第一話
愛してる、なんて言わないで。
私は君の契約彼女。
その頃の私は特に焦っていた。
新宿でスカウトされて特に大きな仕事もない一年半。
モデルとして入った事務所だったのに、やった仕事といえば安いスーパーの広告モデルやドラマのエキストラばかり。
もっと芸能界は華やかなところだと思っていたが、実際仕事がない人なんてごろごろいるところだった。
綺麗で可愛い子なんて、実は結構いることを知った。
でもその中で輝けるのはほんの一握りだってことも知った。
もちろん私が普通に街を歩いたって、芸能人だ!なんて騒ぐ人は誰もいない。
しかし、自分が平凡だと知ってもなお、私は有名になれたらいいなと思っていたのだ。
ジムに通ってダイエットだって頑張ったし、エステにだって行った。整形だけはしていないが、他の事はすべてやりつくしたと思う。
本当はこの雑誌の表紙になりたいのに、とファッション誌を物色しながら必ず思ってきた。
でも、もう遅い。
最初は十八だった歳も、二十を数えてしまっていた。大学三年とは、就職活動の時期なのだ。
もうここで一区切りをつけよう、そう思って今日は久しぶりに事務所に来ていた。
事務所とはいえ小さかったので、ここには黒田社長と何人かのマネージャーがいるだけだった。