お伽噺はハッピーエンドで
「邪魔をするつもりはなかったんだけどな。そっちも用事があるみたいだったし」
あぁ、やっと来てくれたのね。
「誰も気づいてくれなかったんだろう?許してやってくれよ、ここらは人も通らんしな」
それでも悲しかった。
私は、精一杯叫んでいたのに。
「聞こえたよ俺には。それじゃご不満かな?」
いいえ、いいえ!
来てくれた。それだけで充分だわ。
「それは重畳。それで」
ええ。お願い、聞いてくれるかしら。
「あぁ。俺で出来る範囲ならな」
簡単なことよ。
ありがとう。
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「こんなもんか」
額の汗を吹いて立ち上がる。
雑な仕事になっちまったけど。そこは許してもらうことにしよう。
そもそも不器用なんでね。
さっきまで聞こえていた声も、今はもう聞こえなくなった。
どうやら満足して頂けたみたいだ。
「これでもう寂しがる事もないよな。」
「二人はひとつに。なんてな
「そんじゃ、元気でな。後は仲良くやってくれ」
まるで頭を下げるように魔物達が引いていく。
振りかえる瞬間、手を繋いでこちらに手を振る夫婦を幻視した気がした。
ひとつの墓に二人の命。
これでようやく二人きり。
もうこの森に嘆きの歌が響くことは、ないだろう。
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「それで?」
「娘の両親から反対された二人は、嘆きの森に入ったまま出てきませんでした。で終わりさ」
「悲しい終わりだな」
「まぁ、お伽噺だがな。ここらじゃ有名な話だよ」
適当に入った飯屋で相席したおっさんと話す。
飯の味は普通だ。これといって可もなく不可もなく。
「いきなりこんな話聞いてどうしたんだ?嘆きノ森でなんかあったのかい?」
「いやぁ、別にィ」
代金を机に置いて席をたった。
今日の宿を探さんとな。ずっと野宿だったし、今日くらいベッドでおねんねしたいぜ。
「もう嘆きの森じゃないさ」
「へ?」
「んー。やっぱお伽噺はハッピーエンドが1番だって話しさ」
後ろでおっさんが笑う。
さーて明日からはどこに行こうかな
第1話
了
お薬のめたねって言ってくれる人欲しい・・・
欲しくない?