01 朝食
不束者ですがよろしくお願いします。
注意※この第1話は短いです。
ジェイムズ・シルバーが朝刊を広げている。彼は熱心に金融業界の記事をチェックしていたが、やがて深いため息を吐くとそれを閉じた。
「全く景気の悪い話はうんざりだ。利益ばかり追求するからこうなる」
「ジム。朝からため息なんか吐いていると、幸運が逃げていきますよ」
台所から3人分の食事を持って現れたのは妻のメタリー・シルバーだった。
ジムは顔を上げて妻を見る。閉じた新聞を丁寧に畳むと、自分がため息を吐く度に同じことを言う彼女に、これも何度目か分からない返答を口にした。
「しかしだなメタリー、これがため息を吐かずにいられるものか!大店の商人連中と来たら、価格競争だなんだと言って……」
こんがり焼けたトーストにスクランブルエッグとソーセージが2本。お決まりの朝食を口にしながら不満を漏らす夫に、メタリーはポットからコーヒーを注ぐと、それを夫の目の前に差し出す。
「どうにもできないことを口にしても仕方ありません。あなたに出来ることは会計士の仕事と、それから子供の前では父親らしい姿を見せることでしょう。違いますか?」
全くもってその通りだった。
反論を封じられたジムは劣勢を悟り、コーヒーを呷る。そうして苦味と酸味の広がった口にトーストを詰め込んだ。
メタリーはそんな夫に肩をすくめて、ようやく自分の朝食に着手した。
これらはシルバー家ではよく見られる光景だった。なんだかんだ仲の良い両親の姿までいつも通りだ。
ひとり息子である12歳のジン・シルバーは、その光景を呆れた様子で眺めながら、残った1本のソーセージに金属製のフォークを突き刺した。
これは明日も見られる平和の姿なのだと、彼は心のどこかで漠然と信じ込んでいた。
読んだ下さった方々ありがとうございます。
作者は設定ガバガバですし、作中に登場する都市は架空のものです。ですので作品を読み進める中で「おや?ここは辻褄が合わないぞ」という箇所がありましたら、遠慮なく作者までご一報ください。時間を見つけて修正します。
それと、この作品は不定期に更新していく所存です。ご了承ください。