__須川高校__
「突然だが、来週末練習試合になった」
「おー…おお? 急だね?」
苦笑いするいろはに、一成も苦笑いで返す。
「相手は須川高校。場所はここだ。多分、あいつの事だから一日中やるだろうな。だから、弁当持ちで」
後は何かあるかな、とこめかみにペンを当てる一成に、汐が控えめに手を挙げた。
「あの、須川高校って何処ですか…?」
「そっか、一年生は須川知らないよね」
須川高校。一成の姉に当たる市が所属する同じ地区の高校で、言わずもがなソフトテニス部がある。
「須川高校は、ある意味力任せで来る」
彼らは、全力で打ってくる。入るかどうかは二の次で、一球一球全てに全力を注ぐ。
「甘く見ないほうがいい。コントロールはまあそこそこだとして、パワーはこの地区で一番だ。油断してると、ラケットごと腕持ってかれるぞ」
ひぇっと香澄が跳ね上がった。
それを見た木暮双子は笑う。
「かず先輩、脅かし過ぎですよぅ。腕は持ってかれません! …ラケットは吹っ飛ばされるかもしれないけど」
ぼそっと付け足した言葉に、汐がびくりと肩を揺らした。
「姉さんまで脅かしてどうするの」
雪奈が溜息をつく。雪斗はけたけた笑った。
「まあでも、パワーはマジで私達の比じゃないから、覚悟しといていいと思うよ! いろは最初打ち返せなかったもんね〜」
「あんな重いと思わなかったから…」
「でも落ち着いて見ればコントロールは甘い。パワー重視だから、コントロールはそこそこなんだ」
ストレートはほぼ抜いてこないし、打ち返さればこちらに勝機がある。
「というわけで。今回の練習試合の課題は『どんな重いボールでも打ち返すこと』だ。打ち返せなきゃ試合にならない。レシーブもそう。いい練習相手になると思って、来週末がんばるぞ!」
「「「「「「おおー!!」」」」」」