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第5話 妖怪ドア引き摺り込み

「今更ですけど冷夏先輩は彼氏とかいないんですか」


「いたらはるくんと二人でこんなとこ来てないっしょ?」


「それは確かに」


 恋人がいる女性がこんなことを他の男としていたら浮気認定されるに違いない。

 というか、いなくてよかった。

 間男認定とか嫌すぎる。


「でしょ? それにうち今まで彼氏できたことないし」


「……え? はっ、え?」


「だから彼氏できたことないんだってば」


「またまた~その冗談は面白くないですよ?」


「冗談じゃないっての! てか、うちそんなに彼氏いそうに見えるわけ?」


 見える。

 見えないわけがない。

 金髪のギャルってだけで彼氏がいそうまである。

 流石に偏見が過ぎるか。

 でも、性格は良いし顔は綺麗だし胸は大きいし。

 彼氏ができない要素が無いように思える。


「まあ。冷夏先輩は彼氏が欲しくなかったとかそんなところですか?」


「う~ん、どうなんだろ? 確かにはるくんの言う通りかも。何回も告白はされてんだけどなんかね~目がやらしいから全部断ってるって感じかな!」


「ですよね~」


 告白されてる人ではあった。

 つまり、モテないから彼氏がいないのではなく冷夏先輩のお眼鏡にかなう相手が今までいなかったのだろう。

 でも、今まで話してみた感じそこまで理想は高くないように思えるんだけどな。


「そんなことは良いから次行くよ!」


「次ってどこ行くんですか?」


「決まってるじゃん! 日用品とか生活必需品を買いに行くんだよ!」


「なんで???」


 冷夏先輩はあのアパートに住んでそれなりに経ってるはずだから枯渇してるとも思えない。

 いや、どうなんだ?

 とんでもなく生活力が無かったらありえるかもしれない。


「はるくんまた失礼なこと考えてるっしょ」


「……ナンノコトデスカ?」


「片言だし。言っとくけど私のじゃなくてはるくんのだよ? 君のこっちに来てからずっと幼馴染ちゃんを探してばっかりでろくにそういうもの買ってないでしょ?」


「……なんで知ってんすか?」


 確かに最近というか、こっちに来てからはなぎちゃんを探してばっかりで全くと言って良いほど買い物をしていない。

 歯ブラシとかそういうのは最低限あるけどトイレットペーパーとか洗剤、歯磨き粉とかはそろそろ心許なくなって来ている。


「昨日家にお邪魔した時になんもないな〜って思ってね。こうやって強引に連れてこないときてくんないっしょ?」


 確かにここまで強引にされなかったら来ていなかったかもしれない。

 というか、確実に来ていないだろう。


「そういうとこ意外と見てるんすね」


「これでもお姉さんなので! てなわけで買いに行くぞ〜」


 冷夏先輩に連れられるままに俺は日用品と生活必需品を買った。

 一気に買ったからそれなりの金額になったけど仕方あるまい。

 ある程度は仕送りがあるからなんとかなるし。


 ◇


「いや〜いっぱい買い物したね!」


「ですね。気を遣ってもらってありがとうございます」


「気にしなくていーよ。あの私が服買いたかったのもあるしはるくんに感想を聞きたかったっていうのもあるから! 日用品は口実的な感じだから」


「その情報最後まで言わないで欲しかったです」


 最後の一言が無ければ俺は純粋に冷夏先輩をいい人だと言えたのに……

 何が本音で何が建前なのかこの人の考えてることはあんまりわからないな。


「じゃ、私は今日は部屋で大人しくしてるね〜服持ってくれてありがと!」


「いえ、俺の方こそありがとうございました」


 冷夏先輩が自分の部屋に戻ってから帰ろうとして先輩を見送った。

 扉が閉まった瞬間に先輩の部屋からとんでもない音が聞こえた。


「先輩!? どうしたんです……か?」


「あ……」


「失礼しました。俺は何も見てません」


 すぐに扉を閉めた。

 俺は何も見ていない。

 そう、ゴミ屋敷など全く持って見ていないのだ。


「ちょっと待てぇ! 乙女の秘密を知っておいてタダで帰れると思うなよ!?」


「いやいや、だから何も見てませんって! だから、離してください! 扉の隙間から手を出して俺を中に引き摺り込もうとするのはやめてください!」


 完全に絵面がホラー映画だ。

 このまま部屋に連れ込まれたら……

 考えるだけでおぞましい。


「それは無理な相談だね! 乙女の秘密を除いてしまったものをタダで返すことは出来ないってさっき言ったでしょ?」


「不可抗力ですってば! 大丈夫誰にも言わないんで! てか言う相手いないんで!」


 こっちでの知り合いなんでなぎちゃんかその家族くらいだ。

 その人たちが見つからない以上俺が話をする相手がいない。


「そんなのはどうでもいいんだよ! 口止めをしておかないと行けないからねぇ〜」


 さらに力が強くなった!?

 どんな馬鹿力してんだこの人!?


「あっ……」


 少し力が抜けた隙に俺は扉の隙間に引き摺り込まれるのだった。


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