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ETERNAL SAGA Ⅱ   作者: 紫音
episode Ⅰ
12/12

TALE 05 憑依

-タタイの神殿-


ゼノスと合流を果たしたリビィ達は

改めてこれまでの事について話し合っていた。

ユマカリデが魔導具を使い熟していた事

サシアの言っていたユマカリデの“昔と今”

そして黒幕であるガレットと言う者。

3人の疑問の行き着いた先はこの“ガレット”であった。



 「この星の人間じゃないって事は確かね。

 多分ユマカリデやケドナ族が昔と変わったって言うのも

 このガレットが何かやったのよ」


 「魔導具もガレットから譲り受けたと言ってました」


 「ガレットって一体何者なんだろ…?」


 「恐らく我々と同じ高度な文明の人間でしょう。

 神の使いを演じ、 この星の人々を操って楽しんでいる。

 放っては置けませんね。


 ただ、 そうまでして神の使いを演じている理由がわかりません」


 「理由は多分あれよ…」



リオネは顔で奥の祭壇に置かれているタタイの像を指した。

牛の様な姿の石像は所々が欠けており、 一目見るとすぐに

古くから祭られてあると言う事が理解できる程、 像は朽ちていた。

ゼノスはその像をじっと見ながら再びリオネに目を移して問う。



 「…でもあの像にどんな価値が?

 この星の人間ならともかく、 あれを手に入れて

 どうするんでしょうか」


 「だってタタイの人達を殺してまで手に入れたい物なのよ?

 あの像にはきっと何かあるんだわ」



ゼノスの隣にいたリビィは一丁の銃を取り出し

神殿内の色々な物に照準を合わせながら遊ぶ。

次々と照準を変えていると ふっ と疑問が沸いて

目の前のリオネに問い掛けた。



 「で、 ユマカリデが入れない理由ってやっぱ

 憑りつかれたからか?」


 「…う~ん、 一応神殿を調べてみたんだけど

 特に変わった所もないし…

 スキャナーがあればエネルギーの反応がわかるんだけどね…」


 「……俺のスキャンはせいぜい生物の位置と

 真っ暗でも見えるぐらいの標準的な機能だからな…」


 「結局の所、 ユマカリデがシルバーミストに取り込まれているのか

 この神殿に何故彼が入れないのかは、 正直わからない…けど。


 確かルべインランスはシルバーミストがこの星にあるって言ったんだよね?」


 「はい。

 奴らはスキャナーを持っていたので

 恐らく我々の船を探している間に発見したんだと思います」


 「でも賊の言葉だろ? そんな簡単に信じていいのか?」


 「お前の言う事も一理あるが…私は今回は信じていいと思う」


 「ふ~ん…。 それで?

 俺達はこれからどうするんだ?

 ここで奴らが来るのを待ってればいいのか?」


 「そうだな。 奴らは必ずここに戻ってくる」


 「オーケー。


 にしても………腹減ったなぁ…」


 「……あたしも。 





 お腹減ったぁ…」



この星に来てからろくに食事もしていない3人。

携帯非常食を各自持参しているのだが

御世辞にも美味いと言える物ではない。

いくら空腹でも非常食に手を出す気にはなれなかった。

しかしそれはまだ余裕があると言う事でもある。

リビィとリオネの話を聞いていたサシアは

3人を神殿の奥へと案内した。

壁の前まで来てその壁の一部を押し込むと

壁は引き戸の様に横に ずるずる と動き始めた。

そう、 壁に見えていたのは実は扉だったのだ。



 「こんな所に隠し部屋があったのか!?」



中には布で出来た大小様々な袋が置かれており

部屋の端にある壺の中には木の実が沢山入っている。

動物の肉なども袋から顔を出していた。

どうやらこの部屋は食糧庫のようだ。



 「この地は冬の季節がとても短くて

 その袋に入ってるマルハントスの肉は冬にしか狩れない動物なのです」


 「マルハントスって美味いのか?」


 「うふふ、 とっても美味しいですよ」


 「そっかぁぁ☆」



サシアがニコッと返した返事に想像を膨らませるリビィ。

生唾を ゴクリ と飲んで袋の中の肉に目を輝かせていた。



 「タタイの料理は貴方達のお口に合うかわかりませんが

 よかったらどうですか?」


 「肉食えんのかぁ!? 食う食う♪」


 「ちょ、 ちょっとリビィ!

 …でも、 貴重な食べ物なんでしょ?」


 「本来は儀式前の宴の時に出したりするんですが

 私達からのお礼と思って頂ければ」


 「そう……じゃあ、 御馳走になろうかな♪」


 「はい!

 では食事の支度をするので広間で待っていて下さい」



3人は食事が出来るまで時間を潰す為に

神殿の広間で待っていたが、 時間を持て余していた。

そこでリオネの提案で神殿の外を散歩する事になった。

外は相変わらず蒸し暑い。

この星は夜より昼間が長いため一日の大半が暑いのだ。



 「それにしても暑いね…。

 サシア達にしてみればこの暑さが普通なんでしょうけど」



太陽光を手で隠しながら空を見上げて話すリオネ。

森の木々に囲まれているおかげで、直接日が当たるのは避けられる。

木陰にいるとそれなりに暑さは和らぐと思って移動するが

この星の環境に慣れていないリオネにとっては余り変わらなかった。

手で内輪の様に扇ぎながら2人を呼んだ。



 「2人共よくそんな平気でいられるよね…

 暑くないの?」



木の幹を背もたれにしてダレた表情を作るリオネの元へ

歩きながらリビィがカラッと笑って答える。



 「もう慣れたぜ。 へへ」


 「あ~そっか。

 レプリロイドって環境に適応する能力があったんだった。



 いいなぁ…」


 「そういう事☆

 人間って本当に不便だな」



両手を後ろに組んで森を見渡しながら

会話を聞いているゼノスにもリオネは同じ質問をする。

元軍人であり、 色々な環境で訓練を積んで来た彼にとって

この様な暑さなどは経験済み。

自分がこれまで体験した過酷な環境での訓練やサバイバルを

細かく説明するゼノスだったが、 話の途中で『暑い』と

言葉を挟むリオネを見ていると『これは彼女が求めていない話』と

感じ取り、 会話のボリュームを段々フェードアウトさせた。

丁度その時、 リビィ達を呼ぶ声が聞こえてきたのだった。



 「お! メシか♪


 行こうぜ!!」



リビィは一足先に神殿へと走って行ってしまった。



 「あ、 ちょっと…!

 もう、 子供なんだから」


 「ふふふ…」


 「何笑ってんのよゼノス」



リオネはゼノスの背中を ぽかぽか と叩き

ゼノスは逃げる様に神殿へ戻って行ったのだった。













-ケドナの聖地-



ユマカリデが聖地へと戻ってきた。

ケドナ族は最早ユマカリデ1人となってしまった。

最後の頼みの綱でもあるシェルマクの元へと

やって来たユマカリデはケドナの神殿内に入り

祭壇に祈りを捧げている男に向かって立膝をついた。



 「戻りました。 シェルマクガレット…」



黒いフードと黒いマントに覆われ、 姿がはっきりと見えない。

影の様に全身が黒い姿のガレットが祈りを終えると

静かに目の前の石像を見ながら後ろで言葉を待つ

ユマカリデに口を開いた。



 「…お前1人か?」


 「はい。 仲間は皆、 死にました…」


 「…そうか」


 「貴方の言われた通り、 タタイの神殿にも結界が張られておりました」


 「やはりな。 中に入れなかったか…」


 「はい…」


 「お前にやった力が足りなかったのかもしれん…」


 「タタイ族の中に不思議な力を持った者達がおりました。

 貴方と同じ様な力で仲間は一瞬で殺され…。


 …シェルマクガレット、 私にもう一度、 お力を授けて下さい!」


 「そろそろお前の“ミスト”が切れる時間か…。


 いや、 その必要はない…」



その言葉を最後にしばらく口を閉じていたガレットは

目の前の像をじっと見つめる。

タタイの像は牛の姿をしていたがケドナの像は鳥だった。

両手で像を持ち上げたガレットはくるっと振り返り

ユマカリデの元へゆっくりと足を運んだ。



 「この像には神の力が宿っている。

 私がお前に授けた力はこの像からほんの少しだけ

 エネルギーを抽出したに過ぎん…」


 「……申し訳ありませんが、 私には理解できません…」


 「当たり前だ。




 ユマカリデ、 離れてよく見ているんだ」



ユマカリデは立ち上がるとガレットから少し離れた。

それを確認するといきなり両手に持っていた像を

地面に叩き付けてしまい像は粉々に割れた。



 「な、 なにを!?」


 「そこから動くな」



割れた像の中から鈍い光を纏った水銀の様な球体が

ぬるっと浮かび上がり、 宙に止まった。



 「どうだユマカリデ。

 神々しい光景だろう? くっくっく」


 「………な、 何なんですかこれは!?」


 「これはシルバーミストと呼ばれる物だ。

 お前に授けた神の力だよ、 ユマカリデ」



ユマカリデは混乱していた。

シェルマクであるガレットがケドナ族の命とも言える

像を割ってしまった事。

それは決して許されない事なのだが割った本人が

ケドナの長と言う複雑に絡み合う現実を

どう受け入れたらいいのか、 わからないでいた。

怪しくも美しいシルバーミストに魅入っていた

ガレットの悪魔の様な恐ろしい笑い声を聞きながら

ユマカリデはただその場に立ち尽くす事しか出来なかった。





----ITEM DETA----

【シルバーミスト】

NO.03

鈍く光る水銀の状のエネルギー体

とてつもない高エネルギー密度の塊で

直径15cm程の大きさもあれば

船の命とも言えるマザーコアを稼働出来る電力がまかなえる

シルバーミストは生物に憑りつく習性があり

憑りつかれると身体能力が大幅な上昇に加え

人格の変化、 超能力の開花などが見られるが

憑りついた者の抵抗力などによって

若干効果が変わったりする

-----------------











ガレットは口元を吊り上げながら

ゆらゆらと浮かぶ球体に一歩近づいた。

するとそれは磁石の様にガレットに引き寄せられて行く。

直径40cm程の球体が腹から全身に広がっていき

やがて身体に溶け込む様に消えて行った。

しばらく笑っていたガレットであったが

体内で何かが少しずつ変わっていくのに気づくと

いきなり唸り声を上げ始める。



 「う…うぅぅ……おォォォ…ぉぉぉぉ…。










 おぉぉぉあぁぁがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」













 「シェルマク!!」



ガレットの纏っていたフードやマントが燃えた様に消滅した。

そして腕や足の筋肉が膨れ上がり、 肌の色に灰色が混ざっていく。

ユマカリデはこの時初めてガレットの姿を見たのだが

すでに人間と思える姿はしていなかった。



 「ぐぉぉぉ………ぐぐぐぐ…」



歯が牙の様に伸び始め、 手の爪も鋭くなっていく。



 「お…おぉぉ…う…ぅぅ。


 し、 し…はいさ…れてたま…る…か…あ…が…ぁ…」


 「あ、 あ、 あぁぁ…。

 シェルマクが…化け物に……」


 「ふ…ふふ…ふ。


 心配……するな…ユマ…カリデ…」



獣と化していた身体が急に元へと戻って行く。



 「………ふぅ…」


 「だ、 大丈夫なのですか…?」


 「あぁ…。



 危なかったが何とか抑える事が出来た…」



確かに獣の様な野性的な容姿では無くなったが

肌の色に灰色が混ざっているのはそのままだった。

膨れ上がっていた筋肉も人間とは思えない程硬く締まっており

血管も石の様に硬く浮き出ていた。

頬や額に黒い紋章の様な文字が薄く現れると

ガレットは驚いているユマカリデを見て笑みを作った。



 「さあ、 準備は整った。


 それでは行こうか……」



スッと一歩、 足を運ぶと消滅したはずの黒いフードやマントが

いきなり ぱっ と現れ、 ガレットの姿を覆い隠した。

そのままユマカリデを通り過ぎ神殿を出て行く。



 「…………わ、 







 私も行きます!!」



ガレットが視界から外れて数秒経過した所で

我に返ったかの様にユマカリデは後を追ったのだった。




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