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ライナスの毛布

〈秋彼岸どれがお萩で牡丹餅か 涙次〉



【ⅰ】


 1歳児。君繪に乳齒が生えてきた。言葉も「パパ、ママ」ぐらゐは話せる。だがカンテラはつひエスパーとしての君繪と語らつてしまふ。

(パパ、もしも蘇生したら怖いつて云ふ、【魔】つてゐる?)‐(【魔】つて云ふのはだうかと思ふけど... やつぱり鞍田文造かなあ)‐(パパの造り主ね。パパ自身で手を下すのつて、やつぱり氣が退けるのかな?)‐(不肖のであつても、俺にとつては父親だからなあ)‐(でもお彼岸にお墓の前で掌を合わせてつて感じぢやなないんでしよ?)‐(そりやあね。一度は俺が斬つた譯だから。憎しみと愛情は紙一重だよ)



【ⅱ】


 * 鞍田文造、異端の魔導士。** カンクローこと環九朗のスケールを上回る、魔道のキメラメイカー。彼の手に依つて、烏賊釣り漁船由來のカンテラ(=ランタン)の中に生を()けた、カンテラ。以前は引き籠もり狀態で執着してゐたそのカンテラも、もはや人間に近付きつゝあるカンテラ、こと神田寺男には不用品の一つになつてしまつた。今ではその中で微睡(まどろ)むと云ふ事も、まづない。

 だが、出來ないのだ、そのカンテラを兩断する事が。兜割りよりも容易い筈なのに... 幾度試みた事か、もうその回數を忘れてしまつたのだが、最近では使つてゐないその「外殻」を斬るのが、こんなに恐ろしい事とは。




* 当該シリーズ第20話參照。

** 当該シリーズ第28話參照。



【ⅲ】


 然しいつの日か、俺はやるだらう。この古物の、カンテラ- 俺の名の元となつてゐるカンテラ(やゝこしいが)を、俺の剣で叩き斬り、足で滅茶苦茶に踏みつけにする。その日、俺は新たな生命を得る。未だ麻藥のやうな灯油(「外殻」の燃料である)の味であつても、いつかは悦美の作る料理の味に押され、俺は忘れ果てるだらう...



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈秋深しと云ふ迄には秋の氣にさせておくれよお天道さんよ 平手みき〉



【ⅳ】


 その日は意外に早くやつて來た。每夜うなされる鞍田文造の出て來る夢‐ その中で、カンテラは剣を拔いた。Turbo!! Charged by 白虎 influence!!‐ 文字通り夢中になつてその呪文を唱へた。その勇猛心に支へられ、鞍田の幻影を斬つたのだ。「しええええええいつ!!」‐もうかつての俺ぢやない。俺は鞍田の造るキメラたちを凌駕する野獸なのだ。新カンテラの誕生は、* 白虎のパワーとの合力を初めて果たした日から、遅れてやつて來た。鞍田は斬られつゝ、微笑んでゐた。「成長したな、カンテラよ」‐それは父親に依つて齎される、最期の恩惠だつたらう。



* 当該シリーズ第73話參照。



【ⅴ】


 はつとして、カンテラは目醒めた。クローゼットの引き戸に懸けてある、「外殻」=カンテラ、を診た。それは既に役立たずの物となつてゐた。試しに灯油を入れて、灯芯にカンテラの指から發する火を近付けても、灯りは點らない。恐らく、安保さんにも直せないだらう。新しいカンテラには不要となつた「外殻」は、「自ら」身を退いたのだ。



【ⅵ】


 夜明けがやつて來やうとしてゐる。明けない夜はない。ぶるつと身震ひ一つして、腰に剣を差す。さて、ポーチで稽古しやう。秋の日射しがもう曙光として差してゐた。例へ曇り日であつても、カンテラの目には曙光に見えた。

 ピーナツ・シリーズのライナスの毛布のやうだつた「外殻」の桎梏が、去つた。と同時に、鞍田の黑い影は、カンテラの心から消えてゐた。


 

 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈秋晴れや昔の事など忘れたよ 涙次〉



 やつと大人になれたカンテラ。月滿ちれば二児の父だ。これにて今回の結末とする。ぢやまた。



 PS:次回より、新機軸、「ゲーマー篇」をお届け致します。どんなものになるかは、蓋を開けてみてのお樂しみ。宜しく!!



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