___今回の目的___
「…二人とも、どうしたんだよ。いつもみたいな元気がないな」
一成がボトルを渡しながら問い掛ける。
結局、一セット取られてしまった。
徹底的に左右に振られ、雪奈の出番すら与えて貰えない。雪奈がレシーブの時は、前に出させて貰えない。
「…一成先輩、もしここで負けたら…私と姉さんのペアは解消ですか?」
雪奈は顔を上げずにボトルを握りしめる。
「…お前ら、何を怖がってんのか知らないけどさ」
一成だって、雪奈のストロークには頭を悩ませている。でも、それをカバーできるくらいボレーは上手い。スマッシュだって、凄いスピードだ。
「今お前らがやる事は、できない事を出来るようにすることだろ」
もう、三年に時間は残されていない。
あと練習試合は何回できるだろう。練習は、合宿は、数えられる程度しかできない。
目標は、団体戦で優勝すること。
その為には、後輩の力が必要だ。
三年だけでは成し得ない。元々人数がギリギリの部活。できる子できない子で選んでいたら、団体優勝なんて夢のまた夢。
「ペアは崩さない。今、この組み合わせが最高のペアだと思ってる。この試合、勝てとは言わない。だから、まずは自分のできないものを明確にして来い!」
これは練習試合だ。試合の練習だ。
負けても構わない。本番で勝てれば、いくら負けても。
今回の目的は、自分の短所を理解すること。
「…、はい」
「…頑張ります!」
そう言って、二人はコートに戻っていった。
ドッペルゲンガーもびっくりするであろう程よく似た外見。けれど、考え方も好みも、中身は全くの正反対。
「…たく、手間のかかる部員達だな本当」
ただし、手間がかかる部員はまだいるのだ。
「いっせい、勝ったよー!」
「だから! 俺はかずなりだっつってんだろ!!」
久し振りに聞いた…と苦笑するいろはとけたけた笑う菜摘が帰ってきた。
「…二人とも、一年ズと審判変わってきてくれ。んで、一コート入れて」
「はーい! いろはどっちやる?」
「じゃーんけーん」
ぽん。
結果、いろは(グー)が主審、菜摘が副審となった。
普段の校内戦を見ていて、正直一番厄介なのは川守栗野ペアだ。
一成は、二人のことをよく知らない。
知らない事が、一番厄介だった。
二人にはそれぞれ、何か抱えているものがある。しかし、それは本人しか知らない。
他の部員のように、一成が原因を少しでも知っていればやりようはある。
抱えているものがわからない。二人とも。
「…今回ので、アタリくらいつくといいけどな」
ぼんやりとそんな事を呟きながら、一コートに入っていく一年生組を眺めた。
相手は、北條萩野ペア。陽ノ朱と同じく一年生ペアだ。
トスをし、サービスかレシーブを決める。
「サービス?」
「サービス」
「サービスお願いします!」
各々ポジションに散って、試合開始。




