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お待たせしました。
そこはメモレクサスにある住宅街の一画、中流家庭が借りる程度の二階建てアパートだった。ウェウリンとノームは、その一室へとジンを運び込んで潜伏していた。
そしてジンが目覚めたのが、つい昨日のことである。
さて翌る日の朝。
一晩が経ち、ジンは未だ胃腸こそ弱っているものの起き上がれる程度になり、ウェウリンとノームの2人と共に食卓を囲んでいる。皿の上には固く焼きしめたパンが乗り、あとは出汁の効いていない塩だけで味付けしたスープだけ。さながら戦時中のような食事内容となっていた。
当然これにも理由はあって、今はノームがそれを、固いパンをスープに浸して柔らかくしながら、ジンに説明しているところだ。
「メモレクサスが滅亡、えっ、本当に?」
「生き残りは魔技師で十数人もいないな。それ以外は死んだか異形化したか、だ」
「そんな……」
「生き残りがいるだけで奇跡だが、幸いメモレクサス近辺に被害は飛び火しなかった。とはいえ街は異形跋扈する魔境ってわけだな」
ジンは食卓の上を見た。
飲みかけのスープと、それに浸してもまだ固いパン。美味しいとは言えない、いやむしろ不味いと叫び出したい品々だが、これは貴重な食糧なのだ。きっと足が早い食材は使い切ってしまったのだろう。
「生き残った人たちは今どこに?」
「街の東に寂れた工業地帯があったろ。あそこだ。もともと人が殆どいなかったから、今の状況だと比較的安全ってのは皮肉だね。ちなみに誰が代表だと思う?」
「もしかして支部長が?」
「良い勘してるなあ。その通り。支部長が無事だった魔技師連中をまとめて潜伏していたのさ。今頃は街を脱出して、連盟本部に連絡を取ってるだろうよ」
ノームの読み通り、メモレクサスを出た支部長は最寄りの町から魔技師連盟本部へと連絡を取っていた。上層部に事態を伝えて、可及的速やかにメモレクサスを街ごと結界で隔離、封印するように訴えている。
もう数日もすれば魔技師連盟の上層部が動き出し、メモレクサス周辺は立入禁止区域に指定されると思われた。
「さて、こっからは俺らの今後の方針についてだ」
ノームが身を乗り出して言う。
「俺たちは街を脱出せず、異子を倒す」
「よかった、安心しました」
ジンが仄暗い感情を覗かせる。その部分には触れずに、今度はウェウリンが口を開く。
「ジンを救出する時、異子は黒い魔力を取り込んでいた。あれだけの魔力を蓄えたなら、それを昇華させるにはそれなりの時間がかかるはず。その前に決着をつけなければ、取り返しのつかないことになるだろう」
「そういう見立てなもんで、一部の青位魔技師には街に残って貰ってる」
「なるほど、差し当たっては武器ですね」
「刀はなぁ、支部に行けばあると思うが、あそこは異形の巣窟になってたぜ?」
それでも行かねばならない。
武器を手に入れたら、他の青位魔技師と協力して異子を滅する。
「ジン、1週間だ。1週間で勘を取り戻せ」
「望むところです」
「そのあとはノームと共に支部へ行き、武器を確保して来なさい」
「師匠はどうされるのですか?」
「私は……別行動だ」
不自然に空いた間に首を傾げつつもジンは無理やり納得することにした。ウェウリンといいノームといい尋ねられる雰囲気ではなかったからだ。
「さてと、食事が済んだら外に行くぞ。異形相手にみっちり鍛えてやるからな」
「はいっ、よろしくお願いしますっ」
読んでくださった方々ありがとうございます。




