表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

3WeekStrayWriting

作者: tatsuya

 


私は前回、「いとをかける」という小説を執筆し、人生で初めて「小説家になろう」へ小説を投稿した。今回はそれから三週間の話である。


 


一週間目


そもそも私が小説を執筆しようとしたのは友人との約束がきっかけだ。飲み会の帰りに小説を書こうとしている、という話になりその友人に小説のお題を出してもらったのがきっかけだ。『コロナによる世の中の変化と家族のありかた』だなんてハードルが高いな、と思う一方、お題の気遣いに有難さを感じていた。お題によって自由が少ない方が、深く掘り下げた作品を作れるからだ。実際、前回執筆した小説は一週間で作って投稿することができた。途中で構想を変えたり、修正も度々加えたが、そもそもの軸はブレなかったので蛇行はしても迷走はせずに行き着きたいゴールまで筆を走らせることが出来たと思う。 


完成するまではよかった。そこで私は少しばかり自信をつけ、働きながらも小説を書けるんじゃないかと思っていた。問題は次のお題にあった。


小説を投稿した後、LINEでその事を報告して次のお題を貰ったのだが、次のお題は難題中の難題「お金について」だった。


古今東西、お金をテーマにした作品は数多くある。今流行りの『半沢直樹』は銀行をテーマにした作品であるし、金融、銀行は生活と隣り合わせの社会システムだ。しかし、人間の歴史が始まって数千年、はるか昔から存在する人間が作ったシステムであるにも関わらず、いまだ人間はこのシステムを使いこなせていない、非常に難しい歴史そのものなのだ。


しかも、それを小説にするとなると厄介だ。小説にはそれを作る上で、テーマと作者なりの答えが必要になる。例えば、前回投稿した小説、『コロナによる世の中の変化と家族のありかた』に対して、私は『みんなが蓋をしていたものが表に出てきただけで、なにも変わっていない』が自分なりの答えだった。コロナによるDVや、一転して家族の絆を感じるエピソードなど、家族に関する話は悲喜交交といった印象をうけた。コロナは今世紀最大のパンデミックというだけで、家庭に及ぼした影響はいままで仕事や学校で明確になっていない人間関係を表にだしただけだと結論つけたのだ。そういったお題、問題提起に対する結論、作者なりの答えがあるからこそ中は変わろうと迷わずに話が決着するのだ。


お金をテーマにするならばなにかしらの問題提起と、それに対する答えを示さないといけないのだ。しかし、お金に関する問題に答えを出すなんてことは金融の仕事をしている人でもだすことは難しいだろう。私はここから答えの見えない道を迷走することになる。


 


二週間目


 


前回1作を書き上げた期間、一週間を超えると焦りと謎の申し訳なさが湧いてくる。不思議なもので、趣味で書いていて金銭も発生しない小説執筆をしないだけで謎の申し訳なさに襲われる自分がいるのだ。


それからはテーマをひたすら模索する日々となった。一番最初に考えたテーマは「時間と金」だ。時給、というくらい時間と金の関わりは深い。効率よく稼ぐということや、仕事の一番辛いところは自由が無いところだという事をテーマにした会話文形式を考えていた。ちなみに、下にある会話文がその構想の草案だ。


 


 


金は時なり


 


「なぁ、この間の火曜日に食べに行った店、また行かないか?」


 


「火曜日って、あの中華の店か?あそこって日替わりランチが40分もするじゃねぇか。コンビニでおにぎりとお茶でも買って済ませれば20分ですむじゃん」


 


「いやいや、あそこの店、金曜日は坦々麺ランチが日替わりなんだけどさ、替え玉自由なのに35分なんだよ!」


 


「なんだよ、5分しか違わないじゃん」


 


「昼休みなんだから、ちゃんとうまいもの食わないとやる気でないぞ〜?これからあと5時間は働くんだから、35分も20分も大して変わらんよ」


 


「俺は少しずつ貯めていく倹約家なの。5分の積み重ねが、いずれ100時間にも届くんだよ」


 


「いやさ、そうやってケチってると、いつか病気になるんじゃねぇか?病気で拘束されたら、支払う以上に時間を浪費するぞ?」


 


「…まあ、たまにはいいか。たまにならいいけど、あんまり外食してっと太るぞ」


 


「55分と1時間は大きく違うかもしれんが、1時間と3時間はそう違わないさ」


 


「おいおい、積み重ねはバカにならんぞ?この間、貯めたポイントで家買った人の話を聞いた。こっちも金をかければいつか必要な時間もそろうかもな」


 


「金は時なりってか?」


 


 


 


 


私が投稿していないのでお分かりだと思うが、これは結局没案になった。時間あたりに金が発生する事を読者に示したとて、だからなんだという話なのだ。この草案はお題だけで言いたい事が完結していて、結論、主張が行方不明になっているのだ。結局振り出しに戻ることになる。


 その後も「子供から大人になっても趣味、食事、服などにつかうお金の比率が変わらない」など思いつくが、だからなんだと自己否定を続け成果なく一週間がまた終わった。


 


三週間目


 


 このころになってくると、焦りや悩みの感情は無くなっていき、ただただ完成させなければという決意だけが残ることになる。


たまに、未完の駄文でもいいから投稿してお題を熟せばいいのではないかと思う時があった。


 しかし、それでは意味がないのだ。人が言葉を紡ぎ、文をしたためる意味はそこに伝えたい思いが、思想が、感情があるからだ。意思なき文は言葉の羅列に過ぎず、方向性の定まらない言葉は時に思わず人を傷つける。大した作品を作っていなくても、文筆家の端くれとして最低限の礼儀を守らないといけないと思っているし、思わなければと戒めている。


 今回、結局お金をお題に物語は完成せず、こうやってだらだらと制作話を語っている。しかし、この模索は非常に勉強になったと断言できる。日常の当たり前に感性を尖らせ、何度も思想の海に体を投げ出す。道知らぬ道をゆく迷走の果てに得た答えの地から振り返って初めて終わりから始まりまでの道が見えるのだと。


 迷走の果てに答えを得るならば、今は走るしかないと思い、私は今日も筆を走らせるのである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ