~プロローグ~
2はエターナル1(アッシュストーリー)の続きではありませんが一応続編となっております。
2から読んでも全く問題ありませんので。
深い森の奥。
空は、 雲にまで届く勢いで伸びる巨大な木々に遮られており太陽の光が一切届かない。
すぐ近くにそびえた大木と大木の隙間から蜂の姿をした昆虫が頭上を通り過ぎた。
サイズはそれとは比較にならない程巨大だ。
足元には水分を多く含んだ若々しいコケが張り巡らされ、
纏わりつく霧と空気で満ちていた。
人間が立ち入る場所ではないこんな深い森の中に1人、
男が遥か上空にまで伸びる木を見上げながら口を開いた。
「…始めるぞ」
小さな声でぽつりと呟くと両手を後ろに回し2丁の拳銃を取り出した。
口元に軽く笑みを浮かべ、 その銃口を飛んでいる昆虫に向けて
引き金を引くと勢いよく乱射させた。
「ひゃっっほぉぉぉぉい!!」
銃声の嵐が森に響く。
ターゲットにされた巨大な昆虫1体に全ての銃弾が命中する。
緑色の液体がその都度あたりに飛び散って落ちて来た。
成す術もなく昆虫は大量の液体と共にその男に向かって落下して行く。
それを右へ、 左へ華麗にステップを踏んで難なく回避して
両手の銃をくるくると回転させると死骸に構えた。
そして満足した顔を見せ、 銃をしまう。
「んじゃ、 例の“アレ”頼む」
男は左耳の後ろに手を当てながら誰かと会話しているが、 この辺りに彼以外の人間は確認できない。
辺りにいるのは先程の男が倒した蜂の様な姿をした巨大な昆虫。
その虫の群れが空から十数体、 ヘリコプターのプロペラ音の様な爆音を
散らせながら向かって来ていたのだった。 音の正体は羽の音である。
「うえぇぇ…こんなに…何処に隠れてやがったんだよ」
まるで銃を持っているかの様な不思議な構えをその群れに向けた次の瞬間、
両手を構えている辺りに突然、 光の線が現れ何かを形作っている。
それが完了するといつの間にか両手持ち用の大きなマシンガンが握られていた。
男が乱射するまで僅か3秒にも満たない。
「ほらよぉぉぉぉぉ!!!」
銃口から ちらちら と光が点滅している。
上から降ってくる虫の群れに炸裂させながら、 走って対象との距離を保つ。
細身の体型でありながらも、 マシンガンを軽く扱い移動に全く支障が見られない。
狙いやすい場所へと常時移動しながら男は1体、 そしてまた1体と虫を地面に落としていく。
しかし群れの数匹がその攻撃網を避けて男の背後に迫って来たのだった。
「お!? やべ…っ!」
虫の1体は男に腹を向けると尻らしき所から針を数本飛ばして来た。
とっさに後ろへ回避するがその内の1本が彼の左太ももに刺さってしまう。
その直後に身体の感覚の異変が生じ、 視界が曇った様に何も見えなくなってしまった。
マシンガンを握っていた手の力も段々と無くなっていき、 地面に落とすと
男も膝をついて動けなくなってしまった。
「ぐ…か、 から…だ……が…」
((ちょっと…何してるのよ!))
「わ…悪い。 助けに…来てくれ」
((もう……調子に乗ってるからでしょ~!
今収容するから動かないでよ))
「へ、 へっへっへ…。 …う…ごきた…くても……動け…ねぇ…って」
その会話の間に男を囲んだ虫の群れが先程と同じ様に皆、 針を飛ばそうと尻を向けていた。
視界は見えないが耳で拾う羽音でなんとなく危険だと察知する。
「はやく…しろ」
男がその言葉を発したのが合図となり、 虫達は一斉に針を飛ばし始めた。
全方位から発射された長さ30cm程の針の雨。
その1本が男に命中する直前に上空から光の柱が現れ、 彼の身体を包見込む様に
光の玉となって空へ昇って行ったのであった。
-宇宙船・船内-
部屋の中央に鉄製の長椅子が置かれており、 それを囲って機械類が壁に沿って設置されてある。
リクライニング式で丁度頭を置く部分に3本の鉄のチューブが取り付けられている。
それは壁の機械と繋がっていた。
男が目を覚ますと、 その長椅子に身体が固定されていたのだった。
透明な板を片手に持ちもう片方の手でその板を操作している女性が男の側に立っている。
ぼんやりとした視界で彼女に目を向けると、 声をかけた。
----ITEM DETA----
NO.01
【ノート】
この世界の標準的携帯用PC
プラスチックフィルムと呼ばれる素材で出来ており
厚みが数ミリで薄く、 曲げる事も出来る
筒の様なケースに入れて持ち運ぶのが一般的である
それ自体のサイズも幅広くあり、 名刺サイズの小さなサイズもある
使い方は手で持ち実際に触れて操作するタイプと
床に置いてホログラムシステムで操作する2タイプが存在し
使用者の用途によって切り替える事が出来る
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「……さっきのはやばかったよな」
「当たり前でしょ~! 武器の転送テストだって言ってるのに…
ケアするのも簡単じゃないんだからね! もぅ!」
「だ、 だから悪いって言っただろ?」
「……」
女性は軽く頬を膨らませながら板に何かを入力している。
「悪かったって! なっ?
そうやって膨れてる顔も可愛いけど、 やっぱり笑ってた方が可愛いぜ☆」
「はいはい…。
そうやって誤魔化すのは“リビィ”の得意分野だもんね」
----CHARACTER DETA----
NO.01
【リビィ】
推定年齢28
髪:耳が半分隠れる辺りの長さで
オールバックの様に後ろに流している
髪色:赤茶
瞳色:黒
身長:178
体重:58
特徴:左耳に菱形のピアス
右後ろ首にⅥと言う数字のタトゥー
メイン武器:2丁拳銃
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「別に誤魔化してなんかねーだろ」
「…これで完了…っと。
もう起きてもいいよ」
リビィーは身体を起こし溜め息を吐いた。
「なぁ一応あれって成功だろ?」
「…うん、 この船のシステムで出来るか不安だったけど一応ね」
「“リオネ”なら出来るって俺は信じてたぜ! へへへ」
「はいはい。 ありがとね」
「な、 なんだよ…その冷たい態度は~。
もっと可愛く言えないのかよ」
----CHARACTER DETA----
NO.02
【リオネ・バージル】
推定年齢28
髪:肩甲骨辺りにまでのロングヘアーを1つに束ね
右肩から流している
髪色:黒
瞳色:黒
身長:160
体重:?
特徴:髪を束ねている
前髪を赤いヘアピンで止めてある
ハスキー声
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リビィの言葉を軽く流しながらリオネは手元のノートに触れて何かを入力する。
「もう行っていいよ」
「……なぁ、 メシ食いに行こうぜ」
操作している手を止めると溜め息と共にリビィに言葉を返した。
「……一緒に行けない事知ってて言ってるでしょ」
「そんな事後でやりゃあいいじゃねーか」
リオネは無言のまま作業を再開させる。
「………って、 お前が素直に聞くわけないか」
椅子から立ち上がり、 部屋の扉へと向かうリビィ。
自動ドアが左右に開くと振り向いて声をかけた。
「なぁ……」
「ん?」
「……今でも俺達って追われてるのかな」
「……」
リオネの入力していた手が彼が漏らした言葉により再び止まった。
そして何を言う訳でも無く目を伏せる。
「なぁ~んてな! あれからもう13年経ってるんだから
さすがにそりゃないかぁ~。 あはははは」
両腕を頭の後ろに回し、 リビィは笑いながら部屋を出て行った。
自動ドアが左右から閉まっていき、 彼の後ろ姿を目に残すリオネの表情は暗かった。
「(13年…。 そっか…あれから13年も経ったのね…)」
13年前の…【あの日から】