィ達なら簡単に入る事は可能だがとりあえず様子を見ると言う事で村の周辺を回ってみる。

村は太い丸太で打ち付けた柵で囲ってあるが、 これは仮面の者達の特性を防ぐ為と予測出来る。

入り口は2カ所ありどちらも見張りが立っている為、 普通に入る事は出来ない。

リビィ達は森の中を回りながらその様子を探っていたのだった。



 「厳重に護られてるな…」


 「どうする? あいつらを何とかしねぇと中に入れないぜ」


 「……私が囮になる。 その隙に中に入れ」


 「ゼノス…大丈夫?」


 「心配ありません。 お嬢様はリビィにしっかりついて行って下さい」


 「わかった。 じゃあ2人共一応“シール通信機能”をオンにしといて」





----ITEM DETA----

【シール】

NO.02

ボタンぐらいの大きさの透明なシールで出来た通信装置。

これは通信を行う一種の電話の様な物で

左耳の後ろの骨の部分に張り、 そこを押さえながら

設定されたチャンネルに合わせると使用者間で通話を行う事が出来る

これにはA.C.Sの機能も備わっており同時に翻訳もされる

-----------------










ゼノスは左耳の後ろに手を当て通信機能をオンにする。

オンにする事で自動的にお互いのチャンネルが設定される。

これはシール通信を行う為に必ずやらなければならない作業である。

またシールは一種の使い捨ての様なもので12時間で機能を停止する。

12時間を過ぎると張ってあったシールは消えてしまうのでまた新たに張らなければならない。

今の技術で時間を永続させる事は可能であるが、 あえてそうしているのは

敵の傍受を阻止する為とされている。

使い捨てにする事によりチャンネルは常に新しいものなので敵に感知されにくいと言う訳なのだ。


リビィとリオネも機能をオンにしてチャンネルを取得すると3人は頷いて行動を起こす。

まずゼノスが入り口の前へ向かい、 見張りの目に自分の姿を映させると森の中へと走って行く。



 「あいつは!?」


 「さっきの奴の仲間だ!! 追うぞ!!」



見張り達はゼノスの後を追って行き、 その間に2人は門を通り抜ける。

門に入る所でリビィは振り返り追いかけて行く見張りの姿を見ながら口にした。



 「お、 ちゃんと翻訳されてる♪」


 「ほら、 関心してないで行くよ」



そして2人は村の中へ



村の中央には広場がありそれを囲って木材で造られた家が建てられてあった。

仮面をつけた者達は皆この広場を囲っており、 その中にはここの村人らしき者が

両手首を縛られながら地面に膝をついて並べられていた。

そのおかげでリビィ達は気づかれる事なくその近くまで行く事が出来たのだった。

2人は広場から1番近い家の中に入り、 家の扉を少しだけ開いて様子を探っていた。

仮面の者達の1人が村人の周りを行ったり来たりしながら言葉を放っている。



 「あいつが…リーダーかな?」


 「多分な…。



 簡単にここまで来れたと思ったら…あそこに集まってたのか…」


 「リビィ…きっとあれがここの人達だよね?


 手を縛られてる…」


 「お前はここで待ってろ」


 「ちょ、 ちょっと待って! 貴方1人じゃいくらなん…」


 「ばーか、 俺を何だと思ってんだよ。


 いいからここで待ってろよ」



そう言い残してリビィは扉を開けて出て行ってしまった。



 「もう…」







広場には仮面をつけた者達数十人がリーダーの話を静かに聞いていた。

リーダーは村人の長らしき人物の肩に槍を当てると背中越しに尋ねる。



 「さあ、 はやく言うのだ。 “聖地ア・ラァ”はどこにある?」


 「………」


 「ユマカリデ! 何のつもりだ!!

 我々木の民と石の民は今まで共に生きてきたはずだろ!


 それなのに何故こんな事を!!」



と縛られていた村人が立ち上がるとユマカリデは持っていた槍をその者の胸に突き刺した。



 「ぐわぁぁぁ!」


 「誰が立ち上がれと言った」


 「ユマカリデ!! 場所を教えれば皆の命は取らないと約束して!!」



もう1人女性も立ち上がってユマカリデに言葉を投げる。



 「…………いいだろう」


 「サシアダメじゃ!


 聖地は絶対に教えてはいかん!!」


 「黙れ!」



ユマカリデは槍の反対側で村の長の後頭部を激しく叩いた。

その衝撃で長は声を上げる事無く地面に倒れる。



 「カムラァァ!! …ユマカリデ!!」 


 「心配するな殺してない。


 それより早く言うのだ」


 「………」



しばらく黙って考えたサシアは他に手が無いと悟ると

聖地の場所を教えてしまったのであった。

ユマカリデは広場にいる何人かに指示を出し、 その場所へと向かう。

そしてその場を去る際、 サシア達を見ながら残りの者達に1つの命令を下した。



 「殺せ…」


 「!?


 ユマカリデ!!」


 「………」



ユマカリデ達は何も言わずに村を去って行った。

そして村に残ったしもべ達は槍を構えサシア達の元へ近寄って来る。

サシアは一歩前に出るとしもべ達に向かって叫んだ。



 「私から先に殺しなさい!!」


 「…サシア!」



しもべ達はサシアを取り囲む。



 「これもテポイの定めと思え…」



槍を構えてサシアの首を突き刺そうと槍を引いた時、

何処からともなくリビィが勢いよく走りながら2丁拳銃を乱射させた。

その攻撃により群れの半数が地面に倒れて行く。

サシアを殺そうとしていた者が合図を送り、 残りの群れをリビィへと向かわせる。

仮面の群れ達は一気に飛び上がり槍を突き立てながらリビィに向かって落ちて来た。

全方位を取り囲まれたリビィは銃に魔力を送るとその場で回りながら銃弾を放つ。



 「おらおらおらおらぁぁぁ!!! ラピッドファイアだぁぁ!!」









---SKILL ABILITY DETA---

NO.03

【ラピッドファイア】

使用者:リビィ

属性:(炎)(風)

範囲:ショート~ミドル


炎の属性エネルギーで銃弾を強化し

加えて風属性エネルギーで攻撃速度を高めた技

トリガーを引くと通常、 弾は1つしか発射出来ないが

この技を使用している場合にのみ1度に5発撃つ事が出来る様になる

効果は弾切れになるまで続く

魔力を用いた属性攻撃

------------------------






 



まるで飛び回るハエを落とすかの様に仮面の群れを次々と撃ち落としていく。

リビィの周りに死体が落ちてそれが綺麗な円を作る。

しかし残り3人を残した時点で弾切れとなってしまった。

トリガーを引くと カチカチ と音が鳴る。



 「ち、 弾切れか…」


 「イヤァァァ!!」 「アイアイアイアァァァ!!」



その隙をついて2人が勢いよく飛び掛かって来た。



 「お前らはその攻撃しかねぇのかよ…ったく…よぉぉ!!」



銃を後ろにしまいながら前から来る槍を避けると腹に蹴りを放った。

そして後ろにいたもう1人がリビィの背中目がけて槍を投げ飛ばして来ると

流れる様に身体を回転させながら槍を捕まえ、 すぐにそのまま投げ返した。

槍は身体を貫きその者は倒れる。



 「ア…ギ…ァ」


 「……イヤァァァ!!」



腹に蹴りを入れられた者は怒りながらリビィの背後から殴り掛かろうとするも

リビィはスッと横に避け隙が出来た脇を目がけて後ろからフックを打ち込むと地面に倒れ込んだ。

その者の身体を片足で踏みながら両手を後ろに回して銃を取り出しマガジンを捨てると

懐から新たなマガジンを取り出して装着した。

そして最後の1人が少し躊躇しながら飛び上がり槍を構えて飛び掛かって来ると

右手の銃を構え、 1発だけ放ちその者の身体に命中させた。



 「ギ…ア…ァ」



地面に落ちて来るのを見ていると足元に倒れていた者が足を掴み

転がってあった槍に手を伸ばそうとしていたところを左手の銃で1発

リビィはその身体に撃ち込んだ。



 「……ア…グ…ァ…」



残すはサシアの前にいる者のみ。

リビィは片方の銃をその者に向けながら距離を詰めて行きその途中で隠れてるリオネを呼ぶ。



 「もう出て来てもいいぜ~!!」


 「な、 何者だ…」


 「へへ、 正義の味方だよ」



家の扉からリオネが広場へと走って来た。 リビィは縛られている村人達を

解放するように彼女に伝えると立ち止まらずにそのまま村人の元へ向かう。

そして縛られてある縄を解いていく。

最後に倒れている長、 カムラの縄を解くと意識が戻り、 リオネに尋ねた。



 「あ…あ…あん…た達…は…一体…」


 「敵じゃないので安心して下さい。 それより大丈夫ですか?」


 「は…い…。 ありがとう…ご…ざいます…」



全員を解放したのを確認するとリビィは目の前の者に問い掛けた。



 「お前こそ何者だ。 何でこいつらを襲った?」


 「よ、 ……よそ者には関係…ない事だ」



リビィはその者の足元を数発撃ち、 もう1度同じ質問をする。

すると震えながら口を滑らせた。



 「す、 すす…全ては、 我がケ、 ケケ、 ケドナの長が


 お、 お、 おお…お決めになった事だ」


 「ケドナ?」


 「この者の名前はグイナ。 ケドナとは石の民が崇めるテポイの事です」



サシアがリビィに答える。



 「……お前は?」


 「サシアです」



縛られている手首を見つめるリビィはもう片方の銃を構えながらサシアに告げる。



 「手を上げろ」


 「え…?」


 「いいから…」



言われるままにサシアは手首を頭上に上げた。

リビィはそこを目がけて1発銃弾を撃つと彼女の縄を撃ち抜いた。

サシアの隣にいたグイナは驚きの表情を浮かべながらリビィに尋ねる。



 「さ、 さささっきから貴様が使ってる…そ、 そそそのおかしな術…

 まさか…神の使い…なの…か…?」


 「あん? 神の使い? 何だそりゃ」


 「わ、 我が長と似たような術…間違いない…まさかタタイにも神の使いが現れていたとは…」



グイナはリビィに向かって神の使いと言う言葉を吐いた。

確かに原始レベルの文明に生きる者からすればリビィの武器は得体の知れない力。

サシアを含めここにいる者達全てが魔術か何かと思っている事だろう。

そしてグイナが口にした『我が長と似たような術』

これはどう言う事なのだろうか?

自分達と同じ高度な文明の人間が長となっているのか。

或いは本当に神の使いであるのか。

その事をリビィが聞き出そうとした時、 グイナの隣にいたサシアが落ちていた槍を拾い

背中から勢いよく突き刺したのだ。



 「ぐ!? …あ…ぁ…ぁぁ…」


 「お、 おい…!!」



グイナは振り返ってサシアを睨むと力尽きて地面へと倒れて行った。



 「お前何で…」


 「こいつは…」



周りに倒れているケドナ族を見渡すとサシアは話を続ける。



 「こいつらは…木の民を…まだ幼い子供までもその手に…かけたのです…」

 

 「………」


 「我々木の民と石の民は共に聖地を護って来ました。


 それぞれ崇めるテポイは違いますが…それによって争った事は1度もありませんでした。


 5年前までは…」


 「5年前?」



リオネとカムラ達はリビィ達の元へと集まり、

2人はサシアや他の者達からこれまでの経緯を聞く。


5年前までは両種族とも平和に暮らしていたがやがてケドナの長が寿命でこの世を去った。

次の長を決める為、 聖地ア・ラァを訪れたケドナ族石の民はテポイ像に祈りを捧げる。

これはケドナ、 タタイどちらも共通している事で新しい長を決める時には

必ず聖地を訪れ祈りを捧げてテポイからのお告げが来るのを待つのだ。

ある日いつものように祈りを捧げにやって来ると像が何者かに破壊されていた。

代わりに1人の男がそこに立っており、 自分は神の使いだと言ったのだという。

証拠を見せると言って男は不思議な術を使い森を焼き払った。

これを見たケドナ族達は奇跡と恐怖を植え付けられその男を長に迎えた。



 「男の名は…ガレット」


 「ガレット…」



リオネはこの名前に違和感を覚える。

何度も口にしながら考えているとリビィがそんな彼女に気づき声をかけた。



 「どうした?」


 「う~ん…リビィは気にならない?


 ガレットって名前」


 「…ん~いやぁ別に。 気になるのか?」


 「名前の感じがあたし達に似てないかなって思って」


 「まぁ言われてみれば…確かにガレットって名前

 両種族の中でも浮いてるよな」



するといきなり2人の頭の中で ピコピコ と電子音が鳴る。

これはシール通信の受信音。 頭の中で響いているので他の者には聞こえない。

2人は左耳の後ろに手を当てると通信を繋いだ。



 ((お嬢様ご無事ですか?))


 「うん。 こっちはもう大丈夫だよ」


 「おいおっさん、 今何処だ?

 おっせーから死んだと思ったぜ」


 ((……勝手に殺すな。

 見張りは既に片づけたがその後、 奴らの集団が何処かに向かって行ったので

 今追跡しているとこだ))


 「さっきの奴らだな。 今どの辺りにいるんだ?」


 「その村からだと恐らく東だろう」


 「ゼノス、 そのまま追跡して。


 きっとあいつらは聖地に向かってるはずだから。


 あたし達も急いで合流する」


 ((分かりました。 通信終わり…))



通信が途絶えた。



 「リオネ、 ここで待っててくれないか?」


 「え? 何で…」



リビィに問いてる途中でリオネは話を止める。

そしてここまでの事を思い返してみた。

この村に来る途中で休憩をした事、 戦いの時リビィ達が自分を護ってくれた事

ここでリビィについて行くと自分は足手まといになるに違いない。

そう思ったリオネは少し顔をうつむかせてリビィに伝える。



 「そっか…うん、 待ってるよ…………」


 「……何だよ、 どうした?」


 「え? ううん!! 何でもない!


 いいから早く行って来て」


 「あぁ…」



リオネに背を向けたリビィは首をかしげるとゼノスの元へと向かったのであった。




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