第1話 おいこら神の野郎表に出ろ!
「やだ! はるくんとお別れするなんて絶対にやだよぁ」
「僕もなぎちゃんと別れたくないけど、どうしようもないんだって」
「そんなのいやだよぉ」
「じゃあさ、僕が外国からこっちに帰ってきたらけっこんしよう!」
「けっこん?」
「そう。ふたりでしょうらいずっと一緒にいるってこと!」
「する! ぜったいする!」
「やくそくね!」
「うん!」
◇
「久しぶりにこっちに戻ってくるな」
俺は10年ぶりくらいぶりに日本の土を踏みしめていた。
6歳のころに海外に行ってから約10年ぶりくらいに帰ってきた。
帰ってきたといっても元々住んでいた家は引き払ってるし両親は未だに海外に住んでるけどわがままを言って俺だけは日本の高校に通わせてもらうことになった。
「なぎちゃんと会うために戻ってきたんだ。連絡手段もないし住所はあんまり覚えてないんだけど何とかなるか!」
自分でもあまりの見切り発車に呆れてしまうがそれだけの目的があって俺はここに来ることを決意したのだ。
もう一度会って結婚する!
まだ年齢的に結婚はできないかもしれないけど高校生のうちは健全に付き合って卒業したらすぐに結婚しよう!
「まあ、とりあえずはこっちでの家に行きますか」
両親にはそれなりに心配されたけど何とか押し切って前に住んでいたところの近くにアパートを借りてもらった。
まずは荷物を置いて周辺を探索しますか!
◇
「うん、まあそんなに簡単に見つかるとは思ってなかったけどさぁ~」
荷物を置いてから数時間周囲を散策したり思い出のある場所を回ってみたりしたけど案の定というべきか彼女は見つからなかった。
「てかっ俺見切り発車が過ぎたかな。どう考えても途方が無いよな」
そもそも引っ越しとかしてたら完全に積みだ。
詰みどころの話ではない。
完全にこっちに引っ越してきたのが無駄足になってしまうまである。
「神様……頼むから引っ越しだけは勘弁! マジで完全な無駄足になるから! マジで本当にマジで!!」
今日ほど神に祈った日は無いのかもしれない。
今日から心を改めて神様に毎日祈りをささげる事にしよう。
うん。
「今日が四月の一日だから入学式まではあと六日か。それまでに見つかる……わけないよな~」
奇跡的に同じ高校とかないかな。
「ないよな」
トホホ。
「えっと、なんで人の家の前で百面相してるん?」
「あっ、ごめんなさい! 少し考え事をしてました」
「人の部屋の前でやめてよね。って君、見ない顔だね? もしかして最近引っ越してきた人なのかな?」
話しかけてきたのは金髪の明らかにギャルといった様子の女性だった。
「えっとはい。今日引っ越してきた桜庭 春馬です」
「あっ! 丁寧にども~うちはここん部屋に住んでる秋山 冷夏っていいます。お隣さんみたいだしこれからヨロっす」
「はい。よろしくお願いします」
「はるくん今いくつ?」
「はるくん!?」
いきなり昔呼ばれていたあだ名で呼ばれてドキリとしてしまう。
まあ、この人は絶対になぎちゃんじゃないし容姿も似て無いからドキリとする必要もないんだけど突然だったからびっくりしてしまった。
「ダメだった? 春馬だからはるくんって呼ぼうと思ったんだけど?」
「いや、ダメじゃないです。いきなりだから驚いただけで。それと今年で16になります」
「うちの一個下か~高校は?」
「近くの東秀学園に入学します」
「うちと同じじゃん! こりゃこれから長い付き合いになりそうだわ~」
マジかよ。
お隣さんが一個上のギャルでしかも同じ学園とかどんな奇跡だ!?
おいこら神の野郎変な奇跡起こさなくていいからなぎちゃんと合わせろや!
先ほど芽生えた信仰心は吹っ飛んだ。
なんなら神に喧嘩を売った。
「そうなんですね。これからよろしくお願いします。秋山先輩?」
「いんやうちのことは名前で呼んで! そのほうが親しい感じするし!」
親しい感じてあってから数分くらいやん。
まあ、呼べっていうなら呼ぶけどさ。
「じゃあお願いします冷夏先輩」
「いいね! これからよろしく~」
隣人はとても賑やかな人物だった。
悪い人じゃなさそうで一安心。
でも、今日一日は何の成果もなかったな。
明日から頑張って行こう!