__双子で__
雪奈は、特に意味もなく自販機を眺めていた。
本当は、飲み物を買うなんて口実で、ただあの場所から逃げたかっただけだった。
先輩たちが気を遣って、自分と姉が話せるように、話を作ってくれていたのもわかっている。でも、どうしても雪奈は雪斗と話せなかった。
先日の練習試合で、突きつけられた現実。それがどうしても辛くて、これからどうすればいいのかわからなくて。
自分がストロークができないから、下がって後衛に回っても、役に立てないから。
飲み物を買うと言った手前、何も持たずに行くのはあからさますぎると思い、自販機に百円玉を二枚入れた。お茶でも買おうとボタンに指を伸ばした時。
「…雪奈ちゃん!!」
背後から自分の名前を叫ばれ、驚いて押そうと思ったボタンを間違えた。
ガコンと落ちてくる炭酸飲料。
「…」
「…あ、ごめ」
背後で叫んだ張本人、雪斗は自分が驚かせたからと気付き、咄嗟に謝る。
雪奈は少し固まったが、その炭酸飲料を拾い上げた。
「ね、え、雪奈ちゃん」
「…何」
雪奈自身も驚くほど、冷たい声だった。
雪斗の顔が歪む。泣きそうな顔で、それでも涙を流さないようにか、自分の手首を強く握っていた。
「話、しよう。ちゃんと。…雪奈が、もう私と組みたくないなら、私からもかず先輩に頼むから。ちゃんと、話を、させて」
その言葉を聞いて、雪奈はペットボトルを握りしめた。水滴が、指を伝って地面に落ちる。
「…私、姉さんと組みたいよ」
でも、と続けた声は、先ほどとは打って変わって震えていた。
「姉さん、に無理させちゃう、から…私が後衛できないから、姉さん、その分頑張らなきゃで、私が下がれれば、もっと」
もっと、違う戦い方もできるのに。
今のような、理想形では対応できない事だってある。でも双子は、理想形しかできないから、後衛が無理をして対応するしかない。
「…私は、先輩たちと優勝したい。そのためには、今のままじゃ駄目なの」
雪斗は黙ってそれを聞いていた。
そして、ゆっくりと、歩み寄る。
「…それ、もっと早くに話して欲しかった。ねえ、私たちさ」
好きなものも違う、性格だって違う。けど。
同じ目標を持って育った姉妹だから。
「…私たち、双子で、陽ノ朱高校の二番手ペアなんだから」




