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第7話 ラッキースケベ逆じゃない???

「おじゃましま~す」


「はい。お邪魔されます」


「初めて聞くなそれ!?」


「冗談ですよ。座っててください」


 パジャマ姿の先輩が家に入ってきた。

 色気が漂ってるんですけど???

 意識しないようにしないと。

 どうやら俺は自分から死地に足を足を踏み入れてしまったらしい。

 少しだけ後悔しながらもさっきの先輩の部屋を思い浮かべるとすんっと冷静になってしまった。


「なににしたの~」


「あり合わせですけどハンバーグです。あとはサラダとみそ汁ですね」


「はるくんって料理できたんだ……」


「当たり前です。先輩は……なんでもないです」


「なんだいその間は!? 絶対に失礼なことを考えたでしょ???」


 失礼かどうかと聞かれれば失礼に該当するかもしれないけど事実なので仕方があるまい。


「いや、まあ。あはは」


「笑ってもごまかせないからね!? なんかはるくんの扱いが日に日に酷くなってる気がするよ」


「そんなことないですよ。じゃあ食べましょうか」


 先輩がわちゃわちゃ言っている間に俺はササっと配膳を済ませて椅子に座る。

 こうやって誰かと一緒にご飯を食べるのは久しぶりな気がする。

 こっちに来てからはずっと独りで食べてたからなんだか新鮮だ。


「すっごくおいしそうなんだけど!? 本当に頂いていいの?」


「もちろん。というかせっかく作ったんで食べてください」


「じゃあ、遠慮なく! いただきます」


「いただきます」


 手を合わしてハンバーグに箸をのばす。

 我ながら今日のハンバーグの出来は良い感じだった。


「おいしいっ! はるくん料理作るのすごくうまいね! うちの旦那にならない?」


「俺にはなぎちゃんがいるから無理。てか、あのごみ屋敷を見られた後に求婚できるとかすごいっすね」


「酷いっ!? でも反論できない……」


 冷夏先輩は素晴らしい女性だと思うけど家事能力があそこまで酷いのはちょっとなと思ってしまう。

 家事ができないにも限度ってものがある。


「でも、先輩ならきっといい相手見つかりますよ」


「おっ、なんでいきなり褒めてくれるん?」


「先輩は性格いいと思うんで。綺麗ですし気遣いができる。家事ができないところに目を瞑ればいい女性だと思います」


「なっ、なんでいきなりそんなに褒めるのさ//照れるだろ」


「本音なので仕方ないっすね。食べ終わったら適当に流しまで持ってといてください。洗っとくんで」


「いや、それくらい私がやるよ? 作ってもらったんだし」


「いいえ。大丈夫です。まだ食器を買い替えに行きたくはないので」


 あの壊滅的な部屋を見た後に食器洗いを任せられるかと聞かれれば絶対にNOだ。

 食器が粉々になる未来しか見えない。

 後の片付けがめっちゃ面倒になるから俺がやった方が速い。


「なんかめっちゃひどくね!?」


「逆に先輩は自分が家事出来ると思ってるんすか?」


「……できない」


「そういう事です。できないことを無理してやる必要はありません。でも、努力はしてください。練習したいとかならいつでも手伝うんで」


 努力する人はできるだけ応援してあげたい。

 教えれることがあるのなら教えてあげたい。


「ありがと。今度教えてもらおっかな」


「良いですよ。まあ、明日は先輩の部屋の片付けの続きですけど」


「……よろしくお願いします」


「乗り掛かった舟ですしいいですよ。頑張りましょう」


 あの部屋でいつまでもいられたらこっちが気が気じゃない。

 それを放置して先輩が体を壊したら胸糞が悪すぎる。

 そんな気分になりたくはない。


「ありがと。はるくん」


「良いですよ」


 そんな話をしているうちに夕飯を食べ終えた俺は食器を流しに運んで水を張った。

 こうしておかないとカピカピになるからな。


「食べるん早いね」


「そうでもないですよ。ゆっくり食べてください。俺は風呂入っとくんで。食べ終わったら一回自分の部屋に戻って歯磨きとか寝る準備してこっちに来てください」


「りょ~何から何までありがと」


「いえ。じゃあ俺は風呂入ってくるんで」


 バスタオルを持って浴室に向かう。

 今日は結構歩いたし片付けもしたから結構疲れてる。

 こんな時は湯船にゆっくり浸かって疲れを癒さないとな。

 バスボムとか入れよ。

 あれ結構気持ちいいんよな~


 ◇


「んぁぁ〜」


 湯船にバスボムを投下して体などを一通り洗った後にお湯につかる。

 めっちゃ気持ちいい。

 今日一日の疲れが吹き飛ぶ。


「にしても、なぎちゃんはどこに行ったんだろう」


 俺が外国に行ってから10年ほど。

 彼女は引っ越してしまったのだろうか?

 手がかりは無し。

 唯一といっていい手がかりは俺の記憶の中にあるあの子の容姿と名前だけ。

 それ以外の手がかりは一ミリもない。


「ネガティブに考えてもいいことはない、か。もう少ししたら入学式だし同じ学校になぎちゃんが通ってることを祈るしかないか」


 そこで見つからなかったらまた違う方法を考えるしかなくなる。

 もし、なぎちゃんも海外に行っていたら本当に積むわけだけど。


「いやいやいや、そんなことを考えてても仕方がないな。前を見て歩かないと」


 それをこの前冷夏先輩に教えてもらったばっかりだ。

 下ばかり向いてても何にもならない。

 素晴らしい人生の浪費としか言いようがない。

 少しでも一歩でも、這ってでも目標に向かって前進しなくてはいけない。

 前進するほかに目的を達成しうる手段なんてないんだから。


「考え事はこれくらいにして出るか。そろそろのぼせそうだ」


 風呂に入ってからそれなりの時間が経っている気がする。

 考え事をしてるとつい長風呂になってしまうんだよな。


「あ……」


「……なんで冷夏先輩がいるんすか?」


「きゃあ~~~~~~」


「それこっちのセリフね。普通こういうイベントって逆じゃない? なんで俺が覗かれてんのさ」


 絶対におかしい。

 こういうラッキースケベイベントは俺が覗く側じゃないの?

 なんで覗かれてんの?

 しかもなんで覗いた側が悲鳴上げてんの?

 待って無理。

 理解できない。


「とりあえず、いったん出て行きませんか? 服着たいし」


「そ、そうだね! ご、ごめんね~」


 おかしい。

 絶対におかしい。


「まあ、いっか。見られて減るもんでもないし」


 気を取り直して俺は服を着て髪を乾かしてリビングに戻った。



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