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__自分の事、人の事__

背を向ける教師越しに黒板を眺めながら、いろははシャープペンシルの頭で頬を軽く突く。


昼休みに汐が言っていた、怪我というのが気になっていた。本人に直接聞けば早いのだが、どうしてか聞きに行けない。もし思い出したくないことだったらどうしよう、とか、本当に酷い怪我だったら聞かない方がいいんじゃないか、とか。


視線をノートに落とす。そして、シャーペンを走らせた。


触れて欲しくない過去は、誰にでもある。いろはだって、親友の菜摘にすら話してないことがある。このまま忘れてしまえと思うような過去が。


パキ、とシャー芯が折れた。


そういえば一成がラケットを持っているところを見たことがないかもしれない。ならばやはり、聞かない方がいいことなのではないだろうか。打ちたい、と思わないくらいなのならば、聞かない方が。

そう思うのに。それなのに。


「…はぁ…」


シャーペンの頭をノックして、芯を伸ばす。


気になってしまう。自分の事は忘れたいくせに、話したくないくせに、人のことは知りたい。

こういうのは、お節介と言うのだろうか。何にしろ、人の過去にズカズカ踏み入るのは余計なお世話というものだ。


時計を見上げると、あと五分で授業が終わる。


一時間後には部活だ。予選まで時間はない。人のことを気にしていないで、自分の練習に集中しなければ。

勝ち残らなければ、いろはと菜摘はそこで終わりだ。道は途絶える。


少しでも長く、みんなといる為に。テニスができるように。


絶対に、負けるわけにはいかない。


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