勝負です。
誤字脱字など修正は後ほど。
小鬼の皇帝は剣を構え、どす黒い舌を突き出してロリたちを威嚇した。
「チハたん。」
「はい。」
「主砲の用意。徹甲榴弾で直接あやつを狙うのじゃ。」
「了解したであります。」
「皆の者。早く片付けることにするぞ。」
ロリの言葉が聞こえたユズたちは戸惑いを見せた。
「えっ? ええ。そ、そうだね。ちょっとあれは私もはじめて見るなー。」
「であるか。ユズも降りるか中に入るか決めるのじゃ。ジゼルは後方に下がっておれ。」
「じゃあ、降りるかな。私はジゼルの反対に展開するよー。」
「了解。気をつけるのよ。あと、ロリちゃんは中に入ること!」
「うるさいのう。大丈夫じゃ。」
「ねえ、あれを見てもそう言えますか?」
グロリアの声に彼女が指し示す方向を見ると、森が揺れていた。
「何が来るのじゃ?」
「さあて、なにかでかいもんだろうな。どうする?」
「……サラディン、そちの配下とジョルジュをあの小鬼の前にゆかせるのじゃ。ジゼルとフィムは後衛じゃ。ユズはこちらについて来い。」
ロリの命令に各人は頷き、言われた通りに展開をした。
森の木が倒れる音が近付いてきた。
破裂音とともに、大型の双頭の一角狼が飛び出した。
「なっ!! 普通の一角狼よりも大きいのに、頭が二つだなんて!!」
「チハたん!! 主砲をあやつに向けるのじゃ!! 」
「了解であります。」
慌てて、ロリは砲塔の中に戻り、グロリアは運転席のハッチを閉じた。
チハたんの砲塔が動き、主砲が小鬼の皇帝から外れた。
双頭の一角狼は頭を下げて、牙をむき出しにし、チハたんに向かって威嚇をはじめた。
小鬼の皇帝は腰を落とし、サラディンたちに剣を向けた。
「閣下。」
ジョルジュは大剣を引き抜き、サラディンに声をかけた。
「おれに露払いを任せてもらってもいいですか?」
「うむ。見事勤めてみせるがいいぞ。」
微笑んだサラディンの言葉にジョルジュは前に出た。
双刃の剣を構えたジョルジュは見上げるほど大きな小鬼の皇帝に立ちはだかった。
中央の目とともに左右の目もジョルジュを捉えた。
「来いっ!! 」
剣を右斜め下に構えたジョルジュは身を屈めて小鬼の皇帝の懐に入ろうとした。
しかし、左の下の手に握られたナイフがそれをさえぎった。ジョルジュは剣の柄頭でナイフの刃をはじき返し、そのまま水平に刃を向けて小鬼の皇帝の腹を狙った。
小鬼の皇帝はジョルジュの剣よりも早く右手の剣を振り下ろした。
ジョルジュは剣先をそらし、前転をして敵の剣から身を逃した。
お互いに間合いから外れ、数瞬、睨み合いがあった。
短槍の鋭い突きがジョルジュに向かった。彼は決して剣を大振りすることなく、はじき返した。数合の打ち合いはジョルジュも防いだが小鬼の皇帝は他の手に握られている剣やナイフも振るいはじめた。
金属同士が響き合う鋭い剣戟の音に鈍い音が混じった。
「よしっ!!」
ジョルジュの戦いを見守っていたフィムが声をあげた。
彼の大剣が小鬼の皇帝の持っていた剣の一つを叩き折った。
しかし、すぐに硬いもので肉を打つ音がして、ジョルジュが吹き飛ばされた。
柄だけになった剣を放り上げた小鬼の皇帝はその手でジョルジュの腹を殴ったのだった。
地面に転がったジョルジュは立とうとしたが足に力が入らず、そのままうつ伏せになった。
「ジョルジュ!! 」
悲鳴に似た声をあげてジゼルが駆け寄ろうとしたが、短槍を振りかざした小鬼の皇帝がそばにいて近寄ることができなかった。
彼女は三八式歩兵銃を構え、素早い動作で速射した。
大きな図体に魔法弾がめり込んだが、その分厚い皮膚によって弾がはじかれた。しかし、ジゼルの攻撃によって注意をそらされた小鬼の皇帝は足元のジョルジュをマムルクたちによって奪われてしまった。
「よし、次は私が相手になろう。」
サラディンが直衛隊から長槍を受け取って、ジゼルの前に立った。他のマムルクたちも彼の後ろに控え、ジゼルは戦場を離れ、ジョルジュに駆け寄った。
「ジョルジュ!!」
「大丈夫だ。あばらを数本持ってゆかれただけだ。」
苦しそうに咳をしながらもジゼルに笑みを見せた。
「無茶しないで!! あんなのに一人で立ち向かうなんてどうかしているわよ!!」
ジゼルはジョルジュを叱りながらも、手早く胸当てのついた皮鎧を脱がせ、上半身裸にしたところで、ポーションを浴びせた。
「最近、いいところがなかったんでな。少し頑張ってみたよ。」
ポーションのかけられた部分から熱が持ってゆかれ、ヒリヒリする感覚がジョルジュの肌に伝わってきた。ジゼルはまた服を着せて、歪んだ胸当てを無理やり外して、皮鎧をつけさせて、ベルトをいつもよりもずっときつく締め直した。
「バカッ!! 本当に子供みたいなんだから!!」
「すまないなぁ。」
「取り込み中、悪いんだけど、ジョルジュを端に連れてゆこうよ。」
フィムが面倒くさそうに指差した。
「わ、わかってるわよ!! そっちを持ちなさい。」
ジゼルとフィムは腕を片方ずつ持ち、ジョルジュを広場の端に引きずった。
「ロリちゃんとチハたんは大丈夫かな?」
ジョルジュが首を巡らせて、チハたんの姿を探すと、そこには一角狼の巨体がチハたんの主砲の砲弾を避けるところだった。
「マジかよ。」
ジョルジュは顎が外れそうなほど大きな口を開けて、その光景を眺めた。




