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それを一心に向けられている宮野は顔が真っ青になり腰を抜かして震えている。
あ、あと言葉に出来ないほど唇が動かないようだ。
この状況はまずい。早く冬夜をなだめないと。
慌てて冬夜に向けて話しかけようとする私より先に声がする。
「お待ちください。ブラッドキャット殿」
石橋先生だ。
生徒たちの前に立ち冬夜と対面をする。
「こちらで事情を聞きます。ですので、威嚇を抑えてください」
冷や汗を流しながら彼と対峙をする。
そんな石橋先生に対しても一切の感情も湧かないようで黙っている。
どう見ても危害を加えたのは宮野だ。それに何の事情がある?
そう雰囲気で読み取れるほど冬夜は殺気立っていたのだ。
「まずは遠城の手当てが最優先です。本人も辛そうですのでお願いできませんでしょうか?」
「と、とう、や」
私でさえ体が震えてしまう。
なんだか痛みもさっきから増しているのとなんだか意識が混濁してきて上手く話せない。
じっと先生から私の方に視線を向けた冬夜が何を思ったか急に殺気を抑えた。
「………分かりました。そちらのお嬢さんの所為で先生が傷ついたようですし、早めに処置をしませんといけません。この場は貴方にお任せしますが」
万が一、先生に何か責任があると判断された際には分かっておりますね?
脅迫ともいえる言葉と共に首を傾げる。
「分かっております」
その言葉にひとまず満足したのかでは失礼しますと言い、私を抱いたまま歩き出した。
すでに野次馬のように生徒たちがいたが全員モーゼのように道を開けてくれた。
そこから私の意識は暗闇へと塗り替えってしまった。
「………先生、もう少し我慢をしてください」
コツコツと足早に廊下を歩きながら声を掛けるが琴羽はぐったりと体を預けていた。
どうやら痛みで気絶してしまったようだ。
「(『呪い』によるダメージ持続か。解除はしたものの痛みは増しているようだ)」
ちらっと彼女の今起きている状態の解析を行い、内心で舌打ちをした。
あの時、琴羽が宮野に絡まれている現場が見えなかった。
おかしいと思い、直ぐに状態異常を解除したら琴羽が腕を掴まれて詰め寄られている姿が見えたのだ。
「(やはり、あの羽虫の入れ知恵か。視界遮断といい、『呪い』といい。随分とやってくれる。………………いや、待て)」
そもそも聖女の性質を持つ娘は本来、”黒魔法”は使用できない。
それは神からの加護であり、使用してしまえば聖女の性質を喪失することとなる。
しかも、あの状況でそんな魔法を使えるかが怪しい。
教師も分かっていなかったようだし、そんな精密に掛けられるほど魔力調整が出来ないはずだ。
だとしたら、あの場でそのような魔法を掛けられるのは限られてくる。
だが、災厄と言われる自分に対して視線遮断が出来るとなるとアレには不可能だ。
「(…………あの”使えない神”であってもこのような間違いを起こすとは思えない。……いや、”干渉”でもされているのか?)」
だとしたら、このような事態を収束するために”抑止力”ぐらい手配するはずだ。
それがいないのは何故だ?
『世界の混沌』ではあの”抑止力”を派遣したのだ。
今、人間界にいるS級は自分一人のみだ。世界の脅威とも成り得る魔物がいるなら”抑止力”がいないのはおかしい。
彼女に召喚されてから甚だ疑問は多くあった。
「(あの”使えない神”に何かあったのか?どうでもいいが)」
”抑止力”がいないならこちらとしては有難い。
好き勝手に動き回れるのだから。
「(さて、彼女に危害を加えたのだ)」
これからは容赦しない。




