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___顧問襲来___

「…三分遅刻だ」

「なんたって部室からテニスコートまでこんなに遠いんですかああああ!」

「煩い姉さん!」


バインダーを持ちながら笑みを真っ黒に染める一成。

部室からテニスコートまでの距離に悪態をつく雪斗はいつも通り雪奈に怒られていた。


「で? 遅刻の原因は?」

「一成…、もしかしたら、部室に誰か入ったかも」


バインダーが重力に従って地面に落ちた。


「…誰か入ったあ?」

「いろはの練習着がないの! 解れ阿呆!」

「……はぁあああ!? それっ、おまっ、泥棒が入ったってことだろ!?」


焦り過ぎてか手元を見て、あれ俺のバインダーは!?と叫んでいる。

菜摘は冷たい目で睥睨していた。


「先輩、バインダー落ちてますよ」

「ああ…悪い。って木暮妹は何でそんなに冷静なんだよ!?」

「え? 雪奈ちゃんのこれが冷静? かず先輩目ぇ大丈夫ですか?」


雪斗が心底不思議だとでも言うように一成に問う。

一成は一成で首を傾げていた。


「って、木暮妹それ違う! バインダーじゃない俺の靴!」

「…あ!? あれ、すいません…!」


靴とバインダー間違えるって大分だな、と渋い顔をしながら呟く一成。

雪奈は心底申し訳なさそうにバインダーに付いた砂を払っていた。


「えー…ゴホン。取り敢えず、練習しよう。終わったら探そう。俺も手伝うから」

「わあ! 心強いですねえ! と言うわけでかず先輩、練習量三倍は勘弁してください」


流れで三倍を逃れようとする雪斗。

一成は唸りながら頭を掻き、ひとつ頷いた。


「まぁ、そんな理由じゃしょうがないな。」


やったーと言うようにハイタッチをする雪斗と菜摘。

雪奈は若干渋い顔をして黙々と砂を払っていた。


「あー…もう大丈夫だぞ?」

「あっ、すいません」


はっと我に返り、バインダーを返す雪奈。


「あのー、先生に相談するのはどうですか?」


汐が小さく手を挙げた。

それに固まる、二、三年組。


「そういえば、私たち顧問の先生に会ってないよねえ?」

「うん。入部届もいろは先輩に出したし」


揃って首を傾げる一年組の口を、菜摘が青ざめた顔をしながら塞いだ。


「駄目だよ、その話しちゃ!淫魔に魂吸い取られるからね!?」

「なーつみちゃん?淫魔、って誰のことかしらぁ?」


菜摘の冷や汗が倍になった。

油の切れたロボットのように頭を動かし、甘ったるい声のした方を向く。


「ひ、めしろ…先生…」

「そう。あたしのことだったのねぇ?」

「待って先生タンマ!そういう意味じゃなくて!!」


派手な化粧に、派手なネイル。

ソフトテニス部顧問、姫城茜(ひめしろ あかね)がそこに立っていた。


「い、いろは先輩…もしかして、あの人が…?」


ふるふると震える指で茜を指す香澄。

いろはは苦笑しながら頷いた。


「うん。あの人が、うちの顧問の姫城先生だよ。」


因みに、保健室の先生ね。と付け足す。

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