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___危ない橋___

なんというか、同級生の落ち着きがない、気がする。


一成は、先ほどからちらちらとアイコンタクトを取り合う一番手ペアを見て首を傾げた。


「…おい、二人ともどうした?」

「えっ!? い、いやあ何でもないよ!? ね、いろは!」

「う、うん」


明らかに怪しい。

コートに入った二人をジト目で見ながら、一成はベンチに腰掛けた。


愛用のバインダーに挟んである大会要項を捲る。開催日は来月の初め。一か月はとうの昔に切っている。のに、完成度は半分も満たしていない。


一成にとって、これは賭けだった。


三年ペアはさすがというべきか、今のところは問題なし。双子にペアを崩してほしいと言われたとき、本当は却下するつもりだった。普通、大会の一か月前にペア練習を正規のペアとやらないなんて有り得ない。一年ペアも、まだもう一手ほしいところだ。香澄が苦手だというハイボレーも、一手というには足りない気がする。


幸い、陽ノ朱高校がある地区は高校が少ないため、一試合勝てれば予選通過だ。それでも、本選でいいところに入るためには多く勝っておかなければいけない。市に言ったら白目を剥きそうな現状だ。本当にこれで、一か月後の試合に出られるのか。


「…初めてだよ…こんなギリギリの賭けすんの…」


思い出せば、彼はいつも物事を安全に安全にと進めてきた。先代の部長の信頼を得て、マネージャーのようなコーチのようなことをし始めた時から、彼は危ない橋を渡るのを避けてきた。

でも今回は、直感的に思ってしまったのだ。「これを乗り越えた彼女たちは、絶対に強くなれる」と。危ない橋なのは、大きな賭けなのは、百も承知だ。


それでも彼は、六人がそれぞれの課題と向き合い、克服できるのを信じている。だから、危ない橋だろうと大きな賭けだろうと、ともに挑むのだ。


「…あの、佐藤先輩」


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