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親族の音信不通は気にすべき案件でした

「さあ。申せ!!事と次第によっては私の温情も引き出せるやもしれんぞ」


 ダミアンは叫び、私を抱く左腕に力を籠め自分の背中側へと私を動かした。


 私の盾になって下さるなんて!!


 普通はそんな感じで感動すべきであろうが、私を守る彼が対峙している悪人は、固太りしている中年女性でしかない。大仰すぎる、と、逆にスンとしてしまった。

 けれど、彼の叔母の屋敷のハウスメイドが私を殺そうと凶器を放ったのならば、その凶器が壁に突き刺さっている巨大な四角い刃であるならば、私はダミアンに全賭けせねばだろう。


 頑張ってと、彼を信じて応援するべきだ。


 例え、武力一切ない私に、毒ニンジンを嗅がせ、魔法足枷を嵌め、有無を言わさず自分の領地へと連れ帰ろうとしているダミアンであろうが、……あれ?


 もしかして、私は悪人ハウスメイドの味方をする方が良くない?


 彼女にダミアンを倒して貰って未亡人になれたら、あら、今なら四時間で実家に帰れる、じゃない?


「きゃあ!!」


 左足が浮きかけた。

 転びかけた私はダミアンの背中にしがみ付く。


「――今は私への悪意は控えてくれ」


「な、何のことかしらって、よそ見禁止!!」


「ああ、そうだった」


 ダミアンは目の前に剣を翳す。

 私達の周囲でゴウッと風が舞い、ぱあっと光が瞬いた。

 その瞬間、ギインと金属が割れた耳障りな音が響いた。

 たった今私達目掛けて飛んできた刃が、ダミアンが展開した防御壁(?)にて壊れ、砂となって消えたからである。


 私は廊下の壁を見る。

 ついさっき私達を殺しかけた刃がまだ刺さっている。


「ダミアン。魔法って本物の刃を飛ばせるの? それで、あなたは本物の刃を一瞬で粉々に砕けちゃったりできるの?」


「――今は静かにしていてくれ。防御壁展開が緩む」


 ダミアンは鞘付きのままの剣の真ん中部分を握り、それを盾のようにして目前に横にして翳している。


「剣は切るためのものだと思うけれど、防御壁展開とやらは、剣のこんな使い方じゃないと発動しないのかしら? あ、盾の存在価値が消えている?」


「たのむ。私の緊張を壊すのはやめてくれ」


「あら、ごめんあそばせ。だって、魔法の戦いを見るのは初めてなんだもの」


「君がバートラムを殺すのを諦めてくれたら、彼を紹介するよ。学友でもあった私達は、時々攻撃魔法を試し合って遊んでいるんだ。それを見学させてあげよう」


「では。あなたがバートラムをボコボコにしてくださいませね」


「ハハハ。願い通りに、奥様」


 ガキイイイン。


 ダミアンの正面で再び金属が割れる耳障りな音が響く。


「女よ。無駄な抵抗はよせ。もとは無害な女であったはずだろう」


「うるさい、うるさい。お前ら貴族様にわかるか。魔力を持たずに生まれた人間の惨めさを。魔力が無ければ、何の仕事も出来ないんだ。ようやく手に入れたこの生活を奪われてたまるか!!」


「あら、わが領では魔力が無い方でも雇っていますわよ。そもそも平民の方は魔力が無くても職には困らないと思いますけれど?」


 私がダミアンの背中からしっかり顔を出し、ハウスメイドの言葉を訂正する。

 って、私目掛けて黒い何かが飛んできた。


 ガキン!!


 ダミアンの左腕が私から消え、その左腕が黒い何かをその手に受けたのだ。

 実際は、彼の手の平に当たる寸前に黒い何かが粉々に砕けた、のだけど。


「ありがとう」


「構わない。ただ、敵を煽るのは止めてくれ」


「む。だって、職が無いのは魔力が無いせいにするのは違うかなって」


「彼女が望むのは、たぶん、貴族の女性だけができる、コンパニオンのような仕事じゃないのか。話し相手をするだけで給金が貰えるのは羨ましい仕事だろう」


「お詳しいのね」


「高齢女性が雇うコンパニオンの何人かを、婚活相手として候補にあげていた。無理難題の主人に我慢してるなら、私ぐらい我慢できると思ってな」


「お気に召した方がいらっしゃるなら、私はいつでもその方々に妻の座は譲りますわよ」


「ん、んん。それにしても、叔母はもう彼女の胃袋の中なのかな。これは私の失態か。いや、実兄である父が叔母が音信不通状態でも放っておいたのが悪いのだから、父の責任にするか」


「叔母様はもうこの世にいない、が前提ですの? それで、あのハウスメイドが叔母様を食べたって、どうして思われますの」


「この魔力量だ。こんな魔力量を秘めていたならば、子供時代の魔力測定で国に見出されていたはずだ。ではなぜこんな魔力が目覚めたのかと考えれば、叔母の魔力を彼女が取り込んだのだと認めるしかない」


「え? 取り込んだ?」


「貴族は魔力があってこそ。己の魔力を高めるために、狩った魔獣の生肉を喰らって魔獣の魔力を取り込む奴もいる。大体は腹を壊して終いだが。では、魔力の高い人間の肉はどうだろう」


「まさか。叔母様が食べられたって、比喩でもなく、そのままの意味でしたの」


 魔力が無い人間が魔力を得るために、魔力の高い魔獣を食すだけでなく、魔力の高い人間そのものを食べてしまうだなんて。

 私はダミアンの背中から顔を出し、人をバラバラにできる刃を木の葉のように飛ばしてくるハウスメイドを見つめた。魔力が無いと嘆きながら?


「魔力を得るためにはああ必要だったんだああ。死刑になってたまるかあああ。お前らも私のために死んで肉となれえええ」


「も、ということは、人喰い確定か」


「本当に人を食べると、無能力者でもこんなすごい力が付くの?」


「そうだ。私を食べようと考えないでくれ、と言いたいが、君に喰われるのが本望だから難しい所だな」


 私はダミアンの背中を軽く小突く。

 人を食べようなんて思わないわ。

 だって、ハウスメイドの今の姿は、人喰いのなれの果てそのものなのだから。


 ダミアンが張っている防御壁魔法によって空間が歪んで見難くなってはいるが、ハウスメイドが人非ざるものに変化していくのは分かるのだ。


 彼女の頭は髪の毛はずり落ち、どんどん膨れて風船みたいに膨らんでいく。

 服に覆われていない顔や手に獣みたいな剛毛が生え、今や彼女はドレスを着た猿に似た魔獣にしか見えない。いえ、我が領でも時々現われるあの猿に似た狂暴な魔獣こそ、人喰いの人間のなれの果てだったのでは?


「ダミアン。彼女を殺しては駄目よ」


「君は慈悲深いな」


「思い付いたの。彼女の姿を人を食べた人の末路として見世物にすれば、人を殺して魔力を奪おうなんて誰も思わなくなるはずよ。この姿はちょっと悲しすぎるでしょ」


 ガヒュン。


 飛んできた金属の刃が、珍しくダミアンの防御壁で砕けなかった。

 それはそのまま跳ね返り、ずどんと天井に刺さった。

 するとダミアンは再び私に左腕を回し、三歩ほど後ろの距離へと飛び退く。

 天井に刺さった刃は私達がいた場所にボトリと落ち、私はダミアンに賞賛の言葉をかけようとしたが口を閉じた。


「君は意外と酷い人間だったな。思わず集中が切れた」


「まるっと変わった評価をありがとう」


「いや。お陰で方向性が決まった」


 ガガガガン!!


 ダミアンの周囲で小さな爆発がいくつも起きた。

 そして、彼は剣を鞘から抜いていた。

 何て綺麗な刀身なの、と私はその真っ直ぐな剣に見惚れた。


 その後は、一瞬だった。

 彼はハウスメイドの真ん前に動き、それから剣を振るった、のだ。


 ダミアンが剣を鞘に戻すと同時に、真赤な血潮が天井に向かって吹き出した。


 私の方へと振り返った彼は、私に向けて寂しそうに微笑む。

 胸がきゅっと締め付けられた。

 いいえ、胸に矢を射られた、という感じ?


「ええと。ダミアン」

「すまない。君の望みを叶えられなかった。いくらなんでも見世物は可哀想だ」


「それで瞬殺なさったのね」

 私には全く慈悲の心なんかかけてくれなかった癖に!!


「許してくれ。他のことは何でも言う事を聞くから!!あ、まって、結婚無効以外での、何でもだ!!」


 なんかダミアンが私にビクついている?

 私が残虐で怖い人認識確定か?

ダミアンは国では英雄なので強いのです回なのですが、格好良くできませんでした。

ちなみに、イゼルの私にだけダミアンがしてくれた(+思っているらしき)事リストは現在こんなになってます。

①恐ろしいトカゲ顔の仮面を被って出現しました。←私にだけだそうです

②毒ニンジンで意識を失わせる←弱らせるとティムしやすくなるから、だと(怒)

③有無を言わせず誘拐し結婚は勝手に成立させた→婚約者だと逃げられるから

④保護者である父に結婚承諾書に署名させるために、私の安否を匂わせた

⑤煩くなったから魔法で眠らせた

⑥逃げられないように魔法足枷嵌めました。互いの足に嵌めてあるので結婚指輪代わりになります

⑦誘拐は物凄く計画的です

⑧私が物凄い美人と思っているらしいですよ

NEW⑨残虐で怖い人と思われたのかビクつかれた←ここです


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