___新顧問___
「さて、一週間後には予選らしいな」
テニスコートの中に立っている佐久間を見て、部員が目を丸くした。
「…さくまさん?」
「おれが佐久間さん以外の何に見える?」
本当に来た…と、全員が思った。その中で、いろはは佐久間が手に持っているものを見て首を傾げた。
彼の手には、見慣れたバインダー。いつも一成が持っているそれがあった。
「どうしたの? いろは」
「ん、あ…いや」
「…あ、かずなり? 確かに今日まだ来てないねぇ」
三年生の会話を聞いた佐久間は、欠伸をひとつ。
「彼なら、今日は来ないよ」
「え?」
いろはが間抜けな声を上げる。
ふっと、佐久間の顔に影が落ちた。
「…まあ、今日だけじゃないかもしれないけどね」
「ちょっ、佐久間さんどういうことですか!? 今日だけじゃないって…」
不穏な言葉に、思わず菜摘が声を荒らげる。
佐久間は暗い表情のまま答えた。
「そのまんまの意味だよ。…明日も明後日も、もしかしたら、その先も。彼はここに来ないかもしれないって、そういう意味」
「何でですか!? あいつがマネージャー降りるって、そんなこと…!」
「まあ、その辺は彼の気持ち次第だよね。おれにはわからない。でも、おれだったらもう来ないかなってだけ」
佐久間がバインダーを開く。
「佐藤くんから、今日のメニューは貰ってあるからそれを伝えるね~。次のはこれを元にしておれが作らなきゃいけないらしいから、なんか言っとくことあったら今日言っといて」
「…はい。じゃあ、いつも通り準備運動から始めます。よろしくお願いします」
佐久間がベンチに座ると、部員はテニスコートに向かう。
一成が来る気配はない。




