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第6話 ごみ屋敷

「それで俺をこんなところに引きずり込んでどうしようっていうんですか?」


 初めて入った女の人の部屋はとんでもないくらいのごみ屋敷だった。

 俺の初めてを返してくれ。


「なんでそんな目でうちの事見てるのかな? 何か言いたいことがあるのなら言ってごらんよ」


「ははは~人間って本当にショックを受けたら言葉が出ないんだなって思ってますよ」


 今日冷夏先輩と過ごしてみていろんなところに気配りができる人だなと思った。

 他にも細かいところにも気が付く人だと思った。

 でも、どうやら個人の家事能力は欠落しているらしい。

 なんで?


「ほんっとうに失礼だね君は」


「だって本当に酷いんですもん。それで? 口止めって具体的には何をするんです? 俺を始末でもするんですか?」


 足の踏み場もないごみ屋敷を見渡しながらため息をつく。

 どうやったらこんな有様になるのか。

 俺には到底理解できなかった。


「そうだね~じゃあこの部屋一緒に片付けてよ!」


「……それ、本気で言ってますか?」


「あたりまえじゃん! じゃ早速やろうか!」


 どうやら俺は逃げることができないらしい。

 南無。


「わかりましたよ。逃げないんで荷物だけ置きに行ってもいいですか?」


「しょうがないね! いいよ~」


「あんたは何様だよ……はぁ」


 いい人ではあるんだけどつかめない人でもあった。

 今日のお礼と考えて甘んじて先輩の部屋の掃除を請け負うことにしよう。


 ◇


「てか、よくこんな部屋で生活できてましたね?」


「ま、だから最近ははるくんの部屋に入り浸ってたわけ」


「なるほど。そんな背景があったんですね」


 だから頑なに帰ろうとしてなかったのか。

 確かにここまで酷いと帰る気にはなれんわな。

 どんまい。


「そそ。ほら口じゃなくて手を動かすよ~」


「はいはい。わかりましたよ」


 とりあえず床に散らばっているゴミを収集する。

 かなり多くて大変なんだけどめちゃくちゃやばいと思ったのはいつ食べたのかわからないカップラーメンの残骸が置いてあったことだ。

 流石にヤバイ。

 女子高生らしくないとかじゃなくて人間としてちょっとやばめ。


「冷夏先輩最近ご飯どうしてるんです? この感じじゃあ、しばらく食べて無い見たいっすけど?」


「う~ん。ここ三日はあんまり食べてないかな。めんどくさかったし」


「あんた何してんすか」


 三日もろくに食べなかったら何かしらの病気になってしまう。

 そんな生活を続けていたら絶対に体を壊す。


「だって片付けるのもめんどくさいし作るのもめんどくさいんだもん」


「だもんじゃないですよ。わかりました。今日は俺の部屋で食べてってください」


「……いいの?」


「ここで何もしないで先輩に何かあったら胸糞悪いでしょ。これでも俺は先輩に結構助けられてるんすよ」


「うち助けた覚えとかないけど?」


「そんなもんですよ。助けた側は意識なんてしてないですって。助けられた側が勝手に感謝してるだけで」


 大体そんなもんだと思う。

 勿論すべての善行が該当するなんて思っちゃいないけど大多数がそんなもんだと思ってる。

 俺がくじけそうなときに冷夏先輩は俺を助けてくれた。

 励ましてくれた。

 それに俺は救われた。

 少なくとも前を向いて歩こうと思えた。

 その恩くらいは返すべきだろう。


「ふ~ん。じゃあお言葉に甘えよ~かな~」


「そうしてください。てか、先輩はどこで寝てんすか? こんなゴミ溜めで」


「ゴミ溜めいうなし! そこらへんで寝てるよ」


 そこらへんってどこらへんだよ。

 先輩が指さした先にスペースとかないんだけど???

 マジでどこで寝てんのこの人。


「……わかりました。今日は俺の部屋で寝てください」


「えっち」


「ふざけんな!」


 こちとら善意100%じゃ!

 こんなところで寝てたら体壊すし。


「そんなに怒んなくてもいいじゃ~ん」


「別に怒ってないです。先輩が不安に思うなら俺はそこら辺のネカフェで泊まるんで俺の部屋使ってください」


「いや、そういう心配は全然してないんだけど」


 ……それはそれでなんだか複雑だな?

 俺はめんどくさい男であった。


「はるくんはいいの? 寝る場所なくなるくない?」


「別に俺はソファーでも寝れるんで。少なくとも冷夏先輩が寝てる環境よりは幾分かマシでしょう」


「めちゃ酷いこと言ってくるね!?」


「こんなもん見せられたら言いたくもなりますよ。そろそろ遅いですし冷夏先輩はお風呂入って着替えてから俺の部屋に来てください。夕飯作っとくんで」


「はるくん家事できんの!?」


「当たり前でしょう。一人暮らししてんすから。逆に先輩はできないんすか?」


 一人暮らしで家事ができないなんて終わってる。

 一人暮らしを舐めてるにもほどがある。


「べ、別にいいっしょ! 今からお風呂入るから出てって」


「はいはい。鍵はあけとくんで適当に入ってきてください」


「ん」


 全く世話が焼ける先輩だ。

 でも、ここで借りを返しとかないとな~


「他人に借りを作ったままって言うのは癪だしな」


 借りっぱなしは気持ち悪い。

 返せる借りは早いうちに返せるうちに返さないといけない。

 返せなくなってからでは遅いから。


「んじゃ夕飯作りますか~」


 食材は前に買ったのが冷蔵庫にあったからそれを使うことにしよう。

 そうしよう。

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