___一成と佐久間___
パサリと、ゴミ箱の縁に当たった紙飛行機が墜落した。
姫城と佐久間の視線が一成に向く。
「みんなで、笑顔で引退するためです」
彼は何の迷いもなく、躊躇いもなく、そう答えた。
姫城はぽかんとした後、口元を抑えながら笑う。佐久間もぽかんとし、そのまま小さく零した。
「驚いた…君、テニス好きそうだから、プレイヤーに戻るのかと…」
「好きですよ。でも、俺はもうラケットは握らないんです。その代わりに、バインダーもってあいつらと戦うんです」
「…なるほど。じゃあ、これは君に返さないと」
そう言って、佐久間は一成にバインダーを返した。それを受け取って、一成は頭を下げる。
「じゃ、これでおれは本格的にお役御免だな」
「は? 何言ってんすか佐久間さん。あんたには毎日来てもらいますよ」
「そうよお、しんちゃん。一成くんがマネージャー続投決まったからってあなたのお役はごめんにならないのよぉ?」
「え?」
今にも帰ろうとしていた佐久間が固まる。
「あなたのお仕事はあたしの代わり。一成くんの代わりじゃないもの」
「…いやでも、よくない…? おれいなくても、佐藤くん一人で…」
「指導者がいればもう少し遅い時間まで練習できるよう申請できるんで。毎日、来てください」
「まいにち!? 無理無理無理無理」
「無理じゃないっす。あ、あと練習メニュー考えるのも手伝ってくれると嬉しいです」
「待って!? おれには荷が重い!」
「しんちゃん、頑張ってね~」
「もとはと言えばお前が勝手に判子押すからぁ…!」




