Extra-01 「495年目の変化」
おまけとも言う
おまけもちょっと長め
「んあ…」
目が覚めた。
酷い疲労感、そして妙に皮膚が焼けてるような、まるで日焼けした後の痛みに似ているそれに、自らがまだ生きていられているのを実感した。
腹部全体に包帯が巻かれている、これはあの時の傷。
服のボロボロっぷりに、この世界に来てからまだ一回も着替えていないことに気づく。
だが彼にとってはそれは些細な問題ではなかった。
それよりも彼には危惧すべきことがあったのだ。
「フランは…?」
あの時、全てを投げ打ってでも助けたかった彼女の存在を彼は求める。
「呼んだ?」
声のした方に顔を向ける。
そこには彼女が。
初めて会った時と変わらぬ風貌で。
「…!良かった…」
彼は安堵する。
肩の荷が一つ降りた、自然と笑みが零れた。
「ありがと、レナ。レナの…ううん、皆のおかげで私、ここに立ててる。」
「大怪我した甲斐があった…良かったよ、ほんと。」
だが、彼女がいまいち浮かんだ様子ではない。
「?どうしたんだ?」
「あのね、レナ…落ち着いて聞いて。レナは暫く此処に居てもらうことになるの。」
「?あぁ、怪我か。そりゃそうだ、こんな状態じゃ暫く厄介になる。」
慣れてはいけないことなのだが、霊夢に世話になったこともあった…彼はそう思っていた。
「違うの。その怪我はまだ大丈夫なんだけど…レナ、私の血を飲み過ぎたから。」
「吸血鬼になっちまったのか、俺。まぁ仕方ない。これでフランを助けられたんだから安い物だ。」
「そうじゃなくて、なんて言えばいいの…んと…」
「ここから私が説明するわ。」
何時から聞いていたのか解らないが、パチュリーが話を繋いでくれた。
「簡単に言えばレーヴァテインの邪悪な魔力がレナに残ってしまっているわ。フランは大丈夫みたいだけど、今度はレナがフランが今まで抱えていたものを肩代わりしてしまったのよ。」
「つまりあれか、最悪俺がレーヴァテインに乗っ取られる可能性があるって事か。」
「そうね、ないとは言い切れない。…私もいろいろ調べてみたのだけれども、今の所それをなくす手段と言うのが全くないの。だから暫くレナには此処に居て貰う、経過観察って事で。」
「そうか…霊夢に言っておかないとな。」
「既に伝えてあるわ。彼女も彼女でやり方を考えてるみたい。何も出来なくてごめんって言ってたわ。」
「構わない、こんな俺の為に尽くしてくれてるだけでも感謝だ。」
「魔理沙は私に協力してくれているわ。なんでも魔力の扱いについてもっと知識を深めたいとかなんとかって言っていたけれど。」
「そうか…」
今度は此処で厄介になるのか、なんだか迷惑かけてばっかだな。
「とりあえず後の事は私達に任せて、貴方はしっかり休みなさい。自分が大丈夫と思っていても、傍から見たら死にかけの状態よ、今のレナは。」
「解った…すまない、パチュリー。」
「あ、服の事だけど、今咲夜が急ごしらえでやってるから、もう少し待ってて。」
それじゃ、と軽く手を振り、パチュリーは部屋を出て行った。
「フラン、あれからレーヴァテインは?」
「すっごくおとなしくなってる。今までのあれが嘘だったみたいに。」
「ならいいんだ。」
やはり俺の魔力がレーヴァテインに行ったのか。
実を言えば今この瞬間にもレーヴァテインの狂気が俺を突いている。
早く出させろ、解放させろと。
だが解放するつもりはない、このまま俺の中で留めておく。
おそらくフランもこのことは予想できているはずだ、気を遣ってくれているのはよく伝わる。
「フラン、お腹空いてないか?俺の事はいいから、ご飯を食べてきてくれ。」
「え?でも…」
「いつまでも俺の傍にいたらフランが体調崩すだろ?ついでに俺の分も少し取りに行ってくれ。」
「…わかった。」
タタタと小走りして部屋を出て行くフラン。
「…誰か、居るんだろ?」
「気づかれていたようね。」
何もないところからフラッと現れた、一人の美女。
その顔から、あの時の女性だと解った。
腰まで届くブロンドの手入れが丁寧な髪、蝶結びがされた帽子。
紫色のドレスは身体のスタイルの良さを際立たせる。
非の打ちどころのないまさに絶世の美女とは、きっと彼女のことを言うのだろう。
「初めまして…じゃないわね。」
「だな、俺の記憶が正しければ、貴女とは3回遭遇しているはずだ。」
「貴方の前に姿を現したのはこれが2回目なのだけどね…自己紹介がだいぶ遅れたわね、私は八雲紫。どこにでもいる普通の妖怪よ。」
「…妖怪の貴女が何故あの時俺を助けたんです?」
「さぁ。気まぐれと言った方がいいかもしれないわね。…災難だったわね、来て早々こんなことになるなんて。」
「俺をこの世界に送っておいて何を言っているんですか?」
「あら、そこまでばれてたの?想定外ね…」
「全然想定外って顔じゃないですよ。寧ろ『想定内』でしょうに。」
「ふふふ、私は嘘を付くのが苦手なのよ。だから今から言う事も本当の事。貴方の内側に潜むその邪悪な力…取り除く方法があるわ。」
「!?」
「たった一つだけだけど。それもとても苦痛の伴う。」
「…一体何を?」
「そうね…貴方が乗り気のようだからその内教えましょう。楽しみに待っていて頂戴。」
「ちょ…!」
彼女…紫は消えた。
まるで最初から『そこに誰もいなかった』ような静寂が戻る。
「どう言う事だ?何故彼女はあんなことを…?」
妖怪である以上、俺は絶好の餌であるはずだ、わざわざ助ける理由すら彼女にはないはずだ。
「ただいまー。誰かいたの?」
「いや、俺の気のせいだったみたいだ。」
フランからパンを受け取る。
腕は動かせる、ゆっくりと千切り、口に運ぶ。
「そう言えば、レミリアは?」
「お姉様なら話し合いをしてるよ?これからどうすべきかーとかって。」
「そうか…」
だいぶ大事だ、乗り込んだだけでここまでなるとは。
「パチュリーも言ってたけど、今は休んで。無理しちゃだめだよ。」
「そうさせてもらうよ。」
俺はこの言葉の通り、この後もずっと休んでいる状態だった。
「お姉様」
「どうしたの?」
「レナ、やっぱり…」
「でしょうね。レーヴァテインの魔力がそっくりそのまま移ったのでしょう?」
「うん…」
「彼にも考えがあっての事よ。貴女がどうこうする問題じゃないわ。少しでも彼に悪いと思うのならこれからをしっかり生きなさい。自由は手に入ったのだから。」
「でも…」
「言いたいことは解るわ。だから今皆がそれぞれ考えて動いている。今の貴女にしかできない事、あるんじゃないのかしら?ずっと閉じ込めるしか策のなかった何処かの無能とは違うでしょ?」
「…」
暫くしたあと、何かひらめいたのか、彼女は扉へ向かう。
「ありがと、お姉様!」
彼女を見送った後、レミリアは壁を思いっきり殴った。
「何が吸血鬼だ…!!妹の一人も救えやしない大馬鹿が…!!」
次回から妖々夢編突入予定です
主人公難儀、さてどうなることやら
※やっぱりというか原作一部改変します、旧訳版とも全然違う雰囲気になるのでお楽しみに。




