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___談笑…いや待って___

「ゆーきーとっ!」

「雪奈」

「「あ、先輩」」


声が揃って、二人は互いに片割れを見る。

しかし、雪奈が先に目を逸らした。雪斗は悲しそううに俯く。


…この調子だと、家でも一言も話してないのでは?


三人は思った。そして、これはどうにかしないと、とアイコンタクトを送る。


「…ゆ、雪奈、今日のお弁当何が入ってた?」

「え? えっとー…野菜餃子です」


不自然ないろはの問い掛けに、雪奈が答える。


「雪斗はー?」

「今日は…ハンバーグでした」


菜摘がバトンを受け取り、雪斗に問い掛ける。雪斗は視線を上げながら答えた。


二人は互いのことを口に出さない。今までは、「姉さんは」「雪奈ちゃんは」と続いていたのに、今は続かない。

次の話題を、と考えていると、不意に雪奈がいろはの顔を覗き込んだ。


「いろは先輩は、お昼何でしたか?」

「私? 私はいつも通り、昨日の夕ご飯の残りと冷凍食品だよ」

「友達も、昨日の夕ご飯詰めて来たって言ってました。私もよくやりますけど、楽なんですよね」

「そうなの? じゃあ私も、今度自分で作ってみようかな…」

「好きなもの詰められるので、お昼ご飯ハッピーですよ。ただ、サプライズ性はないですけど」


しばらく談笑してから、はっと気付く。


雪斗と雪奈の会話に持って行きたかったのに、私たちだけで話してちゃだめじゃん!


「…ゆ、雪斗は!? 自分でお弁当作ったりしないの?」

「私ですか!? …いやいや、できませんよ! まず起きられないですし!」

「桜井も無理だな。遅刻魔だし」

「いっせーうるさーい」


一成は肘鉄を脇腹にもらっていた。


「…あ、私飲み物買ってから行くので、先に行っててください」


そんなやりとりをしているうちに、雪奈は自販機の方に行ってしまった。

雪斗はまた俯く。


「…ねぇ雪斗。雪斗は、雪奈がどうしてペアを解消したいって言ったか、知ってる?」

「…知らないです。何で…私が、ストロークやらなくていいって言ったから? 試合で、下手したから? …わかんないです。おかしいなぁ…雪奈ちゃんのことなら、わかると思ってたのになぁ…」


口調は戯けているが、声は震えている。


「…雪斗、ちゃんと話そう? 雪奈には理由があるんだよ。ちゃんと、話しておいでよ」


いろはが雪斗の背をさする。

雪斗は両手で顔を覆って、頷いた。


「…じゃ、部活の前半十五分やるから、ちゃんと話つけて来い」

「わーいっせー優しい」

「桜井お前おちょくることしかしてねーな…」


雪斗が赤い目元をそのままに、一成を見上げる。


「…ありがとう、かず先輩」


そう笑って、雪斗は自販機の方へ走り出した。


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