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ETERNAL SAGA Ⅱ   作者: 紫音
episode Ⅰ
11/12

TALE 04 シルバーミスト

リオネの前に立っていたのは、 宙賊ルべインランスだった。

そもそもリオネ達は彼等に追跡されて逃れる手段として

この星にやって来たのだ。

いかにも賊という野蛮さをかもし出している

その汚らしい顔を見た瞬間に はっ と思い出したリオネ。



 「へっへっへ。 さぁてめぇの船は何処にある?」


 「(ルべインランス…!!)


 残念ね~。 船は壊れちゃったの」


 「そんな嘘が俺に通じるとでも思ったのか? あぁ?

 優しく聞いてる内にさっさと場所を言わねぇと痛い目みるぜ」


 「あんたこそ馬鹿じゃないの?

 その腕のスキャナーで探ればわかるでしょ?

 何処で盗んできたか知らないけど」


 「こぉんのアマァ…!!」



無精髭の男はリオネの頬を引っ叩いた。



 「…うぐ」


 「早く言わねーとぶっ殺すぞ!!」


 「殺したいなら殺せば!! さぁ、 早く殺しなさいよ!

 船の場所を知らなくていいならね!!」


 「む、 むむぅ~!!」


2人のやり取りの間に後ろにいた痩せ細った男が遠慮気味に口を挟んだ。



 「ダッツ、 そいつは本当の事を言ってるぜ。

 やっぱりスキャナーの反応は正常なんだよ。

 諦めて次の獲物取りに行かねぇか?」


 「うるせぇ!! 俺のやる事に口出しすんじゃねぇ!!」


 「やめとけヤンディ。

 ダッツを怒らせるとまたやっかいな事になるぞ」



と言いながらもう1人が肘でヤンディを押す。



 「へっへっへっへ。 そう言う事だ。

 カハールは俺の事をよくわかってるな」


 「だがダッツ、 このスキャナーが正常に動いてるとして

 こいつらの船のエネルギーサインがないのは何故なんだ?」


 「……多分、 ステルス機能を使って隠してるんだろうよ」


 「成程な」


 「おい女、 何処に隠してやがる」



リオネは黙ってダッツの顔を睨んでいる。



 「そうか…なら…死んでもらうしかねぇ」


 「……」



ダッツは持っている銃をリオネに向けた。



 「あんた達に船を渡すぐらいだったら死んだ方がマシよ」


 「そうか、 だが残念ながら死ぬのはお前じゃねぇよ」


 「え…?」



ダッツはリオネの横にいたカムラに銃を向けた。



 「!?」


 「や、 やめなさい!! わかった教えるから殺さないで!!」


 「うっへっへっへ。 じゃあさっさと言え」


 

ダッツはにんまりとした表情で笑みを零し、 カムラに向けていた銃を手元に戻した。



 「こんな原始的民族をかばって何の得になるか知らねぇが…。

 ま、 いいだろう。 さぁ教えてもらおうか」



リオネは少し躊躇いながらもノートを取り出して遠隔操作で

船のステルス機能を解除した。

その瞬間ダッツ達のスキャナーにエネルギーサインの反応をキャッチする。

言うまでもなく反応はリオネ達の船だ。



 「ダッツ、 反応が現れた」


 「だがかなり微弱だ。 船が壊れてるのは本当だったのか」


 「つべこべ言うな。

 修理して売りゃあ数万 Ktキャルトにはなるだろうぜ」



ダッツは笑いながらリオネの顔を見た後

ヤンディ、 カハールと共にリオネ達の船に向かって行ってしまった。

完全にいなくなったのを確認したリオネは

隣で腰を抜かしているカムラに手を差し伸べる。

ゆっくりと立ち上がる彼の身体は震えていた。

恐怖するのも無理もない。

いきなり村が爆発し、 村人が見るも無残な姿になっていたのだから



 「あ、 あいつらは………。 い、 い……一体」


 「ごめんなさい。 あいつらはあたし達を追って来たんです…」



村人がカムラの元に集まって来る。

皆身体を震わせ怯えていた。

黒焦げの死体に抱き着いて泣き叫ぶ子供の姿がリオネの瞳に映った。

きっとこの子の親だろう。 あまりにも変わり果てた姿に

子供は失った悲しみと同じぐらい恐怖で泣いていた。

またある所では女性が死体の前に立ち尽くしている。

恐らく大切な人だったのだろう。

そんなタタイ族の人々を見ていると心が締め付けられそうに痛む。

リオネは自分に責任があると強く責めた。



 「本当にごめんなさい…。 全部あたしのせいです…」



リオネは膝を地面についてそのまま座り込んだ。

泣きたい気持ちでいっぱいだったがぐっと押し戻す。

何故ならここで涙を見せる事は村の人々に申し訳ないと思ったからだ。

そして泣いて楽になろうとする自分を戒める為でもあった。

あの時ゼノスがこの星に降りようとしていた時に

何も考えずに降りるように命じた自分を激しく恨んだ。

まさかこの様な事になるとは微塵も予想していなかったリオネであったが

船長として、 チームのリーダーとして自分が取った行動は間違いであったと

いまさら後悔する。

そんな彼女の肩に ポン と優しく手を置いたカムラは

溜め息と共に一度瞳を閉じると、 静かに口を開いた。



 「リオネさん、 貴方が責任を感じる事はない…。

 貴方達が助けてくれなければ我々はあの時に皆殺されてました」


 「………カムラさん」


 「タタイの民は皆、 貴方達に感謝しているのです。

 この村をケドナ族から救って下さった。

 そしてタタイの像を護って下さった」


 「でもまだ終わった訳じゃありません…」


 「そうですね…」



カムラはリオネに手を差し伸べて立ち上がらせると、

深く呼吸をしてまた話し始める。



 「リオネさん、 我々タタイ族は戦いを好みません。

 しかし……自分の大切な人を、 大切な物を奪われようとしているのに

 何もしないで黙ってる事は出来ません。 我々も戦います」


 「カムラさん…」


 「我々に出来る事があれば遠慮なく行って下され」



カムラはそう言いながら優しく微笑んだ。

彼の笑みは本当に純粋な人間の笑みであった。

一切曇りのない素敵な笑みを見つめながら

リオネも微笑みを返す。



 「ありがとう…」


 「お嬢様!!」



振り向くとゼノスが驚きの表情を浮かべながら声をかけて来た。



 「村から煙が上がっていたので急いで駆け付けたんですが

 遅れて申し訳ありません! 一体何があったのですか!?」


 「ルべインランスが襲ってきたの…。

 ごめん…あいつらに船の場所を教えちゃった」


 「怪我はありませんか?」


 「あたしは大丈夫…だけど…村の人達が…」


 「………そうですか。


 ケドナ族の事ですっかり忘れてました…。

 申し訳ありません…自分の責任です」


 「今その話はしないで。

 とりあえず問題を1つずつ解決していく事に集中するのよ」


 「わかりました…。


 自分はルべインランスをなんとかしてみます」


 「相手は3人よ? リビィもいた方がよくない?」


 「リビィは動かせません。 いつケドナ族が来るかわかないので。

 心配ありません、 これでも一応元ティエリスの部隊を率いた身ですから」


 「わかった。 あたしは聖地へ行くわ。

 大丈夫! あたしだって普通の女の子じゃないから☆」


 「……ははは」


 「…何よゼノス」


 「あ、 いえ…。 気をつけて下さい」


 「うん!!」



















その頃

目的の船の前までやって来たダッツ、 ヤンディ、 カハール3人は

予想以上に損傷している船体を見てやきもきしていたのだった。

ヤンディが腕のスキャナーで船全体を細かく調べ始めた。

彼はこの中で一番機械に詳しいらしい。



 「どうだヤンディ。 動きそうか?」


 「………いや、 無理だろうな。

 マザーが完全に機能を停止している。 コアが傷ついてる証拠だ」



それを聞いてダッツは不機嫌そうな顔を

見せつけるかのように彼に言葉をかけた。



 「で、 てめぇは直せるんだよなぁ? ヤンディ」


 「聞いてなかったのか? コアに傷がいってると言う事は

 自動修復は出来ないって事だ…つまり」



ヤンディの話の途中でダッツは フンッ と鼻から息を出すと

首元を掴みながらこう言った。



 「つまりぃ? 何だよ、 あぁ?」


 「ぐぅ…は、 はな…せよ!!」


 「おいおいダッツ!!」


 「まさかてめぇ、 直せないって言うんじゃないだろうなぁ!」


 「だ…だか…ら、 こ…アが…傷ついてるの…に…直せ…るわけ

 ね……だろ……ぉ…ぉぉ…ご……ぉ…」


 「ふん!!」



ダッツは首元を掴んだままヤンディを押すと地面に転がった。



 「ごほっ…げほっげほっ…」


 「直せねぇんならどうやって運ぶんだよ!!」


 「落ち着けダッツ。

 俺達の船に戻って仲間に連絡しよう。

 分け前は減るが何もないよりマシだろ?」


 「むむぅ…まぁな。


 よし、 船まで戻るぞ!」



3人が向かおうと後ろを振り返るとそこにはゼノスが立っていたのだった。



 「てめぇ…女の仲間だな」


 「貴様らはここから先へ行く事は出来んぞ。


 一歩もな」





















 「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ」


 ((ほら、 頑張れよ。 もうすぐで前に洞窟が見えてくる))


 「はぁはぁ…はぁはぁはぁ……はぁ…了…解…」



リオネは今聖地へ走って向かっていた。



 ((別に走らなくてもいいのに、 周りに奴らはいねぇって))


 「はぁはぁ………いいから…はぁ…はぁ…はぁ…黙ってて」


 ((へいへい…仰せのままに…お嬢様))



しばらく走ってると先に洞窟が見え始めた。

スタミナがすり減り疲れ切っている身体に鞭を入れると

リオネはもう少しと自分に言い聞かせながら洞窟を目指す。

だが意志とは裏腹にペースが段々と落ちていき、 呼吸も乱れていく。

足を運ぶ力も無くなっていきやがて地面に倒れ込んでしまった。



 「あ……った…い」


 ((ん? どうした?))


 「な…んでもない…転んだだけ…はぁ…はぁはぁ…」


 ((無理するからだろ…。 まったく…。


 ちょっとそこで待ってろ)) 


 「はぁ…はぁはぁ…はぁ…ん…え…何?


 ごめん…なんて言ったか…はぁはぁ…聞き取れなかった…」



リオネの言葉にリビィは返事を返さなかった。



 「リビィ…? 聞いてる?


 あれ…? 回線閉じたのかな…。



 リビィー!! 聞こえてるの~!!」


 「聞こえてるぜ」


 「わぁ!!? びっくりするじゃない…もう馬鹿!!」



リビィは寝転がってるリオネの横に座る。

2人はしばらくそのままでいたがリビィが聖地に戻らない事に

不思議に思ったリオネは息を整えると彼にこう言った。



 「貴方がここにいたらダメじゃない。

 あいつらがいつ来るかもわからないのに」


 「その事なら大丈夫だ。

 スキャンの範囲は神殿まですっぽり入ってる。

 ダッシュで戻っても1分もかからないさ」


 「本当?」


 「本当」


 「はぁ……はぁ…」


 「少し休めよ」



そう言って寝転がったリビィ。

何気なく顔を横に向けたリオネは

彼の気持ちよさそうな表情をしばらく見つめていた。



 「ん~気持ちいい♪ あっちぃけど…」



と、 リオネに話しかけるように独り言を漏らすリビィが

ふっと彼女に顔を向けた。

彼と視線が合った瞬間にリオネは反射的にそらし、 空に目をやる。

そして不自然に起き上がった。



 「さ、 さぁ、 十分休憩したし…。

 そろそろ行こっか」


 「もういいのか?」


 「うん」



豪快に起き上がったリビィは

先に洞窟の前に走って行くと彼女を手招きをしながら

名前を呼んだ。

歩いてリビィの元へ向かって行く間

リオネは地面を見つめながら考え込んでいた。



 「(なんだろうさっきの…。

 さっき…リビィを見た瞬間に…何か…)」


 「この洞窟を抜けるとすぐだから

 歩いて行こうぜ」


 「………」


 「リオネ?」


 「(でも何で…?)」


 「リィ~オォ~ネェ~!!」


 「え……何?」


 「お前…やっぱまだ疲れてんだろ…」





















そしてゼノスは…。









 「一歩も行けねぇだとぉ? へっへっへ。

 まさかてめぇ、 俺達とまともにやれると思ってんのかぁ?」



ゼノスは背中のブレードを抜くと無言で構える。



 「おい…そいつはエネルギーブレードじゃねぇか!」


 「なにぃ!? って事はてめぇティエリスの軍人か!?」


 「元な…。

 どうした、 かかって来んのか?」


 「うへへへへ!! その武器も結構高く売れそうだなぁおい」



舌なめずりしながら銃を構え、 ゼノスへとゆっくり向ける。

そのダッツの行動にいきなりカハールは

彼に近寄り、 構えてる銃を掴んで銃口を地面へ向けると



 「やめろ!! 相手はティエリスの軍人だぞ!?

 俺達が束になっても叶わない相手だ!!」


 「うるせぇぇ!!

 その手を離さねぇとてめぇの手がぶっ飛ぶ事になるぜぇぇ!」


 「本物の馬鹿だなお前は…そんな武器で奴を殺せると思ってるのか?」



カハールの発した言葉がダッツの怒りのスイッチとなった。

鼻息を蒸気の如く噴射すると銃を掴んでいた手を強引に振りほどき

彼の頭に銃口を向け引き金に手をかけた。

ダッツはその顔に唾を飛ばしながら言葉を吐いた。



 「カハァァル!!

 俺は別にてめぇ1人が死のうがどうって事ねぇんだ!!

 分け前が増えて逆に嬉しいぐれぇだぜぇぇ!!

 

 いいかぁぁクソ野郎が!!

 死にたくなかったら俺に指図すんじゃねぇよぉぉ!!」


 「仲間割れか…。

 お互い潰し合っても私は一向に構わんが…

 悪いが他の星でやってくれ」


 「あぁぁぁ?




 調子にのんなよ…この野郎がぁぁぁぁ!!」



カハールを突き飛ばしたダッツは再びゼノスへ向けると

力任せに銃弾を撃ち込んで行く。



 「おらおらおらぁぁぁ!!! 死にやがれぇぇ!!」



ダッツが撃った弾をゼノスはその場から一歩も動かずに

腕だけを動かしてブレードで受け止めていた。



 「なぁぁにぃぃぃ!?」


 「……す、 すご…い」


 「よ、 予想していた以上だ……」



全弾撃ち終えたダッツは無傷のゼノスに驚き

持っていた銃を地面に落としてしまった。



 「そ、 そんな馬鹿な…。 あれだけ撃って一発も当たってないなんて…」



ブレードを振り回しながら再び構えを取るゼノス。



 「貴様らの様な輩に、 私の命はやれないよ」


 「こ、 ここんのぉ…やろうぉぉ!!!


 ヤァァンディ!! てめぇの銃を貸せぇぇぇ!!!」



そう言いながらヤンディの持ってるマシンガンをぶんどると

再びゼノスへ向けて撃ち始めた。



 「今度こそ終わりだぜぇぇぇ!!!」


 「マシンガンか…」



連射のスピードに長けているマシンガンには

さすがのゼノスも完全に防ぎ切れないようだ。

ブレードで弾いてるが肩や頬にスッと銃弾がかすっていく。



 「ぐ…!」


 「うっへへへへ!!

 よく見とけよカハール! あいつの頭にぶち込んでやるからよ!!」


 「(くそ…まだ弾切れにならんのか)」


 「ひゃっはははははははははは!!!!」



ダッツは甲高かんだかい奇声を上げながら銃を連射し続ける。



 「言っとくが弾切れの心配は無用だぜ…へへへ。

 こいつはエネルギー式だから尽きるまで永遠に撃てるんだぜっへへへ」


 「なるほど…じゃあ待ってても仕方ないか。





 むんっ!!」



銃弾を防いでいたゼノスはその場で身体を回転させて

一度向かって来てる全ての銃弾を弾くと

その行動に一瞬ダッツは引き金から手を離してしまう。

隙が出来た所にゼノスは走りながら左手の魔導具のスロットルを回した。

紋章が光と共に浮かび上がって来る。

油断したダッツは再び走って向かって来るゼノスに

照準を合わせながら撃ち始めた。

しかし動いている相手を捉える事までは出来ないダッツはただ乱射しているだけだった。

そしてキュイィィンという電子音と共にフッと姿を消したゼノス。

はっとその事に気づいたカハールはダッツに声を飛ばした。



 「ダッツ気をつけろ!! 奴は魔導具をもってやがる!!」


 「なんなんだぁ? 魔導具って」


 「き、 きえた…」



ダッツ達の前から姿を消してから僅か数える暇もない程の

そう、 一瞬とも呼べる短い時間にゼノスはダッツの前に現れ

握っているマシンガンを奪って地面に投げ捨てた後

そのままブレードの柄を腹に当てた。



 「あ……が…ぁ…」



ダッツはゆっくりと背中から地面に倒れていった。

魔導具のスロットルを任意に戻し素早く解除する。

本来は自動的に戻って解除されるのだが

自分で戻す事によって体力の消耗を抑える事が出来る。

それでもゼノスには負担がかかっていた。



 「…はぁ…はぁ…はぁ」



息を切らしながらダッツが気絶しているのを確認している

ゼノスに向かって銃を構えるカハール。



 「動くな…!」


 「はぁ…はぁはぁ…」


 「……」


 「カハール! 何してんだ! 早く撃てよ!

 スタミナが切れてる今なら奴を仕留められる!」


 「はぁ…はぁ…。 どうした? 撃たないのか?」


 「う、 うう…」



カハールの手が小刻みに震えている。

彼はゼノスに恐怖していたのだ。

身の丈ほどもあるエネルギーブレードを操る力。

魔導具に堪え切れるだけの強靭な肉体とスタミナ。

全てにおいて人間離れしているゼノスが怖かった。



 「カハール!!」


 「……」


 「貸せ! 俺がやる!!」


 「よせ! 撃つんじゃない!!」



カハールから奪い取ったヤンディはゼノスへ銃口を向けると

躊躇いなく引き金を引いた。

しかしその銃弾はゼノスへは届かなかった。

ゼノスはヤンディが引き金を引く前にブレードを投げ飛ばしたのだった。

ブレードは彼の腹に深く突き刺さった。



 「あ…あ…ぐ…」


 「や、 ヤンディ…」


 「出来れば殺したくはなかったが……」


 「頼む…。













 頼む…見逃して…くれ…」



カハールはゼノスの前で土下座をする。

その震えている身体を見て哀れに思ったゼノスは

深い溜め息と共に冷たく言葉を並べた。



 「行け…。 

 もし、 次会う事があれば命の保証はないぞ。


 わかったな」


 「あ、 あぁ…」



カハールはダッツを担ぐと、 ゼノスの顔をもう一度見た。

そしてしばらく俯いていて何かを考えていた。



 「………」


 「なんだ……」


 「この星には…










 “シルバーミスト”がある…。

 それで船は直せるだろう…」


 「シルバーミスト? 何だそれは」


 「それでマザーのコアを修復出来るはずだ」


 「本当か?」


 「だが気をつけな。

 誤ってシルバーミストに取り込まれると

 身体を乗っ取られちまうからよ」


 「何? どういう事だ?」


 「………詳しくは俺にもわからん」



カハールはダッツを担ぎ直し、 ゼノスに背を向けた。



 「何故私に教える?」


 「………見逃してもらったお礼とでも言っとくよ」


 「……」



そしてカハールはゆっくりとその場を去って行った。



 「シルバーミスト……。


 お嬢様に聞いてみるか…」



ゼノスがリオネに通信を送ろうとした時だった。

タイミングよく ピコピコ と脳内から電子音が鳴った。

左耳の後ろに手を当てて回線を繋ぐ。



 ((ゼノス無事!?))


 「はい、 ちょうど報告しようかと思ってた所です。

 賊は逃しましたが船は無事です」


 ((そう…よかった))


 「お嬢様に聞きたい事が…」


 ((どうしたの?))


 「シルバーミストってご存知ですか?」


 ((シルバーミスト……?


 シルバーミスト……聞いた事あったような…何よそれ))


 「いえ、 自分にもよくわからないんです。

 賊の1人が言ってたんですが

 シルバーミストを使えば船は修復出来るそうなんです」


 ((本当!? やったじゃない!

 これでこの星から出られるわ!!))


 「しかし、 それが何処にあるのかもわかりません。

 この星の何処かというのは間違いないですが…」



と、 ゼノスが話すのだがリオネからの返事はない。



 「何処を探せばいいのかも全く見当もつきません。

 それにシルバーミストはどうやら人間に憑りついてしまうらしいのです。

 上手く扱わないと非常に危険なもので…」


 ((ゼノスちょっと待って……。



 シルバーミスト…だっけ?))


 「あ、 はい」


 ((シルバーミスト……何処かで聞いたことあると思ったら

 トリニティ本部からの連絡で確かシルバーミストがどうとか言ってたような…))


 「本当ですか!?」


 ((多分…だけどね…。 帰ったら聞いてみようよ))



2人の会話にいきなりリビィが回線を開き口を挟んだ。



 ((おっさん…ちょっといいか?))


 「どうした?」


 ((話聞いて思ったんだけど

 あの時魔導具使ってた……えっとヤドカリだったっけ?))


 「ユマカリデ」((ユマカリデ))


 ((そ、 そうそう。

 そのユマカリデとシルバーミストって何か関係ないか?))


 ((どうして?))


 ((サシアが言ってたんだ。

 あいつは昔と違うってさ、 もしシルバーミストが憑りついたりして

 人格を変える物だったらあいつ憑りつかれてるんじゃないかなって))


 「そ、 そうか!! そう言う事か!」


 ((そっか! だから魔導具を使っても息1つ切れてなかったのね。

 マザーのコアを修復できるぐらいのエネルギーだもん

 きっとそのエネルギーを使ってるんだわ!!))


 ((だろ~? 俺って頭良いだろ♪))


 「だがそれが本当なら、 かなりやっかいだぞ」


 ((ゼノス、 とりあえずこっちに来てくれない?


 話はこっちで))


 「わかりました。 すぐそちらに向かいます」



通信を終わらせるとゼノスは聖地に向けて走り出したのだった。





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