第三話
あの保護団体か何かが俺の店に押し寄せてきてから2日。
憲兵があれだけタイミング良く来たのはダズのおかげだと知り、今日きた時にティッシュ箱5箱おまけしておいた。
「へっくしょぉあい!!」
「うるっせェくしゃみだなぁ」
実際、レジの横に置いてあるふかふかのクッションで心地よさそうに寝ていた鳥が飛び起きた。
「しゃーねぇだろうが風邪なんだから」
「もっと静かにくしゃみしろ。コイツが起きるだろうが」
まだ少し動揺しているのか、目が泳いでいる。
「…なぁクレバ」
「あ?」
指の腹で優しく撫でながら聞いた。
「その太古鳥の名前ってなんだ??」
外の人の声が聞こえるほどの静けさが少し続いた。
「…決めてない」
ぼそり、そう呟けばダズはたちまち腹を抱え、笑い出した。
「な、なんだよ」
「いや、お前らしいなって思ってさ!あはははは!!」
特に必要と思わなかった為、そんな発想はなかった。
"俺がつけてやろうか?"とほざいてきたからティッシュ箱とダズを店から放り出した。
「てめぇクレバ!!誰が一昨日助けてやったと…ぶっ!!」
「さっさと風邪なおしてからこい」
風邪薬を顔面に容赦なく投げつけ、"close"のプレートをかけた。
「やれやれ」
時計をみれば夕方5時。
閉めるにはまだまだ早い。
ダズが帰ったらまた開けようか。
「ぴぃ!」
翼を広げ俺の座っていた椅子に置いてあった本の上に降りた。
「なんだ?みたいのか??」
「ぴぃ!!」
鳥ごと本をカウンターの上に移動させ、表紙だけを開いた。
タイトルは"太古鳥の種族"。
その名の通り種族について詳しく書いてある。
こいつはやはり太古鳥であり、銀灰族であった。
「…名前、なぁ」
嘴を器用に使い、ページをめくる姿を見ながら独り言をつぶやく。
「ぴぃ!!ぴぃ!!」
考え事をしていたから急に鳴き始めた事に驚いた。
「ど、どうした??」
みればあるページの単語を嘴でつついていた。
「ん?…クレルト??」
クレルト。銀灰族の長の名前だと言われている。
「…それがいいのか??」
「ぴぃぃ」
首を横に振り、脚でぱしぱしと文字を踏む。
「…ルト??」
「ぴい!!ぴい!!!」
どうやら正解のようだ。
「ルトがいいのか」
「ぴぃ!」
「そうか…」
頭を撫でれば気持ちよさそうに目を閉じた。
「ルト」
「ぴぃ」
呼べば翼を広げ俺の頭の上に乗り、髪の毛で機嫌よく遊び始めた。
髪の毛がぱさぱさと落ちる音と、ルトの鳴き声だけが店に響いた。
しかしそれもつかの間、途端にそんな小さな音はかき消された。
「はいアルカディア雑貨…」
目を少し細め、引き出しをあけた。
「…了解だ」
手には髪留めのゴム。
長い髪を上半分だけまとめようと手を伸ばせば、ルトはレジスターの上に移った。
適当に結び、横にかけてある白いロングコートを羽織る。
「ルト、行くか?」
「ぴぃ!」
裏口から夕方の紅い日差しの中へと溶け込んでいった。
太古鳥の名前がやっと出てきました( ´∀`)
これで「鳥」とか「太古鳥」って書かなくて済む((おい
次話はちょいとシリアスですかね??
では今後も「神さまを泣かせた」をよろしくお願いします(♡ˊ艸ˋ)♬*
※2015.3.19 ダズの台詞「誰が昨日助けて~」→「誰が一昨日助けて~」に訂正しました。