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はじまりは遺産(レガシー)から
よろしくお願いします。
「なんじゃこりゃ……戦車じゃ、ねぇか……」
御岳弘安の目の前には、彼の手のハンドライトに照らされた旧陸軍が誇る中戦車が、今まさに工場から出てきたばかりと言わんばかりの真新しさで佇んでいた。
光の差さない洞窟の奥に鎮座した戦車に驚いた御岳はハンドライトを振り回すように辺りを照らして何があるか見回した。
洞窟の壁際にはベルトでくくられた白木の箱が積まれている。
奥を照らすとさらに同じ車種らしき影がいくつも浮かび上がった。さらに奥を見ようと試みるも、洞窟の闇は光を吸収してよく見えなかった。
「曾祖父さんはなんつーもんを残してくれたんだよ。」
呆れたようなつぶやきを漏らす御岳の胸の奥はドロドロとしたマグマのような熱が湧き上がり、知らぬ間に口の両端がつり上がっていた。