___三年生の背中___
「さ、佐久間さんって姫城先生の従姉弟だったんだね」
「ていうか佐久間さん顧問になるの!?」
「顧問ていうか、コーチみたいな形じゃないか? 試合に必要な引率者は、たしか学校が承認した人なら教師じゃなくてもよかったはずだ」
「いやその前に姫城先生の妊娠じゃないですか!? 先生って結婚してたの!?」
「聞いたことなかったけど、確かに結婚しててもおかしくはないですよね…」
「これから大きくなるのかな? 男の子かな女の子かな?」
「それはこれからでしょ」
保健室から部室に戻る道中、話題は佐久間と姫城のことで持ち切りだった。当然だ。彼らは何も聞かされていなかったのだから。
「佐久間さん来るの来週からって言ってたけど…あの人本当に来るんかな…」
一成の脳裏に浮かぶのは、風呂場で寝落ち、管理人なのに管理人室にいない彼の姿。そんな彼を見たことがあるため、部活に来る途中で寝落ちて来ない、もしくは部活中に寝散る彼の姿が容易に想像できる。
「ま、姫城先生が推薦したなら大丈夫でしょ。いっせいが悩んでもどうにもならないよ」
「いや、それはそうだけど…ってか、いっせいじゃなくてかずなりだって何回言ったらわかる? もう俺何回言ってる?」
「さあ?」
「桜井テメエ…」
「ちょ、ちょっと落ち着いて二人とも…!」
いろはに宥められた菜摘はにこにこして彼女に擦り寄った。
そして一成の方を見て、鼻で笑った。
「こいつ…っ」
拳を握りしめて震える一成。いろはは菜摘と話し始めているため、その様子は見えていない。
「…三年生って、不思議な関係図だよね」
「…うん」
それを後ろから見ていた雪斗と雪奈が小声で話す。
不意に、雪斗がぽつりと溢した。
「ていうか、来週から新しい顧問かー。私たちがやってること、なんか言われるかもね」
それを聞いた雪奈は、何とでもないように言い切る。
「私はやめる気ないけどね
」
その目は、まっすぐ前、三年生の背中を映して。
「ふふ、雪奈ちゃんよく言った! お姉ちゃんもやめないよ!!」
「姉さんうるさい…」




