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魔技師  作者: 檜山 紅葉
第2章 世に混沌のあらんことを
28/94

28 過多

1ヶ月ぶりでしょうか。お待たせしました。

全くと言っていいほど筆が進みませんでした(申し訳ない!)。

今回は短めです。

 夕食の後、ジンは食事の礼を言って、ウェウリンの邸を出た。

 アイリーンは「泊まっていけばいいのに」と惜しんでいた。そしてその横で「私が居ては休めんのだろう」と宣う師匠の姿。帰りの道中、その様を思い出したジンは、人知れず笑いを漏らした。

 ウェウリンが冗談を言うのは珍しかった。

 心に少し余裕があるのを自覚したジンは、自分は焦りすぎていたのかもしれないと思い直した。そうすると、その心の余裕が生まれたのは、ウェウリンとアイリーンのおかげなのだと分かった。


「ありがたい……」


 上を向いて歩けば夜空に星が瞬いている。街灯も疎らな通りだ。冬の冷たく澄んだ空気も相まって綺麗に見える。

 星を眺めて歩いているうちに、家に帰り着いていた。

 コートのポケットから鍵束を取り出す。2つある内の1つを門扉の鍵穴に差し込み、そのまま捻る。かちりと音がした。ジンは鍵を引き抜くと門扉に手をかける。

 蝶番を軋ませながら門扉が開く。

 ジンは門をくぐると後ろ手に門扉を閉めて内鍵をかけた。

 門から玄関までの間には狭いながらも前庭がある。ここもかつては立派な前庭だった。低木も剪定されていたし、花壇には色とりどりの花々が美しく咲き誇っていたものだ。その風景も今となっては、ジンの思い出の中にしか存在しない。

 所々に雑草が生えるばかりの荒れ果てた庭先は瞬く間に踏破される。門から玄関までは本当にすぐなのである。

 ジンは先ほど使わなかったもうひとつの鍵で玄関を開けた。


「ただいま」


 誰もいない屋内に虚しく響く。

 それでもジンは、出かける前に「いってきます」と、帰って来れば「ただいま」と言うことを決めていた。それは自分の居場所を確認するための儀式でもあった。

 暗闇の中、明かりもつけず、ジンは自室へと向かう。そして風呂にも入らず、そのままベッドに倒れ込んだ。ジンは枕に顔を埋めると深い眠りへと落ちていった。




 明けて翌朝。

 身支度を整えて、朝食も済ませたジンは、強くなるための方策を考えていた。アレはどうだ、コレはどうだと思案するうちに、やがてひとつの結論に辿り着く。

 基礎の向上である。

 地力がなければ発展はあり得ない。コツコツと努力を積み重ねるしかない。

 しかし、これでは時間がかかる。他にないかと何度も思考を巡らせたが、その度に同じ答えに辿り着く始末である。

 ジンは溜息を吐いた。他に良い案が浮かばない以上、現状は今まで通り鍛錬を積むしかなかった。仕方なしに、訓練用の木剣を手に取り、庭に出て素振りを始める。

 焦っても仕方がない。少しずつ積み重ねるしかない。だが頭では分かっていても、焦燥が消えてなくなるわけではない。それは剣筋の乱れとなって現れる。

 これでは鍛錬の質が落ちてしまう。それでもジンは素振りを続行する。

 今度は木剣を振る速度を落とし、ゆっくりと体の動きを確かめるように振るってみる。体の中心の線をなぞる様に、振り上げた木剣を振り下ろす。

 それを幾度も繰り返す内に、木剣を振るう速度を上げていく。しかし、速度は上げ過ぎない。最終的には力まず、木剣の重さだけで振るえるよう、適当な速度を維持する。

 全身汗だくになりながら、しかし呼吸は荒くならないように一定を心がけ、雑念を切り払うが如く黙々と素振りをした。


「ふぅぅぅ…………」


 長く息を吐き出す。

 結局、剣筋の乱れは払拭できなかった。


「ダメだ、これじゃあダメだ」


 この日、ジンは日が暮れるまで素振りをした。

読んでくださった方々ありがとうございます。

現在、29話を書いています。まだ途中ですが、近日中に公開できるかと思います。例によって例の如く予定は未定ですが……頑張ります。


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