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鍵士~宝箱を狩るもの~  作者: ほむひ
2/7

~02 来訪者が告げるものとは?~

一話目は説明メインとなってしまいました。

本話から本編が徐々に始まっていきます。

まぁ、短編程度で終わる予定ですが。

 門の外には一人の男が立っていた。

 黒髪黒目のその男は、落ち窪んだ目に無精ひげ、顔色も悪く、とても堅気の人間には見えない。そして身に纏ったぼろぼろの外套が男の異常な雰囲気をより際立たせていた。

 門番が警戒のため、鐘を鳴らしたのもうなずけるというものである。

 男は男でそんな鐘の音を気にした風もなく、胡乱な目で村を囲む外壁を見上げながら、独り言ちた。

「高い土壁に、見張り櫓、こりゃぁこの村も外れかねぇ。辺鄙とはいえ、こんなそこそこ立派なところに人攫いが隠れているわけもねぇか。ってか、流石にもう限界だ。3日も飯食ってねぇし、ずっと歩き詰めでもうまともに歩ける気がしねぇ。目も霞んできやがった。」

「おい、そこの人、あんたここらの人じゃないな?この村に何の…」

 …すまねぇな、スゥ、ナタ、もう父さんダメみたいだわ。


 …


 …


「…い、おい、あんた、しっかりしな!一体どうしたってんだ、薬師の先生はまだか」

「ぅ、、ん、あれ?俺どうして?」

「あんた、気が付いたかい?やぁ、良かった良かった。俺が話しかけたら急にぶっ倒れるもんだから、焦ったよ。とりあえず、うわ言の様に「…み、みず」って言ってたから、俺の飲みかけで悪かったが飲まさせてもらった。っと、先生もお見えだ。」

「どうなさいましたか?」

 現れたのは灰色の長髪に髪と同色の切れ長の目、だが怜悧さはなく、浮かべた柔和な笑みが暖かな人柄を表しているかのような美丈夫であった。裾の長い清潔そうな貫頭衣に身を包んでおり、薬師と言われればなるほどと納得してしまうような清涼感をたたえている。

「いや、先生。俺が張り番してたら、急にこの人が現れて、問答しようと思ったらぶっ倒れちまってよ。今、水を飲ませたら、目を覚ましたんだが…」

 薬師は門番に頭を支えられてかろうじて上半身を起こしている男の顔を覗き込みながら門番と男に問うた。

「そうですか。もし、あなた、ご自分のお名前わかりますか?」

「あ、ああ、俺はミクラという。人を探して、旅をしていたんだが、ここに来るまでに水も食料も使い果たしてしまった。正直、ここにたどり着いたのも奇跡みたいなもんだ。」

「それは大変なことでしたね。何分山間の村で、おもてなしもできませんが、一夜の宿くらいは提供できると思いますよ。田舎の不調法者達の好奇の目に晒されることをお厭いにならなければですが。」

「あー余所者は今のご時世、どこに行ったってそういう目に晒されるもんさ。」

「そうですか、でしたら、一晩我が家の離れにでもご逗留頂きましょうか。」

 そういうと、薬師は男の脇の下に手を差し入れ、肩に担ぐようにして立たせながら、門の中へ歩いていこうとする。

「先生!村長に断りもなくそんなこと勝手に決めちゃあ」

「大丈夫ですよ、困っている人を助けるのに何の憂いがありましょう?私の客人として招くのですから、余所者ではありませんよ。」

「そんなこと言って、、、もう、あっしは知りませんよ。一応、村長には報告を上げておきますからね。まぁ、村長も最近家に籠りがちですから、あんまりとやかく言われることはねぇでしょうが。」

「はい、宜しくお願い致します。」

「なんかすまねぇな、先生。面倒事に巻き込んじまったみたいで。」

「いえいえ、面倒だなんてことはありませんよ。それよりここは村の外でもありますし、あまり安全とは言えません。申し訳ないですが、これから少々歩いていただきますよ。小さな村と言っても、我が家まではそこそこの距離がありますから、もう少々気を張っておいてください。そして、お礼のほうはお身体が回復しましたら、一献お付き合いいただければそれで構いませんよ、流れの鍵士様?」

「…あんた、何者だ?」

 男は薬師のその一言で、警戒レベルを一気に引き上げた。だが、殺気ともとれるような鋭い視線を向けられた当の薬師は笑みを浮かべたまま、小声で

「しがない田舎の薬師ですよ。ただ、あなたに手を貸した際に見えてしまいましてね、手のひらの鍵の紋章が。」

「…あの一瞬でそうそう見分けられるやつがいるとは思えないんだが…まぁ、いいか、腹が減ってそれどころじゃないんでね。この続きは酒の肴でということにしといてやる。」

「お手柔らかにお願いしますね。さてとっ、」

 そういって、男を担ぎなおす薬師。華奢なように見えて、男一人を支えてもその立ち姿にぶれはない。

「では、ブンさん、私はこれで。うちの離れにご招待すると村長にもお伝えください。」

 そして、しっかりした足取りで村に入っていく薬師と男であった。

「ったく、先生には敵わんよ。さて、あっしはあっしの仕事をすっかねぇ。」

 門番の男もそう独り言ちたあと、交代小屋に声をかけて村の中央部、村長の家に向けてかけていくのであった。

見つけてくれて、読んでくれてありがとう。


始まったばかりで、先は長いかもですが、どうぞ良しなに。

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