___双子のこと___
「あー…まあ、そっか。そうなったか」
「何か知ってんのか?」
もごもご何かを言い淀む菜摘。
「…まあ、朝練終わったら話すわ! いろは、乱打しよ!」
「え、あ、うん!」
「ちょ、おい…」
置いてけぼりを食らった一成は伸ばした手を引っ込めた。
とりあえず菜摘が何かを知っているようだ。それを聞いて、どうするか考えよう。
★☆★
「で、双子のことなんだけど」
朝のホームルーム後。授業が始まる十分前。
菜摘は一成の前の席に座り、話し始める。
「なんか、この前の練習試合でだいぶショックだったみたい。ほら、雪斗ばっかり狙われた試合があったじゃない? 雪奈は何もできなくて…凄い、悔しかったと思う。私だったら悔しい」
後衛が打ち合ってる中、前衛が割って入って点を決める。それが理想形と言われている。
ただ、それは理想の話であって現実はそう上手くいかない。前衛はボレーだけしてればいいわけではなく、後衛もストロークだけしていればいいわけではない。前衛だって下がってストロークをすることもあるし、後衛だって前に出てボレーをすることがある。
雪斗と雪奈のペアは、言ってしまえば極限まで理想形を目指した形だ。
「木暮妹が後衛練習に参加するのは賛成だ。でも、ショックだったからってペアを崩してくれまで言うかぁ?」
「そこまではわかんないけど。実際雪奈は言ったんでしょ?」
いろはは隣のクラスなのでこの場にはいないが、彼女が聞いていた。
「どーすんのマネージャー。二人ともピリピリしてるし、後輩が心配するよ」
「そうだよな…。…まあ、仕方ないか」
一成が愛用のバインダーを取り出す。そして、挟まってる紙に何かを書き始めた。
それを前から覗いていた菜摘は、目を丸くした。
「…いっせい、正気?」
「かずなりだっての。正気だ。俺は、これしか解決法はないと思ってる」
紙には今日の練習という題。そして、その下には、当分はペア練習中心と書いてある。
ペアは、相里桜井ペア、川守栗野ペア、そして、木暮双子ペア。ペアは変わっていない。
「俺は言った。『ペアは崩さない。今、この組み合わせが最高のペアだと思ってる』って。あいつらに言った。だから変えない」




