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魔技師  作者: 檜山 紅葉
第2章 世に混沌のあらんことを
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45 異界 前編

お待たせしました。

長くなりそうだったので前後編に分けてお送りします。

 ジンとゲンキは異界に取り込まれたことを察知していた。同時に驚き、そして苦々しく思う。厄介な事態になったと。

 魔力の放出が収まったことで、辺りを見回す余裕が生まれる。


「なんだ、これ」


 そこは広い空間だった。

 直径50メートルほどだろうか。分厚い海水の壁に囲まれたドーム状の空間だ。足下は砂であり、足首まで海水に浸かっている。夜ということもあって深海にいるように暗い。また、ジンとゲンキは独特の匂いと生臭さにやられていた。潮の香りである。生まれて初めて嗅ぐ匂いは刺激が強すぎたようだ。

 2人は海に行ったことはなかったが、この水の壁が結界の役割を果たしていることは理解できたし、自分たちが予想以上に不利な状況だと知って歯噛みした。

 そこに潰れた声が響く。


「ヨウコソ、我ガ領域へ」


 この声の主は空間の中央に立っていた。イカのような触腕を持った魚人である。しかし魔力を放出する前と比べると魚人の様子は少し違っていた。

 両方の肩口から触腕が生えているのだが、人間で言うところの手首に相当する部分までを床に埋めているのだ。


「歓迎ノ証ニ、教エテヤロウ」


「何のつもりだ?」


「我ハ、コノ空間ヲ支配シテイル。オ前タチハ出ラレナイ。助ケモ来ナイ。ココデ死ヌシカナイ。ソシテ我ハ、コノ空間ヲ、自由ニ操レル。コノヨウニナ」


 魚人の周りの水面がうねる。

 波紋は複数起こり、そして広がり、それぞれの中心が泡立つ。そしてすぐに水飛沫を上げて触腕が生えてきた。それは魚人の肩口から生えるイカのような触腕と同じものであるが、その大きさはまるで違った。いちばん太いところで直径が1メートルほど、全長は3階建ての家屋に匹敵するだろう。

 そんな触腕が一対、魚人の左右に1本ずつ存在し、さらにそれとは別に二回りは小さい触手が10本、魚人を取り囲むように水面から生えてきていた。


「食ラウガ良イ」


「くっ、速い……!」


 哀れな犠牲者へ目掛けて触腕が伸びる。

 ジンは回避を、ゲンキは迎撃を試みた。

 触腕は想像外の速さでジンに迫ったが、咄嗟にその場を飛び退くことで回避できるはずだった。しかし実際は足下の砂と海水に足を取られ、僅かに動きが鈍ってしまった。

 一方、ゲンキは破気衝撃を纏い、触腕が到達するのを待った。とはいえ受け止めるのではない。裏拳の要領で触腕の横腹を叩き、破裂させ、衝突の力をも受け流すのが狙いだ。

 巨大な触腕が俊敏に動いたことで驚いたのは確かだが、ジンとゲンキ、そのどちらも焦ってはいなかった。しかし無事だったのはゲンキだった。

 ジンは2つの要因が重なったことで、触腕により弾き飛ばされてしまう。強い衝撃に襲われて尚、空中で姿勢を制御しようとしたジンが見たのは迫り来る水の壁だった。派手な水飛沫を上げてジンは水中へと姿を消す。


「ジン!?」


「余所見トハ余裕ダナ」


「くっそがぁっ……!!」


「マズハ1人。次ハ、オ前ダ」


 猛るゲンキを他所に触腕は、しゅるしゅると戻っていく。その代わりに新しく5本の触手が伸びてきた。魚人の周囲から生えているその触手は、触腕と比べてより俊敏に、そして器用な動きで襲いかかってくる。

 破気衝撃と身につけた武術を用いて、次々と触手を捌いていく。淡々と触手を撃破しては少しずつ前に進んでいく。その度に攻撃は激しさを増し、ゲンキの肉体には浅くとも着実に傷が刻み重ねられていった。

 やがて触手と入れ替わるように、再び触腕が伸びてくる。片方はゲンキが破裂させたはずなのに、今は元通り健在であった。再生したのだと察してはゲンキと言えども、とても穏やかではいられない。


「ふざけんなあああっ!」


 ゲンキを挟み込むように左右から叩きつけられる触腕。まるで合掌のような攻撃だが、ゲンキには通用しない。

 破気衝撃を集めた両手の拳を頭上に振り上げ、触腕が己に接触する直前、一気に振り下ろす。凄まじい威力が水面に叩きつけられたことで2本の水柱が立ち、その飛沫が霧雨の如く辺りに降りかかった。

 破裂させられた触腕が引っ込んでいき、その隙を埋めるように幾らかの触手が差し向けられる。その様を鬼の形相で睨めつけて、ゲンキが魚人に吠える。


「うねうねうねうね気色悪りぃ!うぜえんだよ!このタコがっ!俺ひとりでも殺ってやるからな!覚悟しやがれ!!!」


「ククク、威勢ガ良イノモ今ダケダ」


 あまつさえ魚人は嘲笑を浮かべ、触手を襲わせてくる。そのことが余計にゲンキを苛立たせる。それを見た魚人は浮かべていた笑みをより深くした。

 それからは絶え間なく触手と触腕を相手にする時間が続く。湧き上がる怒りと魚人の猛攻によって、いつしかゲンキの頭からはジンの存在は抜け落ちてしまっていた。

読んでくださった方々ありがとうございます。


今回は長くなってしまいそうだったので、適当なところで区切り、前編と後編に分けることにしました。しかし多分というか、ほぼ確実に後編の方が肥大化すると思います。少なくとも今回よりは文量が多いことが予見されます。

まあ、それでもプロットは既にあるのでスムーズに行くとは思いますが。


それと予約投稿の時間を18時にしてみました。早い時間の方が良かったりするのでしょうか?

不定期な更新ではありますが、色々と試していく所存です。

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