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尋問 C

被疑者の残り一人であるCの部屋の前までふと思いだす。

「Cは被疑者達の中で一番落ち着いていて年も上だ。だから電気調理器の使用を許可している。ただ怪しければすぐに撤去するから言ってくれるかい」

なんでもCはここに来る前は料理をするのが好きだったらしく材料はこちらの支給の上で自分の食事を作っているらしい。

他の被疑者達との違いには唸るものもあるが調理という行為が彼女にとっては落ち着くものであれば間違っていないとも考えられる。

精神科医って大変なんだな…と率直な意見が出てしまう。

「…いけない、集中!」

小声で自身に喝を入れる。

そしてコンコンとノックすると中からどうぞ、と声が聞こえる。まだ少女と言える声をしていた。

「失礼します」

中はやはり今までと同じ白。違う点と言えば左手にあるテーブルに載せられた中身の入ったティーカップにニコッと微笑むCの姿だった。

「はじめまして、今日はよろしくお願いします。よかったらこちらをどうぞ」

手招きされるがままに椅子に座らされる。

困惑して何を言うべきかと汗をかくわたしと微笑むCに仄かに香るハーブティーの香り。窓の先へを阻む鉄格子さえなければとても精神病院とは思えないだろう。

ちらっとCを見るも本人はどこか余裕のある表情を浮かべている。

「お茶をどうもありがとう。けれどわたしは医者であなたは患者という立場なのだから気遣いは不要よ」

医者という自分の言葉にすらもはやダメージを受けるわたしの言葉にCはまた微笑む。

「それは…すみません。誰かとお話しができるのが嬉しくて」

ここに彼女らが集められてからおそらく外には出れていない。日常的に話をと言ってもバートン医師や看護長は最低限の世話のみだという。

文字通り経過観察という建前の監視以外は徹底的に接触を避けているのだと言っていた。

だけどもまだこの子達は子供なのだ。

普通に学校に通って友達と遊んで過ごせる時間をこの病棟内で過ごすというのは如何なものか。

そんな考えすら浮かぶ自分に呆れる。

…事件の被疑者に同情だなんて。警察官失格だ。

「…今日は自己紹介だけにしておきましょう。あまり長丁場になると疲れるでしょう」

自分の考えを整理するためにこちらも時間が欲しい。

「先生にはお見通しなんですね。どうも久しぶりに大人とお話ししたのが思っていたよりも緊張して…ありがとうございます」

Cの顔が少し和らぐ。どうやら気を張っていたらしい。

口内に含んだハーブティーの香りが鼻から抜けていく。強張った体が解れるようだ。

お茶も程々に明日の診察を約束して部屋を出る。

「先生、お疲れ様でした。…おやすみなさい」

ドアを閉める時も微笑を崩さないC。

やはり年が一番上ということもあって落ち着いた雰囲気だった。

「けれど、あの子もまだ十五歳か」

カルテの年齢欄に記入された数字は想像以上に幼く衝撃を受けた。

AやBはもっと幼いのだ。幼い少女らが被疑者と指さされる事件だなんて一体どうなっているのか。

悶々と考えながら自室に帰りカルテを机上に並べる。

五歳、十歳、十五歳。年端もいかぬ少女達。

…そうだ、事件の内容についてわたしはあまり知らないんだった。

とりあえずシャワーを浴びてから目を通そう。そう思っていたのに綺麗に整えた体はいつの間にかベッドに沈み意識を失っていた。


観察1日目 観察対象:C

メンタルは安定しており危険性無。

緊張が見られたものの許容範囲内。

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