___昔の仲間___
自販機の前に立った香澄は、ポケットから出したがま口財布の口を開いた。汐はなんとなく周りのコートを見ながら、飲み物を買う香澄の隣に並んでいる。
「汐ちゃん、お茶とスポドリどっちがいいと思う?」
「好きな方でいいともう」
「ん~どっちも好きなんだよな~」
「スポドリにしとけば? お茶はお昼の時に小さいの買いに来ればいいし」
「じゃあスポドリにする!」
百五十円分を入れ、スポーツドリンクのボタンを押す。ガコンと落ちてきたペットボトルを拾って汐と向き合った時、香澄の顔が凍った。
「? マロン?」
「…あ、ごめ、なんでも、…」
汐が振り返ろうとすると、香澄がそれを止めた。ぎゅっと握られた手首に驚いて、汐は香澄の顔を覗き込む。
香澄はなにかから目を逸らすように俯いていた。顔は青ざめているように見える。汐が振り返ろうとするたびに、手首を握る手に力がこもる。
「…大丈夫?」
「…う、ん」
「大丈夫そうじゃないけど」
「…ううん、大丈夫。ほんとに」
「…じゃあ帰ろ。先輩たちが待ってる」
「うん…」
手首を握られたまま、汐が引きずるように陣地に戻るため歩き始める。
「かすみ」
ぴくりと香澄の手が震えた。
汐が止まって振り返ると、ポニーテールの女の子が立っていた。彼女は香澄を見て、不安そうに首を傾げる。
「かすみだよね…?」
「…マロン」
俯いたまま顔を上げない香澄の肩を叩くと、彼女は恐る恐る顔を上げた。
「やっぱり。久しぶり、元気だった?」
「あ、うん。そっちこそ…」
汐は香澄と話す彼女をまじまじと見つめた。どこかで見たことがある。が、いまいち思い出せない。
「かすみはテニス、続けてたんだ。他のみんなは辞めちゃったから、私たちだけだね」
「そう、なんだ。…あ、じゃあ、りんも?」
「うん。りんは写真部に入ったらしいよ…って、聞いてないの? ペアだったのに」
「あー…うん、まあ、高校入ってから誰とも連絡とってないから…」
りん、という名前は聞いたことがあった。顔も思い出せる。そこから芋づる式に、香澄と今話している彼女も思い出した。
「そっか。また今度みんなで集まろうね。じゃあ」
「うん。じゃあね」
ぱたぱたと手を振った彼女は踵を返して去っていく。
「…今の、一番手の前衛…?」
「汐ちゃん、記憶力いいね。一番手の前衛で、副部長だった子」
「苦手なの?」
その問いに、香澄は黙り込んだ。




