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何者でもない俺が勇者になるその時を  作者: ふぇりす
1章:始まりの時と始まりの街
2/38

2話:崩れゆく日常

2話目です。

ここからジルの勇者への道が始まります。


1:フラム村の朝

翌日、朝起きると気持ちのいい朝日が差し込んできた。

フラム村の朝は早い。フラム村は畜産等も盛んで毎朝鶏の鳴き声が聞こえてくる。

勿論鶏だけでなく、牛や豚等の家畜もいっぱいいるため毎朝農家のおじさん達が餌をやったりしている。

「さぁ、今日も頑張るか」

まだ今日もいつもの日常が繰り返される。そう信じて疑わなかった────

こんこん。

「おはようお兄ちゃん。」

「おはよう、カルネ」

普段より少し気分が上がっているような気がした。

俺は朝は弱いのであまり頭がまわらないが、そんな俺でも分かった。

今日はカルネの誕生日なのだ。

「そうか…今日でカルネも15歳かぁ…」

そう言っているうちに目が覚めてきたので着替えていつもの森に行くことにした。

着替えてカルネといつもの森へ行く途中、

「おっ、ジルじゃん」

茶髪の爽やかな青年─リューが喋りかけてきた。

「なんだよリュー」

「おー、ちょっといいことがあってな。あと、誕生日おめでとうカルネちゃん。」

「ありがとうございます。」と、少し照れたようにカルネ。

「いいこと?」

と聞くと

「おう、うちのじーちゃんが『お前もそろそろかのう』って大事にしてる魔導書くれたんだ」

「魔導書ですか?」とカルネが目を光らせた。

魔導書とは学校で習う魔法(護身用)よりももっと高度な魔法を扱うのに使う高価な本だ。

「お前のじーちゃんって随分魔導書大切にしてたよな?」

「代々受け継いできたんだと」

「だからそんな年季がはいってるのか…」

長らく謎だった事だ。リューの祖父の年齢にしてはかなり年季の入った魔導書だったのだ。

「おめでとうございます。いいですね、魔導書…」

「ありがと、俺も遂に魔導書を…」

リューは魔導書を抱きしめた。

その動作だけで大切なものだということが分かる。

「ま、色々がんばれよ。」

「おう。」

輝くような笑顔だった。

「じゃ、またな」

と何か用事があるようだったし、要件もなかったので引き留めなかった。

「おう。」

「気を付けて。」

そう言ってリューの後ろ姿を見ていつもの森へ歩き始めた。

2:日常は崩れゆく

いつもの森に着き、いつもの様に剣を振っていると、急に暗くなった。

「なんだ?」

空を見てみるとかなり曇っていた。俺は謎の不安感、言うなれば嫌な予感がした。

「さっきまで晴れてたのに…」

とカルネも不安そうにしている。

しばらくすると見渡す限り曇っていた。

急に曇っただけだと思っていたのだが━

「空に穴が…!?」

穴と表すのが相応しいような闇が現れた。

「何あれ…?」

カルネも見つけたようだ。

「あの方向…フラム村じゃないのか…?」

より不安感が高まった。

「戻ろう、お兄ちゃん…」

今にも泣きそうな顔のカルネが俺にしがみついてきた。

「ああ…急いで戻ろう。」

帰る途中でモンスターに襲われそうになったがお構い無しに切った。

「モンスターが何かに怯えている…?」

だがそんなこと気にする暇はなかった。

村が見えてくると、

「お兄ちゃん、見て、あれ…」

「えっ!?」

思わず声が出た。

なんと村に沢山の禍々しい悪魔のような容姿をしたモンスター達が村の魔道士や剣士達と戦っていた。

「どうなってるの…?」

カルネ血の気が引いた顔で言った。

俺も不安感を煽られたが、立ち尽くしていても仕方ない。

「…戦うぞ」

「え?」

「村のみんなや、父さんや母さんだって危ないかもしれない、戦おう!」

「う、うん」

「とにかく、みんなを探そう」

「―っ」

1匹のモンスターがカルネを捕まえて、飛んだ。

「待て!」

俺は近くの出っ張っている地面を使って跳躍した。

「グエッ!」

なんとか剣が当たり、カルネを離した。カルネを空中で抱き、着地した。

「大丈夫か?」

「うん…」

「走れるか?」

「大丈夫だよ」

「とりあえず、家を探そう」

「うん」

俺達は家に向かって走った。

途端、目の前にモンスターが現れた。

「こんな所で人間が何してんだぁ〜?」

「クソ…」

「引き裂いてやるよォ!」

大きな鉤爪が振り下ろされたその時―

「グァッ!」

爆発音と共に悲鳴が聞こえてきた。

「え?」

「え?」

2人の声が重なった。

「大丈夫か?」

声の主は村の兵隊でも学校の先生でもなく━━

「リュー!」

「おう!まさかこんな早く魔導書を使うことになるとはな!」

なんとも言えない表情でリューが言った。

「リューさん…」

不安そうな顔でカルネが言った

「カルネちゃん、安心しな。カルネちゃんにはジルがいるだろ。」

「…はい!」

カルネに少し元気が戻った。

「お前は大丈夫なのか?」

「今のところはな。」

流石にリューの顔にも焦りが見えた。

「お前達はどうするんだ?」

焦りながらも心配してくれているようだった。

「これからはとりあえず家に戻る。」

「そうか。なら俺もついて行く。」

リューがいるのはとても心強い。

「そうと決まれば早く家に行きましょう!」

「そうだな。行くか!」

━━━しばらくして

「この様子だと、もう家の方向にもモンスター達がいるかもな…」

リューが言った。

家は村の南側にあり、モンスター達が出てきた方向とは逆にある。

「まずいな…」

俺はそう呟いた。

「炎〈ファイア〉!」

カルネは魔法、俺は剣、リューは魔法と剣を使ってモンスター達を倒していたが、このままではジリ貧だ。

「このままじゃここで数で押し切られる!なんとか隙を作って抜け出すぞ!」

俺はそう言った。

すると、リューが

「俺が魔法を放つ!その間に行け!」

「リューさんはどうするんですか!?」

カルネが心配そうに言った。

「そう心配そうにするな。俺は魔導を使って逃げる!」

魔導は身体に魔法エネルギーを流して身体能力の強化をする能力だ。

「頼んだぞ!」

「頼まれたッ!」

モンスター達が寄ってきたところを―

「火炎━〈フレイム〉ッ!」

「行くぞ!カルネ!」

「うん!」

小さなモンスターを切りつつ抜け出すことに成功した。

一方リューは━

「魔導ー跳躍!」

リューも傷を負っているが抜け出せたようだ。

「大丈夫か?」

「少し横腹をやられた…」

見てみると衣服が真っ赤に染まっていた。

「し、止血を…治療〈ヒール〉!」

「あ、ありがとう…」

「…クソ…行くぞ!」

「言われなくても!」

そこに、

「おやおやぁ?…手負いの人間、どこに行くのかなぁ?…」

対峙しただけで足が竦むようなモンスターが現れた。

「クソッ!こんな時に…」

こんな化け物に勝てるのか…?

でも―

「やるしかないだろ!」

そう高らかに宣言した。

「リュー、戦えるか?」

「もう少しは戦える。」

すると魔王の様なおぞましい容姿をしたモンスターが、

「ほぅ…我と戦うのか…」

そう言い、こう続けた。

「我が名はグレッド」

グレッド…まさか…

「な…グレッドって言えば…魔王だろ…」

「なんで…」

俺達3人は青ざめた。

「何故か?…そうだな、魔王らしく世界征服でもしようかと思ってな。」

そんな思いつきのようなことで村1つ滅ぼすというのか…

「そろそろお喋りはお終いだ。暗闇―〈ダークネス〉。」

「ジルッ!」

と、リューの声がした。地面に倒れるような感覚と共に目の前が真っ暗になった。

どうやら少し飛ばされたようだった。目を開けると、

「なんだこれは…」

村だったはずの場所が瓦礫の山に変わり果てていた。

「カルネは…リューは…?」

周りを見渡して見ると、人が倒れていた。リューだ。魔導書が落ちている。俺は走って駆け寄った。

「おい!リュー大丈夫か!?」

血まみれだ。息はある。生きている。俺が思考を巡らせていると、

「ジルか…お前は大丈夫か…?」

今にも消え入りそうな声で聞いてきた。

「俺は大丈夫だ!リュー…お前は…」

リューは少し笑って、

「はは…もうダメかもしれないな…」

続けて

「カルネちゃんは…?」

そうだ、カルネは…?

「いない…」

見渡してみるが、カルネの姿は見当たらない。

「そうか…いないのか…すまない…」

「お前は謝らなくていい」

「ジル…お前に魔導書をやる…」

そう言うとリューは俺に魔導書を差し出してきた。

「リュー、お前の大切な―」

そこまで言うと

「お前は、このままでいいのか…?」

「カルネちゃんはどうなるんだ…?」リューが固く、強い意志を持った目でこちらを見ている。

「…分かった。」

俺はリューの魔導書を受け取った。

「絶対、勝て…そして、取り戻せ…」

リューの息が荒く、か細くなっていく。

「分かった。必ず…約束だ。」

俺は立ち上がった。

「!」

あれは…もしかして…

目線の先に落ちていたものは…

「カルネの付けていた…バングル…?」

俺はカルネの付けていたバングルを取り、付けて空を睨み、

「必ず奪い返してやる…」

俺はそう宣言した。

これは何者でもない俺が1人の勇者になる物語━━

続く

どうも。ferlsです。

2話、どうだったでしょうか。

またしても学校の授業中に書いていたのですが、1話よりとても長くなりました。

3話も出来上がっていますので楽しみにしていてください。


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