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青の月  作者: よろず
本編

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21/38

二十

バスケットゴールにスパッと気持ち良い音を立て、ボールが吸い込まれていく。


「おー、すごーい。」


美里が呟くと、それを聞いた横溝くんが得意気に笑った。


奏は今、横溝くんが言っていたスポーツ施設にやって来ている。

昼休みにリィンと美里に話したら、早速行きたいという話になったのだ。

着替えて入場し、まずは空いていたバスケットコートで、バスケ部三人組のお手並み拝見となった。


「おー!」


横溝くんの後ろでは、新田くんがダンクシュートを決める。

瀬田くんと横溝くんは出来ないらしく、悔しそうだ。


「奏!私もあれやりたい!」

「細川さん、俺らよりちっさいから無理じゃね?」


瀬田くんの言葉に、リィンは授業の時に考えた秘策があるのだと胸を張る。

どうやらその秘策は一人では出来ないらしく、奏が手伝うことになった。

コートの下で両手の指を組んで立つ。

バレーのアンダーレシーブのような姿勢になり、タイミングを図って押し上げれば良いらしい。


「いっくぞ〜!」


ドリブルをしながらリィンが走ってくる。

右足が掌にのせられ、奏はリィンを上に飛ばした。


「だーんく、しゅーとー!」


果たしてシュートは綺麗に決まった。

ぶらんぶらんリングにぶら下がってから、リィンは着地する。


「すっげー!」

「マジか!俺もやりてぇ!」


横溝くんは拍手し、瀬田くんが目を輝かせる。

一部始終を見ていたらしき他の客からも拍手喝采を浴びて、リィンは満足そうだ。


「見たか!おっきい人!」


新田くんの前で、リィンは鼻高々に腕を組む。


「おー、すげーすげー。」


新田くんはぐりぐりその頭を撫でた。

にっこり笑った奏が近付いて、リィンを背後から抱き込む。そして、消毒とばかりにリィンの頭を撫でた。


「なんという独占欲…」

「ぽやんとした笑顔じゃない一宮、初めて見た…」

「最近、あの笑顔の奏さんの後ろに黒いオーラが見えるんです…」


ぽかんとした表情で瀬田と横溝が呟き、美里は呆れ顏だ。

新田は笑って謝りながら、奏の頭をぐりぐり撫でている。

そんな二人に挟まれたリィンは、奏の腕の中で顔を赤くして、嬉しそうに笑っていた。



バスケの次は、ニンジャという名前のついた本格的アスレチックにやってきた。

登ったり、跳んだり、ぶら下がったりしてゴールを目指すらしい。

やさしいコース、難しいコースの二種類あり、美里と奏はやさしいコース。バスケ部三人組とリィンは難しいコースに挑戦する事になった。


やさしいコースでも、中々にハードだった。

一本のロープを登ったり、雲梯を渡ったりと結構腕が疲れる。

美里は途中の雲梯で落ちて諦めたようだ。

奏は無事ゴールまで辿り着き、美里と一緒に難しい組を観ることにした。

難しいコースは、やさしいコースの比じゃない程大変そうだ。

やさしいコースと同じように、ロープを登り、雲梯で進む。

その次は、タイミング良く走って斜めになっている足場を渡るのだ。

それを乗り越えた先には、両側の壁に手足で突っ張り、蜘蛛みたいに進むコースがある。瀬田くんと横溝くんはここで落ちた。

さらに最後の難関が、ネズミ返しのように反り返った壁。これを登らなければゴール出来ない。

新田くんはその壁が登れなくて、諦めた。

リィンはというと、身軽にひょいひょい先に進んで行く。自分の身長の二倍程ある最後の壁も、簡単に登ってしまった。

もしかしたらリィンは、壁走りが出来るかもしれない、と奏は想像してみた。今度やってもらおう。

女性でゴール出来る人は中々いないらしく、リィンは歓声の中、景品を手に戻ってきた。


「ますます一宮の言ってた模擬戦、見たくなってきた!」


横溝くんの言葉にリィンが首を傾げ、そういえば話していなかったなと思い出す。


「一宮と休みの日にリアル格ゲーやってんだろ?今度見せてくんね?」

「りあるかくげー?」


瀬田くんの言葉がわからなかったらしいリィンは、更に首を傾げている。


「真人が買ってきた格闘ゲームを格ゲーって言うの。あんたが奏さん相手に庭でやってるやつのことじゃない?」

「ほっほう、あれか!良いよ〜。いつでもいらっしゃいませ〜。」

「…加持さんと、落合さんも見たいんだって。」

「なら二人が来れる時じゃないとね。…でも、あんまり大人数だと場所困らない?」


美里の指摘に、確かにそうだと考える。あんまり大人数で細川家に押し掛けるのは迷惑だ。


「……なら、加持さん達の予定聞いて、僕の家でやる?」

「一宮の家興味ある!」

「なんかオシャレな紅茶とか出てきそうじゃね?」

「あー、なんか上流階級っぽい。」


横溝くん、瀬田くん、新田くんの台詞に、奏は今度紅茶でも買っておこうと考える。

加持達の予定を聞いて、日程を決める事で話は纏まった。


「しかし、細川さんマジにすげぇよな。壁走れそう。」


新田もどうやら、奏と同じ事を思っていたようだ。


「壁走るって…こんな?」


おもむろにリィンは近くの壁に駆け寄り、そのまま縦に壁を駆け上った。ある程度の高さまで行くと壁を蹴り、くるんと宙返りをして着地する。

目を丸くして見ていた三人は、大興奮した。口々にすごいすごいと褒めて、手を叩く。


「サーカスとか入れそうだな。」


新田の呟きを聞いたリィンが首を傾げるので、今度観に行こうと約束をした。

きっとすごく喜ぶだろうな、と想像して、甘酸っぱいような喜びが胸に湧き上がる。

リィンが笑うと、奏は幸せだ。

次回、デートです。

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