言の葉(短編小説)「贈り物」
贈り物/柚木紗奈
それは、ある日我が家の家の前に落ちていた。
周りを見たけど、それは、他にはなくて、ありえない場所に、ポツンとあった。
どこから来たのか分からないけれど、気にしないことにした。
翌日、家の前のそれは、1つ増えていた
「うそでしょ!」
やはり、周りを見ても分からなくて、家族に聞いても誰も知らなかった。
そのまた翌日も、その翌日も増えて、気づけば5つもあった。
私はいつもより、早く起きて犯人を突き止めようとした
そっと身を潜めていると、それを咥えた犬がいた
その犬は、数日前に近所の飼い主に棒で叩かれていたのを助けた犬だった。
首輪がなくなっていて、犬の様子は、疲れ切っていた。飼い主に捨てられたようだ。
私は犬に、そっと近づいた。
その犬は、一瞬目を見開いたが、小さくしっぽを振って、どこかに行こうとした。
「まって!」
無意識に引き止めた私は、そっと犬を抱きしめた。犬は小刻みに震えながら、シッポは小さく振っていた。まるで、ありがとうというかのように。
翌日、ドングリの実を玄関に並べ、私は家族となった犬のご飯を、お皿に入れる。
「おいで!ラッキー」
以前の飼い主さんから、犬の名前を聞いた。
私が名前を呼ぶとリビングからラッキーが走ってくる。
ドングリが運んでくれた家族との出会いだと私はラッキーの頭を撫でた。
家族は、どこからでもやり直せる。幸せになれる。人も動物も。
了