__半端者___
私はいつも、半端者だった。
部活に入ったのはみんなより半年も遅かった。それに加えて、私は習い事で週に一回、ピアノをやっていた。
『ごめん! 今日ピアノの日!』
毎週、必ず一回は休む。その分みんなより練習量は少ない。
ソフトテニスが楽しいのは本当。でもずっと、劣等感のようなものを抱いていた。
「…いいなあ」
中学の先輩が、優勝したのを見てそう思った。本当に嬉しそうで、涙を流して喜ぶ二人を、羨んだ。
それと同時に、私にはできないだろうなと思った。
どっちつかずで中途半端。みんなより努力が少ない私は、多分勝っても、素直に喜べない。
だから本当に、羨ましかった。
「…頑張らなくちゃ、私も」
半端者の私は、笑って劣等感を誤魔化す。
追い越せないなら、せめて追い付けるように。
私はそれ以上を望まない。
だって。
ワンテンポ遅く歩く私が、みんなを追い越そうなんて、絶対に無理な事だから。
「ワンゼロ!」
汐の打ったサーブが返ってくる。そこに、ラケットを立てて。
軽く当てて、手前に落とす。
「よっしゃ!」
「ナイス、マロン」
「やったね! 二点!」
越せなくていい。ただ、ペアの足手まといにならないように。
「…このゲーム、取ろう」
ふわっと、汐の表情が和らぐ。
香澄は、大きく頷いた。
「もちろん!」




