第2話 好きなことは隠さなくてもいいよ。
「東影くんって特撮が好きなの?」
陽キャギャルの円野さんの口から『特撮』という言葉が出たことに東影はビックリした。
「ち、違うよ!これは…。従兄弟の子供に誕生日プレゼントであげようかなと思って…。」
東影は特ヲタのよくある定番の嘘をついた。
「そうなんだね!てっきり私みたいに特撮が好きなのかと思ったよ。
円野の口から意外な言葉が発せられた。
『特撮が好き。』
「えっ?今、特撮が好きって言いませんでした?」
「うん。言ったよ。」
「そうなんですね…って!えっーーー!!??」
東影はjyo-soonの店内に響くほどの大きな声で驚いた。あまりの大きさに回りの大人子供が振り向くほどだ。
「だってそれ夏に始まるマスクドライバーホムンが変身するときに使うホムンドライバーでしょ?ホムンの意味は錬金術師が作る人造人間の『ホムンクルス』からきてるんだよね。てっことは次の主人公の設定は人造人間なのかな?」
す、すごい…。急に早口で設定を語りだして、自分の考察まで入れた。円野さんは確実にオタクだ。
「でも残念だな~。特ヲタ仲間ができたと思ったのに。ちょっとショックかも…。」
円野は残念そうな顔をした。
「ごめんなさい!」
「急に謝ってどうしたの!?」
東影は円野に謝った。
「俺、円野さんに嘘つきました。本当は特撮が大好きです。自分の特撮愛に嘘をついてめちゃくちゃ恥ずかしいです!」
「やっぱりね!昔の私と同じような嘘をついてたからもしかしてって思ったらやっぱりそうだったんだ!」
「本当にごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。それに好きなことは隠さずに好きだって言った方がカッコいいよ。」
円野は笑顔で東影にそう話した。
か、可愛い…。
東影はその笑顔に心を撃ち抜かれた。今まで交わることのなかった二人が初めて交わった瞬間であった。
「そういえば、円野さんもホムンドライバーを買いに来たの?でもこれがラスト一個だから譲るよ。僕は他の店を回ってみるから。」
「私は買わないからいいよ。私のお目当てはそっちじゃないの。」
「そっちじゃないとは?」
「私は戦隊シリーズやマスクドライバーシリーズは少ししか知らなくて。私の本命は…。」
本命は…。
「ビックマンスティールに変身する為に使うスティールブレスと今週登場する怪獣の『スカルキング二世』のソフビを買いに来たの。」
まさかのビックマンシリーズ推し!?
説明しよう!ビックマンシリーズとは宇宙の果てにあるN89星からやってくる惑星守護部隊の青と銀色の巨大宇宙人が主人公の一番歴史の古い特撮シリーズなのである。
「まさかのビックマン推し…。一番の推しは何ビックマンなの?」
最近で言えばビックマンWAが人気だからな~元気で明るいビックマンを目指したって監督も言ってたって聞いたしそれかな?
「私が好きなのはビックマンL!何と言っても汗と涙の特訓シーンには私も涙なしには見られない傑作だよ!」
まさかの昭和シリーズ!?しかも昭和後期に作られた最後のシリーズだと!?円野さんをヲタ歴の浅い人間だと勘違いした俺のバカ野郎!!
己の浅はかな考えを東影は悔やんだ。
「ほら!東影くんも一緒に見に行こうよ!」
円野は東影の手を引っ張りビックマンスティールの玩具売り場へと移動した。
俺…。円野さんと手を繋いじゃった!?
オモチャよりそっちのことで頭がいっぱいになった東影であった。