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魔技師  作者: 檜山 紅葉
第2章 世に混沌のあらんことを
46/94

44 熱戦

お待たせしました。


【お知らせ】

累計2,000PV、1,000ユニークを達成しました!


いつもありがとうございます。

 時は少し遡る。

 後方をジンとゲンキに任せたドラコーンは、前方の異形受肉体と思われる4体の魚人と対面していた。

 手の中にある薙刀を強く握り締め、目の前の魚人を観察する。

 3体は似たような姿。

 魚面で、所々に鱗の生えた表皮、手に生えた水掻き、人の形はしているものの魚類の特徴をそこかしこに残している。

 そして残りの1体は上記の特徴に加えて、カニのような大きな爪、鋏を持っていた。両腕の肘から先が、濃緑の甲殻で覆われたカニの手と化している。

 1体だけ明らかに様子が違う。

 その事実にドラコーンは警戒をより深めていった。


「魔技師、殺ス」


 そう言うと何度かカニのような爪を打ち鳴らし、金属のような音を立てる。それに合わせて魚人の異形が、ドラコーンを半包囲する様ににじり寄っていく。

 それをドラコーンは受けの姿勢で待つ。

 ここで彼女がやられてしまうのが最悪のパターンである。ジンたちが前後から挟まれてしまうからだ。なのであくまでも生存を重視すると決めていた。

 しかし、倒せるならそれに越したことはない。

 薙刀を大きく振るい牽制する。


「ここは通さん」


「……殺セ」


 3体の魚人が一斉に動き出す。

 身を低くして駆ける魚人に対してドラコーンも低く構える。間合いの広さを活かして、まずは魚人の足並みを乱すことを考える。

 彼我の距離は縮まり、先に攻撃を仕掛けたのはドラコーンだった。正面から右方向にかけて足元を払うように、下段に構えていた薙刀を動かす。

 ドラコーンから見て左斜め前、正面、右斜め前から突進して来ていた魚人たちのうち、正面と右斜め前の魚人が後方へと僅かに飛び退った。その魚人らもすぐに動き出すが、左斜め前にいた魚人が少しだけ突出する形になる。

 薙刀の内側に足を踏み入れた魚人が拳を作る。

 いざ殴りかかろうとした時、ドラコーンは足捌きだけで、すでにその魚人を間合いの外に置いていた。

 攻撃の間を外されたことで魚人は大きな隙を見せている。他の2体が追いつくのには若干の時間が必要だろう。そしてそれだけの時間があれば、ドラコーンが魚人の首を刎ねるのは造作もなかった。

 首の切り口は焼き焦げており、ジンのように魚人のぬめりで仕損じることもない。それは薙刀に高熱に変化させた魔力を纏わせていたからだった。

 薙刀の柄で魚人の足元を払う。

 それだけで頭部を失った魚人はいとも容易く地に塗れた。

 そこに残された2体が詰めてくる。


「存外、脆いものだな。これならばジンとゲンキを待つ必要もない」


 ドラコーンの纏っている魔力が熱気を帯びていく。仄かに赤みがかる魔力を魔闘術の要領で全身に纏う。その姿は火炎を紅い衣として羽織るようだ。衣は周囲に高熱を撒き散らし、陽炎すらも生み出していく。


「魔闘術・炎纏(えんてん)!」


 彼女へと近づく度に魚人たちの皮膚が焼かれていく。それでも彼らが足を止めることはなかった。そのままの低い姿勢で間合いの内側へ飛び込んでくる。

 ドラコーンが薙刀を回転させる。

 左右で1度ずつ。

 素早く2度振るわれた。

 薙刀は熱波を伴い、下から切り上げることで斬撃を成す。

 魚人たちは攻撃を避けないばかりか、腕を1本犠牲にすることで、ドラコーンの懐へと踏み込んでくる。肉を切らせて骨を断つとはまさにこのことだった。

 2体の魚人は体幹を崩しながらも同時に腕を振り上げる。


「甘いっ!」


 もはや回避できるタイミングはないように思われたその時、ドラコーンは足元に薙刀を突き刺し、その場で跳んだ。そして魚人の拳を足場に蹴り上がり、薙刀の柄を支えにして空中へと逃げる。

 振り抜かれた2つの拳が薙刀の柄の左右を通り抜けた。ドラコーンは空中で身を翻して華麗に着地すると地面から薙刀を引き抜く。そしてその場で身を捩り回転。薙刀を一閃して魚人2体を切り捨てた。


「あとはお前だけだな」


「雑魚ト、同ジニ思ワレテハ、困ルナ」


「お前は違うとでも?」


「嗚呼、違ウ。ソレヲ教エテヤロウ」


 両腕の鋏をガチガチと鳴らす。

 事ここに至ってようやくドラコーンは、敵に会話をする能力があることを知った。

 異形が言葉を話すことはあっても、それは怨念のようなもので意味はない。しかし中には会話をするだけの知性を持つものもいる。それらは例外なく深級相当だった。それも深級の中でも限りなく上位だ。

 動揺を押し殺す。

 こうしてドラコーンが観察する限り、深級ほどの圧力は受けなかった。それこそあのがしゃどくろの異形よりも。ということはどれだけ強く見積もっても上級が精々だ。それでも十分に異常なのだが。


「来ナイナラ、此方カラ、行クゾッ」


 カニのような爪を腰だめに構えて異形が突っ込んでくる。見た目にそぐわず機敏だ。たったの3歩で距離を詰めてきた。

 それから器用にも小刻みな爪の動きで連撃を仕掛けてくる。ドラコーンは体捌きで躱したり、薙刀の柄で弾いたり受け流したり、とにかく距離を置こうと動いた。しかし異形がそれを許してくれない。


「ドウシタ。ソノ程度カ!」


「くっ……!」


 なによりも高熱を無視している様子なのが堪える。あくまでそう見えるだけ。全く効いていないなんてことはないのだろう。それでも相手の魔力によって耐え忍ばれている。

 異形の体格は良く、重さもあり、なにより爪の甲殻が堅硬だ。それほど大きな動きではないのに、ずっしりと響くような打撃が襲ってくる。それだけでドラコーンの薙刀を持つ手が痺れてくる。

 このままではマズいかもしれない。

 なにより建物が沢山あるここでは、火炎操術を派手に使うことができない。

 じりじりと焦がれる防戦の中、事態は突然に動き出す。


「何が起こって!?」


「ククク、アイツラハ、モウ終ワリダナ」


「どういうことだ。あれはいったい」


 ドラコーンが言いかけたところでソレは完成する。

 ジンとゲンキが戦っている場所で起こった魔力の大放出。それが終わった後に残されたのは、彼らの戦場が丸々収まるほど大きな結界だった。ドーム状に展開された結界の色は黒く、結界内を覗くことはできそうもない。


「続キト行コウカ」


 騒動の中で緩んでいた攻撃の手が激しさを増していく。ドラコーンは結界を背に、それをどうにか捌いていった。


「2人とも。頼んだぞ」


 2人の勝利を祈りながら。

読んでくださった方々ありがとうございます。


前書きにも書きましたが累計2,000PV、そして1,000ユニークを突破しました。連載を開始して1年と3ヶ月近く経ちましたが、ここまで書き続けられたのは、間違いなく読者の皆さんのおかげです。

当初の予想を大きく超えて、多くの方にこの作品を読んで貰えたこと。これは嬉しく、そして励みになります。これからも書き続けていきますので、応援よろしくお願いします!

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