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魔技師  作者: 檜山 紅葉
第3章 追い求めた真実が望んだものとは限らない
55/94

53 司祭

お待たせしました。

かなり胸糞な展開が多くなってくると思います。

苦手な方は注意してください。

 その部屋は異様だった。

 燭台の蝋燭には紫色の火が灯され、所狭しに設置された壁掛けには黒と白が混じり合う渦のような絵が描かれている。部屋の奥には祭壇が設けられ、そこでは顔のない人型の偶像が祀られており、その前に跪き祈りを捧げているひとりの人物がいた。

 華美な装飾の施された灰色のローブを羽織る彼、あるいは彼女こそが司祭なのだとジンは直感する。


「やっと会えたね、ジン」


 老若男女が判然としない妖しい声音にジンが無言を貫いていると、司祭は緩慢な動作で立ち上がり、その場で振り向いた。

 司祭は奇妙な仮面をつけていた。それは顔のない無地の面、無貌の面だった。

 ローブのせいで体つきも覆い隠されているし、フードに仮面までつけている。おかげで性別も年齢も不詳である。


「私は君を探していた。だからこうして会えて嬉しいよ」


「僕を探していた?」


「そうだ。探していた。求めていたと言ってもいい。君には素養があったからね」


 それは会話のようで会話ではなく、ただ話したいことを話している様子であり、そのことがジンの神経を逆撫でする。そんなジンの反応を楽しむように、司祭は無貌の面の下で笑みを浮かべた。


「君は知りたくないかな。自分が何故、狙われたのか。どうして父親が死に、母親は行方不明になったのか。君の中に眠る本当の力について。そして我々の目的は、何か」


 司祭は自己陶酔したまま言葉を羅列する。

 その中には聞き逃せない言葉がいくつもあったが、ジンにとって確かめるべきことは1つだけだった。即ち……


「母さんは、母は生きていますか」


「生きている。でも直に死ぬ」


「っ!」


 目を見開き、次の瞬間には司祭へと掴み掛かろうとする。

 しかしジンは手枷を嵌められており、その手枷から伸びた鎖は、部屋にいる別の男の手に握られている。監禁されていた部屋からこの部屋まで、ジンを連れてきた男だ。

 その男が鎖を強く引くだけで、簡単に床へと引き倒されてしまう。

 今のジンは魔技が使えず、それと並行して脱力感にも苛まれている状態だ。そんな状態では出来ることなど殆どなく、せいぜいが司祭を睨みつける程度だった。

 司祭はジンを見下ろしながら、さらに残酷な事実を暴露する。


「もうすぐ君の弟が産まれるのだよ。君を産んだのと同じ母体から、今度は血の繋がった異形の子が、産まれるのだよ」


「お前は、お前は何を言っているんだ……」


 理解することを拒む脳に無理やり言葉がねじ込まれては浸透しようとする。ジンは呼吸が浅くなるのを自覚しながら、ただ呆然と目の前にいる人の形をしたナニカを眺めることしか出来なかった。


「必要な犠牲だった。混沌を実現するためにはね」


「そんなの間違ってる」


「何も間違えてなどいないさ。これまでメモレクサスで行方不明になった子供たち、そして君の母親、これらの犠牲の上に私は待望を成就させる。人間は肉体という偽りの形を捨て、本来の姿へと立ち返り、自由になるべきなのだ。ありのままの魂の姿に」


「意味が分からない。分かりたくない」


「異形発生のプロセスを人為的に再現し、それを人間の内側で直接作用させたら、一体どうなるのか、分かるかい」


「やめてくださいっ!」


「すべての人間を異形化させる。異形の造形とは魂の形そのままだよ。つまりすべての人間が自由になる。素敵だね」


「狂ってる……」


 魔力の歪みによって魂が異常をきたし、やがて異形となる。もしも魂が人体に宿ったまま魔力の歪みが起こったら、魂が異常を起こすと共に変形し、その変形に沿って肉体も作り替えられてしまう。

 そこに美醜などなく、それこそが人間のあるべき姿だとする司祭の主張は、もはや生物として破綻していると言えた。

 そこまで理解して尚、ジンは司祭の言葉を拒絶したかった。そうしなければ気が触れてしまいそうだった。よもやそのような狂人の戯言のために、両親は元より多くの命が弄ばれ、自分の人生は狂わされたのだと思いたくもなかったのだ。


「だが、私の計画には1つ足りないものがあってね。しかしそれも今日手に入った。しかも面倒な紫位魔技師を誘き寄せられる付加価値もついたと思えば、結果として手に入るのが遅れたけど喜ばしいよ」


 もはや何を言う気力もない。

 そんなジンの様子を見た司祭は一転して、つまらなさそうな声音になった。


「疲れてしまったかな。もう戻って休んでいいよ。あとは必要な時に使うだけだから。死なない程度に生きていてくれ」


 男が鎖を引き部屋を出る。

 ジンは冷たい石の床を引きずられながら、視界の中で遠くなっていく司祭を見ていた。

読んでくださった方々ありがとうございます。

前書きにも書きましたが、これから胸糞な展開が多くなります。人によっては気分が悪くなる方もいるかもしれません。そのような場合には一度、読むのを止めることをお勧めします。


さて、混沌教の司祭が改めて登場しましたが、彼あるいは彼女は真性の外道です。作者も「許せねえ……!」という気持ちで書いています。よってなんらかの報いを受ける予定ですので、読者の皆さんは安心して読み進めてくださればと思います。


それとお知らせを。

不定期更新と言いつつ毎週土曜日の更新がルーティン化してきた。というわけで魔技師は毎週土曜日に更新していくことにしました。つらかった不定期に戻します。あと更新する時間帯は夕方を基本に、間に合わなかったら夜ですね。

最後に、遅れたらごめんなさいと予防線を張りつつ、また次回を楽しみにお待ちください。

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