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そして、船は往く  作者: 樫山泰士
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「残る二人の一人目」と、背筋をピンと伸ばした格好のまま松井が続ける。「こちらは、千葉県市川市在住の飲食店従業員――所謂『オネエ』の方らしいんですが、藤見龍太さん」

「『オネエ』?女装とかされるんですか?」と、小張。

「詳しくはネットに写真があるとかで、」と、機械音痴の松井は返す。「――見られませんか?」

 カタカタカタタッ。と、小張のキーボード―を叩く音がした。「あ、どうぞ」と彼女。「次の人についてお願いします」

 そう促された松井は、少し拍子を崩しながらではあるが「最後の一人は、神奈川県綾瀬市在住の麻酔科医で富田悟さん」と、報告を続けた。それからパンッと手帳を閉じると、「――以上の5名になります」と、満足そうに言った。

 それとほぼ同時に小張が「藤見さんですが、」と、彼名義のSNSをパソコンの画面に表示しながら言った。「『オネエ』だけだと言葉が追っつかないですね。見事なまでの『ドラッグクイーン』です」

 そう言って彼女が指した画面の中では、コバルトブルーのスパンコールに身を包んだ大柄の男性が、煌びやかなステージの真ん中ででスポットライトを浴び歌っていた。

「これは、」と松井。「――男の方ですよね?」

 それに対して小張が「れっきとした男性ですよ」と返すと、

「美空ひばりみたいですね」と、たまにはセリフを言わないと存在を忘れられそうな新津が口を挟んだ。

 が、そんな彼のことは適当にスルーして、「彼らの資料は?直ぐに頂けそうですか?」と、小張が松井に訊いた。私用パソコンでも情報収集は行えるが、警視庁と石神井警察署のセキュリティに引っ掛からないようにするとどうしても限界がある。

「もちろん」と、会議室の南側に掛けられた時計を見上げながら松井が言った。「そろそろ、小張さんのパソコンに届く頃かと思います」

「承知しました」と、敬礼のポーズをしながら小張。ちょっと興味深い情報を見付けた。「――ひょっとして、司馬さんの言う『共通点』ってコレじゃないですか?」

 小張はそう言って二人を手招きすると、ふたたびパソコンの画面を指差した。

 そこには、『TRANSIENCE』と云う大きな文字がゆっくりと回転しながら映っていた。

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