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今考えてみれば、此処から俺の物語は始まったんだな

第2話です。

まだ本格的な物語の始まりではないですが、もうしばしお付き合いください。

-???視点-


「さて、手筈通りに送り込めた訳なんだけど」

私はこの事実を伝えに、ある者の(もと)へ向かう。


「まったく、事前にやるならやると言いなさいよね。いくら事情を知ってるからとはいえ、予告なしにやられたらこっちの世界にも影響があるんだから。」

彼女は昔も変わらぬ口調で私にそう咎めた。

…だが、彼女は心底怒っているわけではなく、寧ろ喜んでいるようだ。


「最近の『神隠し』…貴女の仕業なのはよく解るけど、最近こっちに来すぎじゃない?そろそろ怪しまれると思うのだけど。」

「貴女が素直にあの子を渡してくれればよかったのよ。しかもご丁寧に妖怪退散用の強力な結界を張ってくれたおかげで、見つけるのにどのくらいかかったと思ってるのよ?」

「あははっ、だから渡したじゃない。私を見つけたご褒美よ。」

「そりゃあ、貴女の姿はよく見るしね…この箱の中で。」


私は傍にあった長方形の箱…外の世界(こっち)で言う所のテレビを突きながら答える。


「こっちもこっちで中々楽しいわ。働かずして生活していける、そんな悠々自適な生活が夢だったんだから。」

「能力使ってるだけじゃない。そうでしょ?」

「まぁね。…で、そっちはどうなのよ?」

「もうすぐ異変が起きそうな気配ね。なんとなく、だけど。」

「貴女の勘は大体当たるしね。十中八九何かが起きる。そのために攫ったんでしょ?私の大切な…」

「まぁ…貴女の血を引いてるんだからね。貴女が抜けた穴を埋めようとしてるのよ。」

「博麗の巫女を呼びなさいよ。何のために居るのよ?」

「私の代わりよ…仮に何があってもいいように。」

「ま、いいわ。あの子のこと、宜しく頼むわ。」

「やれるだけのことはやるわ。それじゃ、また。」





‐レナ視点‐

妙な夢を見た。

『…は…を…それが…できる…』

聞き覚えのない少女の声が、何処からか聞こえる。

俺はその声の主を暗闇の中で探すが、何時まで経っても見つけられない。

そのうち、暗闇が明けていき…



目が覚めた。



見慣れない天井…木造だと一目見て解る天井。

此処は…天国…なのか。

にしては風景がリアル過ぎる。

天国と言えば、何処も明るくて、周りに天使がいて、神様もいて、雲の上で…というイメージだが。

天井がある時点で、何かがおかしい。此処ホントに天国?


「あ、気付いた。」


誰かが、俺を見て笑った。

小豆の色をもう少し薄めたような瞳に、頭に乗る大きな朱色のリボン。

黒…というのか焦げ茶というのだろうか…そんな色の長い髪が、俺の頬をなでる。

紅白の明らかに巫女さんだろと言わんばかりの服。なぜか腋が露出している。


「大丈夫?あなた、随分ボロボロだけど。」


随分…ボロボロ…?

動こうとした瞬間、全身に電流のように痛みが走った。


「あなた、骨を沢山折ってるわ。なんでそれで生きてるの?ってくらい。とにかく、動いちゃ駄目。」


「…此処は…何処だ…?」

言葉を発するのに此処まで体力を使うものなのか?

やっと絞り出せたその言葉に、彼女はまるで聞きなれた質問に答えるように応じた。

「此処は幻想郷。あらゆる世界から隔絶された世界よ。今のあなたにこれ以上あれこれ説明しても意味がないと思う、しばらく休んでて。」

「…名前…」

ドッと疲れが押し寄せ、少しでも体を動かそうとすると痛みが走る、そんな死んだような体の力を振り絞り、せめて彼女の名前だけは聞きたくてもう一度声を出した。

「私?博麗霊夢よ、霊夢で構わないわ。」

「霊夢、ありが…」

最後まで言い切れたかどうかすら解らずに、俺の意識をつないでいた糸は切れ、意識が落ちた。


何時まで眠っていたのだろう、俺はふっと目を開けた。

すでに日は落ちて、夜になっていた。

さっき…と言ってもいつかは解らないが、霊夢の名前を聞いた時は日がまだ上っていたような気がする。

ふと目を横にやると、霊夢がすやすやと寝息を立てていた。

俺のために、ずっと傍に居てくれたのだろう。

感覚が麻痺しているのか、霊夢のおかげなのか、腕が動かせたので自分にかかっていた布団を霊夢にかけてやる。

「…気持ちいい風だな。」

都会にずっと住んでいる身にとって、この田舎のような自然溢れる場所に吹く風は心地よかった。

この風を、しばらく感じようか。

俺はその風を顔に感じながら、思いを馳せた。


『此処は幻想郷。あらゆる世界から隔絶された世界よ。』

幻想郷、どこかで聞いたことのある言葉だ。しかし何処で聞いたことがあったのか、思い出せない。

それでも、何故か懐かしく感じた。何故なんだろうか。

あらゆる世界から隔絶された世界…元の世界に戻るのは難しそうだ。

場合によっては、幻想郷で生きることも視野に入れなければならないのかもしれない。

…待てよ?となると、元の世界では俺は行方不明か?


「そうか…」


いきなり自分が置かれている状況が理解できた。


「『神隠し』…実在したのか。」

次回予告

『異変の始まり』

ついに本格的にスタート!

最初は紅魔郷からだ!


お楽しみに!


なお、更新はいつも更新予定日の18時頃を予定しています。


次回更新

木曜か土日のどちらか

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